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おっさん、綾華とディナーデートをする

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 綾華による案内が終わった頃には十七時を過ぎていた。
 食堂でディナーパーティーが開かれるとの校内放送が流れたので、綾華と一緒に食堂へ向かう。

 さすがお嬢様校の食堂。
 お洒落なカフェと見間違える程の造りだ。
 おまけに千人は収容できる広さで快適に食事出来そう。

 クリスマス礼拝はテーブルの並びを四人席に変えているらしい。
 クリスマス礼拝に来るのは生徒の両親だけなので、三人座れるスペースがあれば良いとの考えみたいだ。

 入り口のボーイ姿のウェイターに綾華が名前を告げると席に案内された。
 どうやら、予約制みたいで事前に取っておいてくれたのだろう。

 思えば、綾華と二人で食事というのは初めてだ。
 いつもは、四条総裁か奥さんか桜庭さんがいるから、話題には困らないんだけど。

「どうなされたのですか?」
「ん、そういや綾華と二人で食事って初めてだなって」
「まあ、そうですわね。嬉しいですわ」

 綾華はニコニコしながら黙ったまま俺を見てくる。
 話題が無くても苦にはならないのだろう。
 四条家でも二人でいる時は、会話が途切れても幸せそうにすり寄ってくるし。

 気づけば、席の上にナイフとフォークが数本ずつ置かれていく。
 マジか、これって噂に聞くテーブルマナーが必要なコースか。
 知らんぞ、テーブルマナー。

「あ、綾華。これ、どう使えばいいのかな? 恥ずかしいけど、テーブルマナーって知らなくて」
「フォークとナイフを外から順番にお使いくださいませ。食事中に手を休める時は、フォークとナイフをハの字型にしてくださいませ。その時はナイフの刃を自分側、フォークは背を上に向けてくださいませね。食後はナイフとフォークは揃えてお置き、ナイフの刃を自分側に、フォークは背を下にですわ。フォークの向きは食事中と逆なのでご注意くださいませ」
「す、凄いね綾華」
「テーブルマナーは中等部一年で習いますから、学内の子は皆さん覚えてらっしゃいますわ」

 流石、お嬢様校だ。俺が通っていた公立中学なんかとはレベルが違う。
 俺が中学一年の頃なんて給食で出されたミカンでキャッチボールをしたり、牛乳一気飲み競争とかが当たり前だったんだが。

 テーブルマナーを聞いたはいいが、土壇場で失敗しない自信がないので、順番に出てくる料理を綾華の真似をしながら食べることにした。
 フランス料理のコース料理も食べること自体初めてで、どう料理を切っていいかも戸惑う。なにしろ、一品一品が小さい。
 そんな俺を微笑ましく見てきて、食べるスピードを微妙に調整してフォローしてくれる綾華。

 料理は小さいが、どれも全品で品数が多かったので物足りない感はなかった。
 食後のコーヒーを飲んでいると、見知らぬダンディな方が声を掛けてきた。

「失礼、若宮様でよろしいかな」
「あ、はい。そうですけども?」
「初めまして、わたしは九条兼久という。この前は娘が世話になったみたいで、お礼を言いたくてね」

 ……九条?
 娘が世話に?って、雪菜の親父さんか!?
 九条財閥のドン!?
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