28 / 31
番外編 ラウとサンの子作り
ユラ
しおりを挟むラウとサンは、山狼族のみんなに祝福されて結婚をした。
結婚式にはオレの両親とパン屋様御一行だけでなく、なんと魔王様まで来られたんだ。もう、めちゃくちゃびっくりしたよ。
魔王様は相変わらずの超絶美形なご尊顔で、
「おめでとう!いや~山狼族には前から興味があったんだ。だからユラ、いや、今はラウか。ラウの結婚式には絶対に来たくてな」
なんて軽い調子で祝福してくださった。
サンも特に警戒する様子はなかったので、魔王様にこの山をどうこうする気はないようだ。
ラウとサンの後には、ゼンとエンを初め次々と若者が結婚し、しばらくの間山はお祭り騒ぎだった。
山狼族の集落はますます賑わい、サンの山は大盛況。
オレも長として忙しいながら、ウルとサンと幸せな毎日を過ごしている。もちろん夜にはラウとなってサンを抱くのが日常だ。
「ね、ねぇユラ・・・ちょっと聞きたい事があるんだけど・・・」
ラウとサンが結婚してから一年が経ったある日、サンがモジモジしながらオレに話しかけて来た。
「ん?何?」
「あのね、ゼンとエンに赤ちゃんが生まれたじゃない?魔族も狼と同じで、体を繋げて子宮に精を受けたら子どもが宿るんでしょ?
だったら僕にもそろそろラウの子が宿ってもいいと思うんだけど・・・」
「「・・・・・・」」
あまりの衝撃発言に、オレもウルも思考と体の機能がすべて停止してしまった。
「ユラ?ウルまでどうしたの?」
「・・・えっ?!えっと・・・子宮があれば?そ、そうだね」
「やっぱり僕が完全な魔族じゃないから無理なのかな?山は子どもを孕まないもんね」
ちょっとしょんぼりしながらサンが言う。
サンは山だけど魔族と同じ肉体となっているはずだ。けど・・・
「サンは男の子だよね?」
「えっ?うん。それが?」
それまで固まっていたウルが、突然大きな声でオレとサンの会話を遮った。
「あっ!!サン、エンがテン(息子)の事で相談があるんだって!」
「えっ?!そうなの?何かなぁ。病気とかじゃないといいけど・・・僕ちょっとエンの所に行って来るね」
天幕を出て行くサンを呆然としながら見送っていると、ウルが慌てたように捲し立てた。
「ユラ!バカなの?サンに男って自覚させてどうすんだよっ?いい?これはチャンスなんだ。
多分サンは男女の違いをちゃんと分かっていない。その辺はやっぱり山で神だからか、魔族の体のつくりなんてそこまで気にしてないんだと思う。
サンが自分の体に子宮があると思えば、子宮が出来るんだよ。そしてそこに精を受けたら妊娠すると思えば・・・」
ウルの言葉にハッとする。
そうだ。サンがそう思えば・・・
「本当に妊娠するかもしれないって事?」
「そう!だってサンの中は濡れる。って事は、すでに子宮があるのかもしれない」
「た、確かに・・・」
「ねぇユラ、ラウとサンの子ども・・・欲しいよね?」
「欲しい!!」
オレは即答した。だってサンの子だよ?絶対可愛いに決まってる!!
「だからさ、これからは子宮があるって前提でサンを抱こう。
サンがそう信じたら肉体も変わる。それは肉を食べたら排泄した事で実証済みでしょ?」
「だね。分かった。うわぁ、なんか興奮して来た・・・あのさ、サンの一番奥の壁をさ、突きまくってたら更に奥に行けそうな時ってあるじゃん?あの先に子宮があるのかな・・・」
「うっ!やめてよユラ。おれまで興奮して来た・・・二人して欲情してるとサンに気付かれるよ。
エンが相談があるってのも嘘なのに、サンに不審がられる」
とりあえずは、ウルがエンの契約精霊のミンに、上手く話を合わせてもらうよう指示しているので大丈夫らしい。
そして、今はオレもウルもサンと心で繋がらないようにしているものの、あまりに感情が昂れば気付かれる。
サンはそれだけオレたちを大事に思ってくれているんだ。
「よし!今日の夜から早速子作りに勤しもう!!
それとさ、サンが子どもを欲しがってるって、山狼族のみんなに噂を流そうか。神の性別が決まってない事も一緒に伝えれば、きっとみんなラウとサンの子どもを熱望するよ。なんてったって神の子だ」
オレの言葉にウルも大きく頷く。
そうなれば山の力が働いてサンの望みは叶いやすくなる。
うん、山狼族のみんなはきっと受け入れてくれる。
だってみんなサンが大好きだから。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!
松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。
15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。
その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。
そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。
だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。
そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。
「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。
前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。
だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!?
「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」
初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!?
銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。
【完結】紅く染まる夜の静寂に ~吸血鬼はハンターに溺愛される~
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
吸血鬼を倒すハンターである青年は、美しい吸血鬼に魅せられ囚われる。
若きハンターは、己のルーツを求めて『吸血鬼の純血種』を探していた。たどり着いた古城で、美しい黒髪の青年と出会う。彼は自らを純血の吸血鬼王だと名乗るが……。
対峙するはずの吸血鬼に魅せられたハンターは、吸血鬼王に血と愛を捧げた。
ハンター×吸血鬼、R-15表現あり、BL、残酷描写・流血描写・吸血表現あり
※印は性的表現あり
【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう
全89話+外伝3話、2019/11/29完
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる