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第三部~関東逐鹿~

『青春アタック』脚本㉗表裏比興

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ついに幕を開けた春の高校バレーバトルロイヤル大会――!

高体連本部ビル
狩野「参加した全国1350校は2日間で624校にまで半減しました・・・」
破門戸「ほほほ・・・全国にはびこる無用な部活をこれほどまで簡単に処分できるとは。」
部屋に入ってくる黒服「失礼します。
試合の結果に不服だという高校が、廃部を拒否して醜く騒いでおりますが。」
狩野「・・・どういたしますか・・・?」
破門戸「・・・懲らしめてやりなさい。」



さいたまスーパーアリーナ
つかみ合いの喧嘩をしている女子バレー部員たち。
黒服の審判「こら!やめんかみっともない!!」
泣き喚く部員「こんな卑怯な真似して許さない・・・!」
部員「ふん、騙される方が悪いのよ!」
部員「殺してやる!!」
審判「よさないか・・・!離れろ!!」
部員「・・・高校最後の大会で試合もできずに廃部なんて・・・!あんまりよ!!」

もめてる女子部員たちに近づく狩野。
審判に話しかける。
狩野「駄々っ子はこいつ?」
審判「は・・・」

部員「廃部なんて私は絶対認めない・・・」
その直後、部員が後頭部を殴られて地面にうつぶせに倒れる。
ネットを張る鉄製のクランクを持っている狩野。
部員「あが・・・」
部員の髪をつかんで、契約書を差し出す狩野。
血まみれの頭を朱肉にして、拇印を押させてしまう。
契約書を黒服に渡す狩野「廃部手続きを。」
審判「わかりました・・・」

狩野「・・・で?事情は・・・」
黒服「試合形式で両者に相違がありまして・・・」
書類に目を通す狩野「・・・ふうん・・・」
黒服「こちらを。6人制の6の左に小さく1と・・・」
狩野「16人も部員がいなかったわけね・・・」

詐欺まがいのやり口で勝利した部員
「そもそも日本のバレーボールは16人制でしょう?」
狩野「・・・個人的にはあんたを殴りたかったわ・・・
詐欺師の名前を聞いてあげる・・・」
ニヤリと笑う部員「上武高校バレー部監督・部長の九頭(くず)りりあよ・・・」



東京の傾国ホテルのロビー
次の試合に向けてチェックインする白亜高校バレー部。
病田「明日はさいたまスーパーアリーナで上武高校との第二試合になります・・・」
花原「船のあいつらか・・・気が重いなあ・・・」
ちおり「じゃあお風呂入らなきゃ。」
花原「毎日入りなさい・・・」

ホテルのロビーにある巨大なテレビには、NHKのニュースが写っている。
ニュースではダム建設の強硬手段に出た建設大臣が謝罪会見を行っている。
建設大臣「現場の暴走を把握できず、遺憾に思います・・・」
テレビを見て花原「うそばっか。」

記者「建設予定地の土地収用は大臣の指示だったんじゃないんですか!」
建設大臣「まったく把握しておりませんでした・・・」
記者「音声や映像も残っているんですよ!しらを切るんですか!」
紛糾する記者会見。

華白崎「ダム建設は中止になりそうですね・・・」
乙奈「本当に良かったですわ・・・」
海野「万石先生がダム建設が生態系に与える影響を告発したらしいよ・・・
そのうえで、建物ごと私たちを口封じしようとした、つよめさんの記事が出ちゃったから・・・」
華白崎「・・・これ、現政権倒れるんじゃないですか・・・??」

フロントから戻ってきたさくらが部員にカギを渡す。
「ほい、部屋のカギ。三年と、一年・二年で部屋を分けたから。」
バスから荷物を下ろす山村「花原さんよろしくな・・・」
少し戸惑う花原「・・・え?」
さくら「男のあんたは、私たち教師の部屋で酒をつぎなさい。」
山村「では、ご相伴にあずかろうか・・・」
病田「山村君は未成年です、先生・・・」

アタッシュケースを持ってロビーに入ってくる京冨野
「・・・部屋はスイートにした方が安全だぞ・・・」
さくら「あら、京ちゃん早かったわね・・・」
アタッシュケースを渡す京冨野「約束の金だ。」
ざわつくロビーの客たち。
さくら「これほどまでに、そのセリフが似合う教師もいないわよ・・・」
病田(ミンボーの女みたい・・・)
さくら「京ちゃんも一杯やってく?」
京冨野「そうしたいのはやまやまだが、卒業式と入学式の雑務が残っててな。
また、誘ってくれ。」
さくら「あら、残念。年度末だもんね。」
駆け寄るちおり「ヤクザのせんせー!」
ちおりをなでる京冨野「お嬢。がんばれよ。お前を入学させたオレの目に狂いはなかった。」
さくら「さあ、部屋で悪だくみでもしようか。」



教師とマッスル山村のスイートルーム
上武高校の資料を並べる病田。
病田「妹によれば、上武高校は対戦形式の合意書で詐欺まがいの行為をして、戦わずして勝利を重ねているそうです・・・」
さくら「いいねえ・・・嫌いじゃないわ、そういう汚いやり口・・・」
病田「監督は、この・・・部長を兼ねる高校3年生の九頭りりあさんで、女子バレー部員120人の頂点に立っている実力者です。」
酒をさくらにそそぐ山村「・・・なんと、ずいぶん部員数が多いではないか。部員数実質一人のうちとは対極にあるな。」
病田「上部高校は女子高ですからね・・・バレーの強豪校ともあって女子バレー部に入部する子が多いみたいです・・・」
さくら「ほいで、この九頭ってやつはどんな性格?」
言いづらそうな病田「・・・い・・・妹によれば、人間のクズだと・・・」
さくら「教育者としてどうなの?今の発言・・・」
山村「聞き捨てなりませんな。」
慌てる病田「・・・い・・・妹が言ってたんですって・・・!
ミスをした部員へのしごき、いじめ、暴行など、なんでもありで、残忍な性格な上に、非常に頭が切れると・・・」
さくら「実際に頭がいいかは置いておいて・・・こいつはそれを自覚してそうかな。」
病田「定期試験の成績も上位なので・・・おそらくは・・・」
さくら「船でもうちの子たちを見下してたから、だいじょうぶか。
・・・よし。」
病田「どういうことでしょう・・・」
アタッシュケースを渡すさくら「病田先生にこのお金を託すから、九頭と八百長の交渉を取りまとめてくれない?」
病田「わわわ・・・私がですか・・・?私には絶対ムリです・・・!!
・・・口下手だし・・・臆病だし・・・頭悪いし・・・」
さくら「慶応大学文学部卒が何言ってんのよ・・・」
山村「こういう汚れ仕事は、監督が向いているのでは・・・?」
さくら「マッスルくん、兵法を分かってないわね。
孫子いわく、ヨゴレ芸人、熱湯風呂に飛び込んでも、肥溜めには落ちず、よ。」
涙目になる病田「あたし・・・肥溜めに飛び込むんですか・・・!?」



アタッシュケースを抱えてタクシーに乗り込む病田
「こんな仕事ばっかり・・・もう・・・なんなのよ・・・」



スイートルーム
上武高校に携帯を入れるさくら。
さくら「もしもし・・・上武高校の九頭監督ですか・・・?
白亜高の監督をしております吹雪です・・・はい・・・お世話になっています。
例の件ですが・・・わたくし、都合が悪くなりまして・・・顧問の病田という者を行かせますので・・・
ええ・・・よろしく。」
携帯を切る。
さくら「・・・これで、連中は病田先生の素性を調べるはず・・・」
山村「われが護衛につかなくてよかったのか・・・?」
さくら「ムキムキのあんたがいたらやつらは委縮しちゃうわ・・・
ああいう連中は相手が弱い時こそ隙を見せる・・・まあ、見ていなさい。」



新宿にあるホストクラブ
タクシーを降りる病田「こ・・・ここが待ち合わせ場所・・・??」

シャンパンタワーが並ぶ店内。
イケメンホストに囲まれながらドレスを着て奥のシートに座っている九頭
「お待ちしてましたわ、病田先生・・・!わたくし、上武高監督の九頭です。
お会いできてうれしいわ・・・」
汚れたリクルートスーツを着て落ち着かない病田「顧問の病田です・・・」
九頭「こういうお店は初めてかしら?何を飲みます?」
病田「・・・わたし・・・お酒が苦手なので・・・」
九頭「じゃあ、ソフトカクテルかなんかを・・・」
ホスト「かしこまりました。」
病田「ああ、いえ・・・おかまいなく・・・あいにく持ち合わせがないので・・・」
病田のアタッシュケースに目をやる九頭「またまた~あ・・・」
カクテルを持って来て、病田の隣に座るホスト「お隣失礼します・・・」
赤くなって照れる病田「ち・・・近いのでは・・・」
ホスト「御迷惑ですか?」
病田「い・・・いえ・・・そんなことは・・・
こんな美男子の方が、わ・・・私なんかのお隣に・・・ありがとうございます・・・」
微笑む九頭「当店ナンバー1ホストのナカノオオエノオウジです。」
ホスト「ナカノオオエノオウジです。病田先生は、うるんだ瞳が素敵な方ですね・・・」
病田「そ・・・そうですか・・・?」
ホスト「すいこまれそうだ・・・この群青色の髪の毛も、青白い肌も美しい・・・」
調子に乗る病田「よ・・・よく言われるの・・・」
ホスト「なにか注文してもよろしいでしょうか・・・」
システムをよく知らない病田「え?ええ・・・何でもご自由に・・・」
ホスト「シャンパンタワー入りまーす!!」
ホスト達「病田先生ありがとうございまーす!!」
病田「あはは・・・」
九頭「・・・で、約束の前金は・・・?」
アタッシュケースを机の上に置く病田「このケースに1000万円が入っています・・・
このうち200万円を前金として支払い・・・
本校が勝利した際に、残りの800万円を当座預金に振り込む形で・・・」
九頭「あら?私たちを信用していないの?」
病田「い・・・いえ・・・決してそういうわけでは・・・」
九頭「私は、120人の部員を預かりながらも、廃部の腹を決めたのですよ?
前金が1000万円でも正直足りないくらいだわ。」
病田「確かに・・・そうですが・・・」
九頭が咳払いをする。
ホスト達が退室していく。
九頭「よわかちゃん・・・って呼んでも?」
病田「え?ええ・・・」
九頭「腹を割ってお話ししましょうよ。よわかちゃん。
私は、あなたを買っている。
確か大学時代の作品が芥川賞の最終選考にまで残っていましたよね?」
病田「な・・・なんでそれを・・・?」
九頭「わたし、先生の処女作『ウェーイの森』の大ファンなんです。」
一気に心を開く病田「ほ、本当ですか!?」
九頭「自身のつらい闘病生活を題材にした結末は涙が止まりませんでした・・・
あなたの才能はもっと世間に評価されるべきです。
最近は、作品は執筆してないんですか?」
病田「・・・教師の仕事が忙しくて・・・」
九頭「本当にもったいないわ・・・
よわかちゃんみたいな天才文学者が、こんな小間使いみたいなことをやらされて・・・
白亜高校の給料は?」
病田「それは・・・」
九頭「それで、ご病気の治療費は賄えるんですか?難病なので保険適用外ですよね?」
病田「ローンをしてます・・・」
九頭「よわかちゃん・・・わたしはあなたに長生きをしてもらいたいの。
この1000万円はそのままお返しします。
さらに、1000万円を支払います。」
アタッシュケースを机に乗せる九頭。2つになるアタッシュケース。
病田「・・・ええっ??」
九頭「だから・・・私の“おともだち”になってほしいの・・・」
ホストが伝票をわたす「代金はこちらになります。」
伝票を見て酔いがさめる病田「270万円って・・・!」
ホスト「つけにしますか?」
九頭「私が払っておくわ。下がりなさい。」
ホスト「かしこまりました。」
病田「そんな・・・こんな大金・・・」
微笑む九頭「いいのよ・・・おともだちなんだから・・・」



ホスト「お嬢様おかえりお気をつけて・・・」
頭を下げるホスト達「ありがとうございました!!」
笑顔でタクシーに乗る病田を見送る九頭。
タクシーが走り去ると、表情を変える。
九頭「ちょろい女・・・とっとと病気でくたばれ。」



ホテルに戻ってくる病田。
さくら「どうだった首尾は?」
病田「え・・・ええ、まあ・・・」
さくら「八百長には乗ってきた?」
病田「はい・・・最終セットでさりげなく負けてくれるそうです・・・」
さくら「なめてるわね。第一セットからぼろ負けしろよ。」
山村「直前で裏切るんじゃないのか?」
病田「そ・・・それはないかと・・・」
山村「アタッシュケースは?」
病田「前金は要らないということなので、駅のコインロッカーに預けちゃいました・・・」
さくら「あら、1000万円すべてふんだくると思った。」
山村「しかし、コインロッカーに貴重品は不用心ではないか?」
さくら「いや・・・賢い。あの手のコインロッカーにはだいたい防犯カメラが設置されてるからね。
駅前なら常時駅員がいるし、交番も近いしね。」
病田(アタッシュケースが二つに増えたなんて言えない・・・)



駅のコインロッカー
駅の窓口に現れる九頭「すいません・・・コインロッカーのカギを紛失してしまったんですけど・・・」
駅員「では、管理会社につなぎますので、ロッカーの番号を教えてください。」
九頭「119です。」
受話器を取る駅員「・・・では、こちらに住所、氏名、電話番号を・・・」
九頭「はい・・・」
病田先生の個人情報を書く九頭。
駅員「管理会社がマスターキーで開けてくれるそうですが、鍵の弁償で2000円かかるそうです。」
九頭「そうですか、わかりました・・・」
駅員「気をつけてくださいね、病田さん・・・」
九頭「御迷惑をおかけしました。」
九頭(たった2000円で2000万円をいただきよ・・・)



翌朝
コインロッカーが開いていることに気づき青ざめる病田
「そんな・・・!」

動転して、公衆電話で九頭に電話をする病田
「本当にごめんなさい・・・わたし・・・九頭さんにいただいたお金を紛失しちゃって・・・」
九頭「いいから、落ち着いて・・・わたしたちはお友だちじゃない・・・」
号泣する病田「ううう・・・」
九頭「白亜高校のみんなにはどう説明するつもり・・・?」
病田「1000万円なくしちゃったって素直に謝ります・・・」
九頭「それはやめた方がいいわ・・・あなたを顎でこき使う連中よ。」
病田「そんなことは・・・!
部員のみんなは優しい子たちばかりで・・・」
九頭「心優しい先生はともかく、お金が絡むと人は変わるの。
もともと、白亜高校の資金は反社会勢力から借りた金でしょう?」
病田「裏カジノって言ってました・・・」
九頭「・・・きっと殺されるわよ。」
病田「りりあちゃん・・・わたし殺されたくない・・・!」
九頭「だいじょうぶ、学校に1000万円のアタッシュケースを用意するわ。
でも、今回はさすがにそのままあげるわけにはいかない・・・」
病田「貸していただけるだけで、けっこうです・・・!」
九頭「では印鑑登録をした実印を持って来てね。」
病田「はい・・・!」

背後から声をかけるちおり。
「せんせーいくよー!」
受話器を切る病田「はい・・・ただいま・・・!」



バス乗り場
海野「・・・え?電車で会場に向かうんですか?」
病田「はい・・・ちょっと急用がありまして・・・みなさんは先に向かっててください。」
ちおり「せんせーとバスであそびたかったな~」
病田「はは・・・帰ってきたウルトラマンごっこはまた今度で・・・」
ちおり「あたし、先生大好き!
顔色がいつも悪くてかいじゅう役にぴったりだもの。
今日は特に青ざめてて、青色発泡怪獣アボラス役にピッタリ・・・」
病田「そういっていただけると光栄です・・・」
海野「試合は午後三時開始です。
私たちは午前中はアリーナ第2小ホールで練習をしていますので。」
ちおり「絶対来てね!」
病田「わかりました・・・」
さくら「病田先生・・・」
ビクッとする病田「・・・ひいいい!はいいい!!」
さくら「・・・頼んだわよ。」
病田「バッチリです・・・!!」

出発するバスを見送る病田。
クルリと振り向き、タクシー乗り場に手を振る。
病田「タクシー!!上武高校まで~~!!」
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