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最南の島
エナ2
しおりを挟む王宮はすごく立派で大きな平家だった。そりゃそうか。ドラゴンの姿で二階に上がるとか大変そうだもんな。
とにかく広い迷路のような王宮を、ドラゴンたちの後ろに着いて歩く。途中でティムに憑依するよう言われ、僕とリン兄それに従った。
「飛んだ方が速いだろ?」
確かに!ドラゴンの巨体と魔族では歩幅が違いすぎるから、普通に歩くと小走りになってしまうんだ。
「キャ~!エドナちゃんもリンネルちゃんも可愛いっ!!」
えっと、完全憑依じゃないからエナとリンのままですけどね。
それはいいけど・・確かにちょっと怖いかも。さっきのネルの気持ちが分かってしまった。悪意はないのは分かるけど、ドラゴンの姿だと大き過ぎるからか、愛でられると本能的な恐怖を感じてしまうんだ。ティムのドラゴン姿は全然怖くないのにね。
ドラゴンが五体も行くと大変なので、ボビー様とティムだけでワープポイントの設置場所へと案内して頂く事になった。
今はティムもドラゴン姿。はぁ、綺麗だなぁ・・・そう思いながらティムの後ろに着いて行くと、王宮の端っこにある扉の前に到着。
「ここは前にカグヤ様たちがいらっしゃった時に、魔族サイズに仕切った部屋なんだ。とりあえずは魔族以外ワープポイントを使わないし、だだっ広い場所に瞬間移動して来るより落ち着くかと思ってね。」
ボビー様ナイスです!うん、体育館のど真ん中より教室に移動する方が絶対に落ち着くもんね。
「この部屋の家具は除けてあるが、隣の部屋はそのまま魔族サイズの物が設置されてる。疲れたら隣で休むといい。しばらく休んでから仕事に入っても構わないし、時間がかかれば泊まってくれていいからね。リン殿、よろしく頼むよ。」
ボビー様にそう言われ、リン兄は了承する。
「かしこまりました。では早速作業に入らせて頂きます。後、最初の設置が終われば魔力を流しながらの作業になるのですが、出来れば二時間後くらいにどなたかにお願い出来ますか?」
「それならマニを来させよう。レニだとうるさくてリン殿も仕事がやりにくいだろう。あぁ、それとリン殿さえよければ今日の夜のエナちゃん歓迎会にぜひ参加して欲しいのだが・・・」
「リン兄!お願い。参加して?」
だってやっぱりまだちょっと不安だし・・・
リン兄は僕を見てちょっと微笑んでから言った。
「分かりました。参加させて頂きますよ。もしそれまでに設置が済めば、試運転も兼ねて魔族の国からエナの父と兄を呼んでもいいですか?」
「おぉっ!大歓迎だよ。」
さっき別れたとこなのに、もう会えるんだ。魔族の国に居た頃より頻繁だよ。
リン兄は早速仕事にとりかかるようなので、僕は夜の歓迎会までティムの部屋で休ませてもらう事になった。
ティムの部屋までドラゴン姿のティムの背中に乗せてもらって移動する。僕はドラゴン姿のティムも大好きだ。青緑の鱗が綺麗だし、圧倒的な雄の匂いに正直欲情する。何て言うか征服されたくなる。うっとりとしながらティムの首筋にしがみついてると、部屋に着いた。
他の部屋と同じく大きな仕切りにある扉を開けると、かなり広いドラゴン用の居住空間の端に、魔族サイズの一部屋が区切られていた。僕と人型のティムが生活するのに充分な広さだ。エドナ診療所くらいのスペースなんじゃない?
ノン用の部屋も横にあり、その部屋の持ち主は、当然のように憑依を解除して僕の中から飛び出したドナと一緒に部屋にこもった。
ティムも人型に戻っている。
僕の顔を見てティムが言う。
「どうした?何かちょっと残念って顔してるけど。」
うっ!バレてる・・・
「えっと・・ドラゴン姿のティムもカッコ良かったなぁって?」
「ふうん?それだけ?なんか欲情してない?エナのフェロモンがきつくなった気がするんだけど?」
ティムの手が僕の頬を撫で、指で首筋や喉をなぞる。
「ひぅっ!んんっ、いや、あの、強いドラゴンに、せ、征服されたいなぁ・・とか思っちゃって・・・」
「エナ、嬉しいけどここはドラゴンしかいない島だよ?そんな顔してフェロモン出して、他のドラゴンに襲われたらどうするんだ?」
「えぇっ?!僕はティムにしかそんな事思わないよ?正直、他のドラゴンが近くに来たらちょっと怖いし・・ティムにだけ欲情するっていうか・・・」
「うん、けどドラゴン側からしたら、エナの今の顔はすごく加虐心を刺激される。夜の歓迎会には従兄弟たちも参加するんだ。それまでにエナがオレのだって印を付けないとね?エナにマーキングするよ・・・」
噛み付くようにキスをされた。深い深いキス。あぁ、僕、食べられちゃうのかな。それでもいいや・・・
捕食者のキスに酔いしれながら、僕はティムに体を預けた。
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