44 / 62
エピローグ
エナ
しおりを挟むあれから一年が経った。
今はティムたちが魔族の国で留学中。僕もこっちへ戻って来ている。
あの後、僕は週に二回最南の島からワープポイントを使って魔王城に着き、そこからエドナ診療所に出勤する生活を送った。
毎回魔王城に着くのは気が引けて仕方なかったけど、カグラちゃんとイアンくんと更に仲良くなったり、王妃様のアスラ様にも良くして頂いてまた本を借りたりと、なんやかんやで楽しい日々となったんだ。
エリン様は意外と診療所での仕事が向いていたようで、僕が来ない三日間、何の問題もなく診察してくださった。特に子供たちに人気で、暇な時には近所の子たちと一緒に遊んでいるとの事。時々父さんまでそこに混じっていると、苦笑いのコウ兄から聞いた。
父さんとエリン様も仲良くしている。
「アキは男だけど、ドラゴンの雄みたいに強引じゃないから好き。ワタシが何をしてても怒らないし。」
そう言うエリン様は恋する乙女のようで、とても百歳を超えているとは思えない。まぁ、ドラゴンの感覚で言うと魔族の二十歳すぎと変わらないらしいので、そんなに不思議な事ではないようだ。
ティムが言っていた事(完全憑依して繋がると相手と魔力が混ざり、寿命が長い方が短い方に命を分ける)が本当なら、父さんの寿命も延びるのかな?
ドラゴンは完全憑依しても人型に寄せる事が出来るので、エリンゼ様になっても黄龍のままでなくエリン様に黄龍が混じった姿にもなれるようだからね。完全憑依をして繋がる事もあるかもしれない。
今はまだプラトニックみたいだけど。
イアンくんも双子の妹のミランちゃんも、父さんとエリン様の事は応援してくれてるみたいだし、本当に良かったなって思う。いつか家族になれるといいな。
ティムの留学が終われば、僕はまた最南の島へ着いて行く。けど、ワープポイントもあるし、週に一日くらいはエドナ診療所をやりたいな。
今は基本僕が診療所をやっているけど、エリン様も時々遊びに来て手伝ってくださる。エリン様さえその気なら、エリンゼ診療所に名前を変えて続けてもらいたい。で、エリンゼ診療所が休みの一日だけエドナ診療所にするとか?
うん、またエリン様に相談してみよう。
今は、ティムとレニちゃん、マニくん、そしてミランちゃんが魔族の国で留学中だ。レニちゃんとマニくんはこの一年の間に、ミランちゃんとともにドラゴンの谷を統一したらしい。それで本格的にドラゴン族と魔族の国交が始まったんだ。
ティムたちが何を学ぶのかと思ったら、国の動かし方のような政治的な事を勉強するんだって。
ティムはシグ様のもとで宰相の仕事を学んでいる。この二人、妙に気が合うようでティムも毎日充実しているようだ。
ちなみにレニちゃん、マニくん、ミランちゃんは、ショウ様とルイくんと一緒に学んでいるらしい。
僕はシグ様の奥様であるユイ様とも仲良くなった。色々とここでは言えないような事も教えて頂いて、すごく為になっている。
そうそう、マジョリカで時々開催される猫会議に僕も混ぜて頂く事になったんだ。これまた非常に為になる話が聞けるので助かってる。すごく楽しいしね。
ユイ様は城のデザインをしていて、リン兄とコンビを組んでいる方でもある。ユイ様がデザインした城に、利便性を加え生活しやすいよう設計をするのがリン兄。このコンビは魔族の国の建築業界で大人気なんだ。
最南の島に、魔族や人族用の宿泊施設な城を建てるというティムの計画も、この二人のおかげで実現した。やっぱりドラゴンには魔族の城は設計しにくいだろうしね。
今では城も完成し、僕とティムの最南の島での住まいとなっている。その城を管理しながら、一階の一部をホテルとして整備し、二階を僕たちの居住空間としているんだ。留学中の今も週に一度は帰っている。
城には従業員さんもいて、信用できるドラゴンが人型になって住み込みで働いてくれているので安心だ。その支配人のドラゴンは、ミクさんという昔ティムのお世話係だったというすごく有能な雌ドラゴン。
ホテルの支配人をしながら、宿泊客の魔族と輸出入の取引をしたりして、最南の島の経済を発展させている女傑なんだ。ティムは未だにミクさんには頭が上がらない様子。けどミクさん、僕にはすごく優しいんだよ?
二年後に最南の島へ戻ったら、僕がホテルでカフェをやるって話もある。僕の手料理に感激したミクさんに押し切られた感じだ。まぁ、マジョリカみたいなカフェが最南の島にあったら魔族が来た時に重宝されるかな?って思うし、前向きに検討中。
魔族の国にいる間にランさんにもっと料理を習っておかないと。
もちろん僕とティムとはラブラブのままだ。王族のみなさまも優しいし、僕は本当に幸せ者だと思う。
「エナ?どうしたの?オレにちんこ突っ込まれてるのに考え事?余裕だなぁ。そんなにお仕置きされたいの?」
「ヤダっ、違うよっ?!僕は幸せ者だって思ってただけ・・ひっ!あぁぁぁんっ!!激しっ・・・あぁぁぁぁっ!!」
「くっ!煽るなっ!!オレを煽った責任をとれよ?」
ニヤリと笑うティムを見て、今からの行為を想像し、僕は更に欲情する・・・あぁ、僕は本当に幸せ者だ・・・・
「伝説の最強ドラゴンは心優しき白猫を溺愛す」 完
ーーーーーーーーー
最後までお読みいただき本当にありがとうございます。本日は怒涛の更新となってしまい、失礼いたしました。
ティム×エナは何というか、すごく上手くハマってくれて、書きやすいカプでした。これが番ってヤツか?!と、書きながら思ってましたw
これで本編完結とさせていただきます。が、番外編を数話更新する予定です。すぐには無理かもしれませんが(^^;)
みなさま、もうしばらくお付き合いいただけると幸いです。
ルコ
0
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
【完結】山狼族の長はツンデレ黒猫を掌中に収める
ルコ
BL
俺の名前はアスミ。黒猫で漆黒の翼を持つ精霊、ミイと契約している二十歳の上位魔族だ。
いつも通り山に入った休日の朝、俺の頭の中に突然前世の記憶が蘇った。前世での俺の名前は五十嵐 明日望(いがらし あすみ)。二十歳までの記憶しかないが、その歳で死んだ記憶もない。だから本当に前世かどうかも分からない・・・・・・
何がどうなってんの??
これって異世界転生ってヤツでいいの?!!
で、更に思い出したんだがこの世界って、俺が作家のASURA先生から引き継いで書いていた小説の世界じゃね??!
昔、山の奥深くで群れを成して暮らしていたという、狼の契約精霊を持つ上位魔族が率いる部族、通称「山狼族(さんろうぞく)」。前世の俺は、気になっていた歳上の男性、ケンショーさんをその長に設定した小説を書いていた。
で、この世界の俺は、今では絶滅したかもと言われる山狼族を探しているわけで・・・
これは、前世では恋なのかいまいち自覚していなかった俺が、この世界でケンショーさんにガッツリ捕まり溺愛される物語。
ーーーーーーーーー
☆ 自作「異世界でも腹黒王子ちゃんは完璧魔王に溺愛される」から続く異世界と同じ世界ですが、この作品だけでもお読みいただけるようになっています。
☆最初の章「前世の記憶」は、これまでの物語の説明が多いです。お読みいただいた事のある方は流し読みしてください。
☆R18回には*をつけます。
☆契約精霊が憑依した翼の生えた獣人の姿でのR-18がある予定です。
☆設定等、ゆるゆるです。寛大な心でお読みいただけると助かります。
☆そこまで長くはならない予定です。
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
僕と愛しい獣人と、やさしい世界の物語
日村透
BL
ゲーム世界を現実のように遊ぶことが一般的になった時代、
僕はとある事情から配信停止中のゲームを調査することになった。
その世界の住民はすべて、獣の耳と尾を持つ獣人。
しかし依頼してきたこの担当者、なんか信用ならないな……
と思いつつ、多くの異変が発生中の世界にダイブ。
小型の兎族レンとして活動するうちに、なんと狼族の男に惚れられてしまい、
しかも自分まで好きになってしまってどうしたらいいんだ。
思い悩む僕だったが、現実世界に戻った時、指には彼からもらった誓いの指輪が輝いていた。
【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜
N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間)
ハーレム要素あります。
苦手な方はご注意ください。
※タイトルの ◎ は視点が変わります
※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます
※ご都合主義です、あしからず
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる