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テレンス叔父様

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 この家の家令、セバスチャンが侯爵様に耳打ちする。侯爵様は頷いている。すぐに二人の男性が入ってきた。

 金の髪翠の瞳の王弟殿下とテレンス叔父様だった。テレンス叔父様はこの真剣だ空気なのに私の笑いのスイッチを入れてしまうくらい、私と、叔母さまとそっくりだった。やばい、ここで笑ってはいけない。爆笑したいけど。

「かなりいじめられてますね」

柔らかい物腰で王弟殿下が言葉を発する。父親と宰相様がホッとした顔になる。

「宰相とその兄上が度し難いマザコンだったとは」

…最初から飛ばすな、王弟殿下。

「そろそろママの元に戻りますか?」

テレンス叔父様が声を出す。

「領地の事は俺が面倒を見るし、魔石は俺とエルシーで作れる。宰相の仕事はウエスト家に譲るので、兄上達は陛下を諌める事もせずにガタガタさせてるので引退してママとパパとお暮らし下さい。あの二人のおさえ役くらいは出来るよね。溺愛してるレオン兄さんが一緒ならママもご機嫌だろうしな」

父親が低い唸り声をあげている。

「ようやく…大人として扱われてるのに…」

宰相様が無理矢理声を出している。

「三十路なのにママのお人形扱いされてた私たちの気持ちがわかるかっ」

「だからってエイドリアンとキャスをこんな目に合わせる必要これっぽっちもないでしょう。エイドリアンはきつい子だから隣の国に留学するという逃げ場を自分で見つけられた。けどキャスは教育も受けられず、ディアーヌ様の加護もなく、挙句呪いまで。兄上は何してたの?ママに褒めてもらう事だけ考えてたんでしょ?母はマリアさん以上の金食い虫だものね」

祖母の趣味は宝石集めらしい。

「呪い?」

父親と宰相様が同時に声を上げた。そして王弟殿下の目が不思議な深みのある翠色になる。

「…そうか、キャスリーン嬢の周りのモヤが何かわかった。…これは人だ。呪いが完全にかからないように幼いのに守ってる。自分が呪いの触媒にされてるのに。少し待って。紅水晶か何かピンク色の石、できれば大きな原石あるかな?もしくは魔石、ピンク色系の」

父親が立ち上がる。

「バケツ一杯の土と何か桃色の花が石、用意して」

仕事モードに切り替わった父親を目の当たりにするのは初めてで何が起こるのかと思ったら、バケツ一杯の土、薔薇色のとても美しい薔薇に父親が力を送っている。

薔薇が溶けた、と思ったら
薔薇の花びら色の石が父親の手の中にできている。王弟殿下はにんまりと笑う。ちょっと邪悪…。

「上出来だ。レオン、感謝する」
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