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おっさん、綾華と実家へ帰る

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 四条総裁の部屋で実家帰りが決定した四時間後、俺は綾華と実家の最寄りの広場に到着していた。
 実家の近くにヘリポートなんてないのだが、ヘリが着陸できる広場を四条家があの手この手で確保したらしい。
 新幹線を使えば倍以上の時間がかかったところだ。流石に連絡をくれたお袋もこんなに早く着くなんて想定外じゃなかろうか。

「寒くないか、綾華?」
「はい、大丈夫ですわ。本当に雪が沢山積もっていて凄いですわね」

 綾華は広場から道路へ続く除雪された道を見ながら、楽しそうに息を吐いた。
 高級そうな防寒着と可愛らしい手袋をつけた綾華は、積もった雪を楽しそうに触っている。
 俺も四条家に用意してもらった防寒着に身を包みながら、懐かしい景色を眺めた。

 そう、ここは子供の頃によく遊んだ公園の近くだ。
 五年ぶりだな。ちっとも変ってやしない。
 俺は自分の荷物を背負い綾華の旅行カバンを持ちながら、除雪され融雪された道を歩く。

 綾華は俺がカバンを持つ事が申し訳なく思っていたみたいだが、慣れない雪道を旅行カバンを持ちながら歩くことほど危ないことはない。
 案の定、綾華はカバンを持っていない状態でも融水が混じったベタ雪に足を取られ転びかけたので、俺は繋いでいる手で転ばない様に支えた。
 綾華の歩くスピードに合わせて、ベタ雪に足を取られない様に歩く。

 しばらくすると、実家の旅館が見えてきた。

「あそこの瓦屋根の旅館が俺の実家だよ」

 綾華に指さしながら実家に目を凝らすと、旅館の入り口で雪かきをしている男性の後ろ姿が見えた。

 あの背格好と防寒着は……親父だ。

 降りしきる雪の中で雪かきに勤しむその姿は、数年前に見た親父の背中より小さく感じた。
 柄にもなく胸に熱い思いがこみ上げる。

 心なしか歩くスピードも速くなってしまい、少し綾華を引っ張る形になってしまったが、今度は綾華が俺の歩くスピードに合わせくれた。

 近くまで行っても雪かきに夢中の親父は気づかない。

「……ただいま、親父」

 俺に呼ばれた親父は振り返り、しばらく俺を凝視した。
 帰ってくるなんて想定していなかったのだろう、大きく目を見開いた。

「英二か?」
「あぁ、俺だよ。ただいま」

 笑顔で挨拶した俺に親父は……

「こんのぉ、ばぁか息子!!! 今さら、どの面下げて帰ってきたぁぁぁぁ!!!」

 親父が怒鳴り声とともに、俺の頬を思いっきり殴りつけてきた。
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