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おっさん、店長に身体を揉まれる

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 綾華に案内されたブランド店に入ると、すぐさま店長らしき初老の男が近寄ってきた。
 ここは四条家御用達のブランドらしく、店長も馴染みらしい。
 普通は洋服が並んでいるフロアで、あれやこれやと試着しながら決めるものだろうが、フロアとは別の応接間に通された。

 豪勢なソファに座り、目の前に紅茶と茶菓子が用意されると店長が笑顔で話しかけてきた。

「かしこまりました、本日はそちらの方のご洋服を見積もればよろしいのですね」
「えぇ、若宮様に合ったお仕立てをお願いいたしますわ」

 俺に似合うコーディネートなんてあるんだろうか。
 今までの不摂生とストレスのせいで、薄ハゲに三段腹の中年体型だ。
 どんなにお洒落な洋服を用意してくれたとしても、マネキンに着させた方がマシだろう。

「お任せください。見たところ、若宮様の全体的なバランスは悪くございません。キチンと採寸すればお似合いの一着が仕上がります」

 待って、採寸ってことはオーダーメイドってことだろ。
 どこのお店でもオーダーメイドってメチャクチャ高いし、しかもここは超一流のブランド店。
 俺の貯金なんて簡単に吹っ飛ぶぞ。

「ちょっと、オーダーメイドは待ってください。今回そこまでの予算がなくて」
「御心配には及びませんわ。お支払いは四条家が致しますので」
「いや、今回は俺の私服だぞ?」
「若宮様は当家のお客様も同然ですの。お客様の必要なものを当家が負担するのは当り前ですわ」

 お客様じゃなくて教育係なんだけどな、しかもキチンと教育係として給与も貰っている立場。
 流石にここは破産覚悟で俺が払うと思った矢先。

「今日、お買い物に出かける前にお父様も同じ事をおっしゃいましたわ」

 四条家御用達のブランド店で、四条総裁と綾華の意向を無視すれば恥をかかせてしまう。
 俺が恥をかかせる行動はしないと分かってて四条総裁は綾華に伝えたに違いない。
 相変わらずの狸親父っぷりだな、いつか覚えてろよ。

「分かった。じゃあ、お言葉に甘えるよ。後で四条総裁にもお礼を言っとかないとな」
「お話がまとまりましたようで。では、採寸いたしますのでどうぞこちらへ」

 洋服を脱ぐのかと思いきや、着たままでも採寸できるらしい。
 手際よく俺の首回りや腹回りなどを測っていく。
 その際に、何を気になったのか断わりを入れながら俺の腕や腹、太ももにふくらはぎを強めに揉んでくる。

 ……まさか、この店長ってソッチ系の人?

「あのさ、店長さん、採寸って身体触る必要あるの?」
「いえ、ありませんよ」

 ……なら、なぜ触った?

「ちょっと、若宮さんのお身体に興味がありまして」

 ……それって、やっぱ、そっち系の意味?
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