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「クソバカ駄犬」
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しおりを挟む「おかしい……これはおかしいぞ。あれからもう三日経つ……なにも言ってこないとは……これいかに……?」
「そんな事件っぽく言わなくても聞いたげるから。なにがあったの」
いつもの屋上での昼食中、私は美里に相談してみた。
「実はさー三日前に主任をデートに誘ったんだあ」
「へえ」、美里は目を丸くした。「どういう心境の変化?」
「ほら、この間エス主任の夢みたって言ったじゃん?それで、実際はどうなのか確かめてみたくなってさー。試しにベッドインしてみよっかなって」
「ぼほッ!!」
美里は思わずブロッコリーを吹き出したが、落ちてしまう前に箸でキャッチするという小粋な芸当をみせた。
「ベッドインて……」
「それなのにだよ?主任ってばなーんにも言ってこないの。メールでもそのことには触れてこないしさ」
主任からのメールは毎日届いていた。でもデートのことは話題にしないし、会社ではプライベートな会話しないし。美里はマグボトルをぱかっと開きながら言った。
「そんなの、もう一度誘えばいいじゃないの。主任に限ってはなさそうだけど、よく聞こえてなかっただけかもしれないし」
「イーーーーヤッッッ!!」
腕で大きなバッテンをつくる。
「バツ!大ペケ!ダメぜったい!」
「なんでよ」
私はうなだれてベンチに両手をついた。
「あの時はなんでサラッと言えたのか分からないけど……私からデートに誘うなんて……!思い出しただけで……!もう……っ!ほんと、もう……っ!」
デートしましょうよ。
…‥言った。たしかに言った。私の台詞だ。なんであんなこと言えちゃったんだろ、あの時の私……。思い出しただけで、もう……!全身がかゆくなってきちゃう!
「あー!かゆいかゆい!気持ち悪いよ~!」
「そんなに顔赤くして……。恥ずかしかったの?」
「はあ!?あ、赤いってえ!?なにがあ!?」
「だからあんたの顔が」
くう……。さすがは美里……全部お見通しってわけね……。そうだよそのとおりだよ。まさか私から主任をデートに誘っちゃうなんて、思い出しただけで恥ずかしくてたまらないのよ。
後からくるタイプの恥ずかしさなの。後からリボなの。あの時平気だった分、利息が高いのよ。
「よかったじゃない」
美里は笑うでもなく、真面目な顔をするでもなく言った。よかったじゃない?なにが、と視線で問いかけてみる。
「厚顔で図々しい上に、恥じらいも胸もないあんたにしては、いい反応よ。」
「……ん?」
あれ?聞き間違いかな?これ悪口じゃない?
「美里ちん?急に悪口?」
「あんたってさ、嫌なことは全力で避ける卑怯者タイプじゃない?場合によっては人を犠牲にすることもいとわないし、単細胞なだけにまっすぐ嫌なやつじゃない?」
「おーい、美里ちーん、傷つくぞー」
「ちょっとジャイアンぽいよね。悪気はなく俺様な感じが」
私たちはちょっとの間顔を見合わせる。美里は口の横に手を添えた。
「よっ!女版ジャイアン!歌が下手なのもそっくりだぞー!」
「えへへ。そんなに似てるかなあ?…………ってなるかああああ!!」
私は暴言で傷んだ胸を抑えながら、地団駄を踏んだ。
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