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第二章

ベルティエ公爵領へ

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 「ギルドで飛ばしてもらうから、小一時間で戻って来るけど……ちょっと多めに食事を用意してもらえるとありがたい。あいつよく喰うんだよ」

ウージェーヌは立ち上がりながら公爵に告げた。

「わかった。成人男子平均の何倍くらい喰うんだ、その狼人は」

「そうだね、倍は軽いよ」

「了解した。なにか好き嫌いはあるのか?」

「んー、べつにないはず。あ、マダムエマのタルト食べたいってリクエストしとく」

公爵は少し呆れた顔になる。

「お前が食べたいんだな?ウージェーヌ」

「そうだよ」

ウージェーヌは良い顔で手を振りギルドに急いだ。



 狼人の聖魔法使い、ルカを連れて来たウージェーヌはそのまままたギルドにUターンだった。

「神官長も俺が連れてくるの?」

「もう連絡はしてあるから連れてくるだけだ」

公爵がウージェーヌに告げる。

「その間にルカ殿と親交を深めとくよ」

ジェラールもにこにこと告げる。その場にいる皆がルカの事は気に入ったようだった。ルカはどう見ても人の好い男だった。

「わかったよ。神官長連れてきたらいいんだな?」

「もうなんだ、蝶手紙で連絡はとってあるから」

公爵は蝶手紙が気に入ったらしくちょくちょくいろんなところにそれで手紙を出しているようだった。また陛下とのやり取りは守護者の葉っぱでやり取りしているらしい。
 ルカはいぶかし気に守護者の樹を見る。時折髪の長い男が見える気がするのだ。公爵はそれに気が付いてウィンクをしてそっと人差し指を唇にあてた。



 バスティエ公爵領へ向かう馬車の中でウージェーヌはタルトを齧りながら鼻歌を歌っている。ウージェーヌの横にはルカが座っている。二連になった馬車の後部にいる。二連目、二人が座っている馬車の中には樽に入った聖水、その場でドニが作っていた、や聖なる樹と呼ばれる月桂樹の葉や杖、聖なる魔石の欠片や、死体を封じる材料が積まれている。

「タルト、うまいだろ。マダムエマの料理、俺好きなんだよ」

相変わらず年齢の判らない顔のウージェーヌをまぶしそうにルカは見ている。

「ウジェは老けませんね」

「そうかぁ?子供4人もいるとなぁ」

「子供と一緒に遊んでるんでしょう」

ルカはくすくす笑った。ルカは不思議とクロードと気が合った。幼いクロードがルカに教えてもらい第一段階のヒールを使えるようになり、けがをごまかして遊ぶようになったのはウージェーヌの妻、ジョアンには頭の痛い問題であった。
 今でも、ウージェーヌの所に来ると、クロードと一緒に森の奥までいったり。南で人が足りないときの連絡がウージェーヌではなく、クロードにルカから来たりと交流は続いている。ルカはまだ独身である。多めの毛が潰された片目を隠している。

「子供、羨ましいですよ」

「ルカはよっぽど好みが五月蠅いんだな」

「ジョアンさんみたいな人がいればすぐにでも結婚したいんですけどね」

「ジョアンはやらんよ」

ウージェーヌとルカは気軽に移動を楽しんでいる。



 公爵二人と現前神官長の4人の馬車は重苦しい。

「前公爵はかろうじて命がある状態なんだな?」

「ええ」

ジェラールはふっと息を吐く。

「自業自得とはいえ……後味は良くないです」

父親と変わらない年の男性にジェラールは虚勢を張らない。年上には素直に甘えた方が良いというのはウージェーヌに教わった処世術であり、効果も高いとジェラールも認めている。ジェラールの様に真面目な男だからこその効果だけどな、とウージェーヌは言う。

「命があるなら繋いで見せる」

現神官長がはっきりと言い切った。



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