35 / 62
最南の島
エナ1
しおりを挟むあれからマジョリカで色々話し合いをした結果、しばらくの間、エドナ診療所は僕が週二回出勤し、その他の三日は何とエリン様が勤務してくださる事になった。
「回復魔法かければいいんでしょ?今はワタシ暇だから。」
少し不安を感じなくもないけど、父さんが時間の許す限り一緒に診てくれるらしいで、お任せする事にした。これで二人の仲が進展するといいなぁ。
そして、今日はティムが最南の島へ帰る日。魔王様たちにはすでにあいさつ済みだそうで、この場所に来ているのは父さんとコウ兄だけ。
僕も荷物をティムのアイテムボックスに入れてもらってついて行く。
リン兄も一緒だ。ワープポイントを設置する為だけど、僕も心強い。やっぱり最初は緊張するからね。
僕はティムに、ドナはノンに、そしてリン兄は何とローゼ様に抱きかかえられ、ネル(リン兄の契約精霊のユキヒョウ)はスー(ローゼ様の契約精霊のリヴァイアサン)様の背中に乗っての瞬間移動だ。
コウ兄とジン(コウ兄の契約精霊のウンピョウ)はすごく複雑そうな顔をしてたけど、リン兄とネルに睨まれて大人しくしていた。
リヴァイアサンの背に乗るユキヒョウってすごいな。背負いやすいように、スー様はいつもより大きめに、逆にネルは小さめになっている。うん、可愛い。
「では、行くぞ。父君、コウ、ワープポイントが無事設置されたらぜひ一度最南の島にお越しください。」
ティムがそう言ったのを合図に、みんなで瞬間移動する。どうせすぐに帰って来て、行き来するんだからお別れの言葉はなしでって決めたんだ。
まずは一回目の移動。最南の島は遠いから、三回に分けないと瞬間移動でも行けないらしい。続いて二回目、三回目と連続で飛ぶ。数分で最南の島に着いた。
まず目に入ったのはドラゴンの巨体。それも三体!その横には少し小さめ・・と言ってもドラゴンの四分の一くらいの大きさの、伝説のドラゴンが飛んでいる。
「やぁ!いらっしゃい。待ちかねたよ。エナちゃんだね?おれはこの島の王でティムの父、ボビーだ。こっちは契約精霊でバハムートのビル。よろしくなっ!」
いきなり王様の前ってどうなの?僕にも心構えってもんが・・・しかもめっちゃフレンドリーだし。
「いきなり出迎えるなよ親父!わざわざ王宮の前に瞬間移動して来たのに・・大人しく王座で待ってられないのか?」
「ははっ!早くエナちゃんと愛しのローゼに会いたかったからな。」
「そういうとこがおふくろにウザがられてるんだって!」
えっ?僕の事はさておき、ローゼ様に早く会いたいって、ラブラブでいいなぁって思ったんだけど・・ダメなの?
「うん、国王なんだからケジメはちゃんとつけるべき・・正直ウザいし。大人しく王座で待ってなさい。エナちゃんがびっくりしてるでしょ?ほら、レニとマニもよ?」
正論ですローゼ様。すみません、僕も公私混同してました。「正直ウザいし」は聞かなかった事にします。
「ごめんなさい母さん。わたしも早くエナちゃんに会いたかったの。
エナちゃん、わたしはレニ。ティムの妹よ。こっちは契約精霊で白龍のニーナ。よろしくね。」
「ティムの弟のマニです。レニとは双子なんだ。こっちは契約精霊で黒龍のニールよろしく。」
今まで口を挟めなかった僕はやっとあいさつをする。
「みなさま初めまして。魔族のエナと申します。こっちは契約精霊の白猫、ドナです。不束者ですがよろしくお願い致します。」
「キャ~!!エナちゃんもドナちゃんも可愛いっ!わたしも魔族の男を捕まえようかしら?」
「レニ、お前ベズはどうすんだよ?」
「え~、だってリム(ベズの契約精霊)はアジ ダハーカで可愛くないんだもん。ドナちゃんみたいなもふもふのかわい子ちゃんがいいなぁ。」
・・えっと、とりあえず歓迎されてるみたいで良かった。
後でティムに教えてもらったんだけど、ベズくんは従兄弟でレニちゃんの婚約者みたいな存在なんだって。次代はレニちゃんが女王様になってベズくんが王配になるか、ベズくんが王様でレニちゃんが王妃様になる可能性が高いらしい。
もしくは、ドラゴンの寿命は長いので今のままボビー様が王様を続け、孫世代が次の王様って事もあるみたい。
うん。後継もしっかりいるようだし安心したよ。みんないいドラゴンだし、僕も上手くやっていけそうだ。
僕があいさつをし終わるとリン兄が続く。
「ドラゴン王族のみなさま、初めまして。僕はエナの義兄でリンと申します。こっちは契約精霊のユキヒョウ、ネルです。本日はワープポイント設置の為に来させて頂きました。エナ共々どうかよろしくお願い致します。」
「キャ~!!ユキヒョウ?すごく綺麗ね。リンちゃんもネルちゃんもよろしくねっ?」
とりあえずレニちゃんはもふもふ好きなんだね。雌のドラゴンに擦り寄られてネルの尻尾が丸まってるよ・・見なかった事にしよう。ネルもなかなかプライドが高いからね。
「では国王陛下、早速ワープポイントの設置に取り掛かっても大丈夫でしょうか?」
リン兄は切り替えが早いし本当に頼りになる。
「おぅっ!よろしく頼む。では皆で王宮に入るか。」
0
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
【完結】山狼族の長はツンデレ黒猫を掌中に収める
ルコ
BL
俺の名前はアスミ。黒猫で漆黒の翼を持つ精霊、ミイと契約している二十歳の上位魔族だ。
いつも通り山に入った休日の朝、俺の頭の中に突然前世の記憶が蘇った。前世での俺の名前は五十嵐 明日望(いがらし あすみ)。二十歳までの記憶しかないが、その歳で死んだ記憶もない。だから本当に前世かどうかも分からない・・・・・・
何がどうなってんの??
これって異世界転生ってヤツでいいの?!!
で、更に思い出したんだがこの世界って、俺が作家のASURA先生から引き継いで書いていた小説の世界じゃね??!
昔、山の奥深くで群れを成して暮らしていたという、狼の契約精霊を持つ上位魔族が率いる部族、通称「山狼族(さんろうぞく)」。前世の俺は、気になっていた歳上の男性、ケンショーさんをその長に設定した小説を書いていた。
で、この世界の俺は、今では絶滅したかもと言われる山狼族を探しているわけで・・・
これは、前世では恋なのかいまいち自覚していなかった俺が、この世界でケンショーさんにガッツリ捕まり溺愛される物語。
ーーーーーーーーー
☆ 自作「異世界でも腹黒王子ちゃんは完璧魔王に溺愛される」から続く異世界と同じ世界ですが、この作品だけでもお読みいただけるようになっています。
☆最初の章「前世の記憶」は、これまでの物語の説明が多いです。お読みいただいた事のある方は流し読みしてください。
☆R18回には*をつけます。
☆契約精霊が憑依した翼の生えた獣人の姿でのR-18がある予定です。
☆設定等、ゆるゆるです。寛大な心でお読みいただけると助かります。
☆そこまで長くはならない予定です。
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
僕と愛しい獣人と、やさしい世界の物語
日村透
BL
ゲーム世界を現実のように遊ぶことが一般的になった時代、
僕はとある事情から配信停止中のゲームを調査することになった。
その世界の住民はすべて、獣の耳と尾を持つ獣人。
しかし依頼してきたこの担当者、なんか信用ならないな……
と思いつつ、多くの異変が発生中の世界にダイブ。
小型の兎族レンとして活動するうちに、なんと狼族の男に惚れられてしまい、
しかも自分まで好きになってしまってどうしたらいいんだ。
思い悩む僕だったが、現実世界に戻った時、指には彼からもらった誓いの指輪が輝いていた。
【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜
N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間)
ハーレム要素あります。
苦手な方はご注意ください。
※タイトルの ◎ は視点が変わります
※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます
※ご都合主義です、あしからず
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる