上 下
176 / 212
第四章

アルはとりあえず動く

しおりを挟む
 「……なんでまだいるんですか」

「エマ様が北の守護者の樹をケアしておられるから、俺はこっちの樹をケアしてるんだ。北が落ち着いたら東と南、どうするかな」

アルは王太子として表に出る前にマドレーヌとの事を見極めたいと思っていた。守護者にもそうしろと勧められる。『お前みたいな朴念仁ならマドレーヌみたいな子が丁度いい。ただしミシェル妃やソフィア妃みたいな存在を持てと言われるだろうな』と守護者に言われる。『彼女はロクサーヌ嬢とも仲が良いしジュストにもレアにも協力してもらいますよ。そして従兄弟や従姉妹達とも協力しますしね。ちょっと縁は遠くなるけど再従兄弟達にもね。そうしたら国内の派閥にも『媚』が売れる』と返す。父親の従弟や曾祖父までさかのぼった親戚で王宮で王族を気取ってる人間もいるのでそういう人間を洗い出して使える者は使うという心持であった。

『自分が王太子であるという認識はできたかな』

『守護者様と話してなんとか……』

『今代はレアかお主だからな。他の子どもは二人ほどは意思の疎通ができん。意外かもしれんが二人がダメとなるとネイサンになる。まぁ、ロクサーヌの補助が必要だが。ベルティエの血には王族の血が結構入ってるからな。あの子とネイサンの二人でならなんとかなる。ただ、アランと一緒に居た頃のネイサンに対してはロクサーヌの心が寄り添ってなかったから無理だったんだがな』

アルはその言葉を聞いて訊ねた。

『ネイサンに任せるって言えるって事?』

『そう。ただ、ロクサーヌはマドレーヌを己の補佐にするからマドレーヌは王都詰めになるしそうすればアルも王都にいる、のでアルの希望するような生活は無理だな』

『ううむ』

 アルは出来る限りグランジエの領地に居たいと思っていた。アルのわがまま、神殿方式でも冒険者ギルド方式でもいいので王宮と各辺境を繋ぐ転送ゲートを王宮につくって欲しいと願ったのだ。この話は前陛下を味方に北の侯爵の領地で話し合われ、受け入れられた。陛下はなにか考えがあるらしく冒険者ギルドとディアーヌ王国に問い合わせをすると確約した。

『若い時にディアーヌ王国で使ったやつがあってな。それに対する情報収集をしてからはっきり返事をする』

陛下はそういった。ディアーヌ王国のどこかのクランが使っていたものでゲートと簡易的な装置をつかい転送位置を決めるものらしい。ドワーフの技術で作られているのと全属性の魔術師、という有名人がかかわっているという噂だったが確証はないらしい。
 えらく「らしい」が多い話ではある、とアルは考えていた。ただ、前陛下もその噂というかそのゲートを使ったことがあるという。

『東の国の商会が使ってるやつですかね?』

アルの言葉に前陛下と陛下が驚く。

『東の……商会?あんな小さなところが?』

『我が国では小さいですがあの商会は数多の国に支店展開してるようです。その上で冒険者ギルドとも懇意な国もあるようですよ。ディアーヌ王国とその周辺、ギルド自治区あたりだとかなり懇意で協力体制を敷いているようです』

 アルの報告を聞くまで陛下も前陛下も知らなかったらしい。二人で顔を見合わせている。アルはウージェーヌの紹介で知ったとは言わなかったが、陛下が

『同級生の子爵の三男かな、この国の支店長だったはず』

と言い出した。側妃宮の為に東の国の香木や香油を頼むことがあり覚えていたようだ。アルは自分はあくまで利用者だった顔で過ごしたが近々ウージェーヌも巻き込まれるだろうなと予想している。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

転生したら死にそうな孤児だった

佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。 保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。 やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。 悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。 世界は、意外と優しいのです。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる

竜頭蛇
ファンタジー
伊藤淳は都内の某所にあるダンジョン配信者事務所のマネージャーをしており、かつて人気配信者を目指していた時の憧憬を抱えつつも、忙しない日々を送っていた。 ある時、ワーカーホリックになりかねていた淳を心配した社長から休暇を取らせられることになり、特に休日に何もすることがなく、暇になった淳は半年先にあるS級ダンジョン『破滅の扉』の配信プロジェクトの下見をすることで時間を潰すことにする. モンスターの攻撃を利用していたウォータースライダーを息抜きで満喫していると、日本発のS級ダンジョン配信という箔に目が眩んだ事務所のNO.1配信者最上ヒカリとそのマネージャーの大口大火と鉢合わせする. その配信で姿を晒すことになった淳は、さまざまな実力者から一目を置かれる様になり、世界に名を轟かす配信者となる.

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

処理中です...