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ドラゴンの雌の谷〜魔王城

カグラ4

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 すっごく重大な話を聞いてしまった。

ドラゴンの雌の谷からミミとイアンとともに帰っ来たあたしは、とりあえずショウとルイに話すことにした。
ちょうどお昼前なので昼食に誘う。ショウとルイの執務室横にある簡単な応接室に、四人分の昼食を用意してもらうよう侍女さんに頼んだ。精霊用のお菓子ももちろん用意されている。

きょうの昼食は、ハンバーグが乗ったグラタンと、たっぷりの野菜とハムを和えたマリネ。そして山盛りのフライドポテトとオニオンリング。パンとスープもある。

あたしは熱々のハンバーググラタンを食べながら、ドラゴンの契約精霊の話をショウとルイにした。

「ちょ、ちょっと待て??!もうその話はオレたちがどうにか出来るレベルではないぞ?種族間のトップシークレットとか国際問題級じゃないかっ??!」

「あたしだって分かってるわよ。この後の魔王様との謁見でちゃんと話します。
その前に一度話しておくとスムーズに話せるじゃない?ショウにどうにかしてもらおうなんて思ってないから。言わば予行練習ね?」

ん?ショウもルイも手が止まってるわよ?ハンバーググラタン美味しいのに。

「ショウ。僕、ベルに言ってロー様と繋がってもらってるから、今の話はシグ様にも通ってるよ。」

「あっ、ああ、流石ルイだ。助かった。」

「で、昼からカグラが魔王様に謁見する際には、ショウと僕も同席するようにって。前魔王様と前王妃様、カグヤ様も同席されるらしいよ?」

「えぇっ?!そんな要人ばっかりの所で喋るの??ヤなんだけどっ!!」

「ヤなんだけど、で済む話じゃないだろっっ??!!!それくらい大事だって事だからな?全く何でそんな壮大な話になるんだよっ??」

こめかみを押さえながらショウがこっちを睨む。

「し、知らないしっ!アタシだってドラゴンの契約精霊の話とエリン様にはビックリしてるわよっ?!」

「そのエリン様ってカグラより厄介そうだよね・・・?」

「すみませんルイ様。オレもそう思います。おふくろは多分カグラ様より話が通じないです・・・」

イアンの言葉を聞いたショウとルイは、同時にため息をついた。


 そして魔王様との謁見の時間だ。
魔王様、王妃様、シグ様、前魔王様、前王妃様、母さんが揃う。もちろんそれぞれの契約精霊も一緒だ。

えぇ~ホントにヤなんだけど。

仕方がないから、まず魔王候補辞退の話をし、ドラゴンの雄の谷でイアンとパパドラゴンを叩きのめして制圧した話、ババ様とミランとは仲良くなって友好条約を結んだ話、イアンが友好の証(流石に下僕とは言えなかった)としてついて来た話をし、さっき聞いたドラゴン族と契約精霊の話、エリン様、ローゼ様、その他最南の島の現在の契約精霊を持つドラゴンの話をした。

「カグラ、まず魔王候補辞退の話は受け入れよう。今まで縛り付けてすまなかったな。
しかしドラゴンに喧嘩を売りに行くとは・・カグラ、これは一歩間違えたらドラゴン族との戦争になっていてもおかしくない。相変わらず結果を見れば最良だが、もう少し考えて行動しろ。
で、ドラゴンの契約精霊の話は、正直、最初からきちんとした情報が聞けて助かった。礼を言う。」

「もったいないお言葉です。魔王様。」

「いや、言いたい事は山ほどあるんだがな。ここで説教しても埒があかないからショウに任せる。
で、そっちがイアンか。こうなってしまったからには歓迎する。カグラに振り回されて大変だろう?こいつについたままでいいのか?普通に客としてここに居てもいいし、ドラゴンの谷に帰ってもいいぞ?色々と情報は聞かせてもらうがな。」

「魔王様。改めましてドラゴン族長老とババ様の孫で、先程の話に出て来たエリンの息子、イアンと申します。
オレはカグラ様に絶対服従しております故、どうかこのままカグラ様に従う事をお許しください。もちろんオレに分かる事はすべて答えさせて頂きます。」

「そうか。イアンがそうしたいなら好きにすればいい。」

まっ、何とか言わなきゃいけない事は言ったし一安心ね!みんなからの視線がウザいけど。

探るような視線のシグ様。
面白そうに見ているのは、母さん、前魔王様のジュン様、王妃様のアスラ様。
諦めた様な生温い視線は、ショウ、ルイと、前王妃様のレン様からだ。

「で、カグラは今後どうするの?」

母さんからの質問に答える。

「そりゃあ、エリン様、ローゼ様、その他最南の島のドラゴンと精霊たちに会いに行くに決まってるわっ!!」



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