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「変態VS変態VS変態」
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しおりを挟む「そういえば主任、もうひとりのへん……涼子さんでしたっけ?あの人はどうしました?」
「森に入るまでは一緒だったのですが、そこからは分かりません。探しますか?」
「いやイッス。怖いんで」
「さすが詩絵子様!さっくりしておられる!」
「うっかり遭遇しないように帰りましょう」
私は暗くて足場の悪い山道を歩き始めた。とりあえず下ればいいのだろうと思い、そのように道を選んで進んだ。
なぜか主任は後ろをついて来る。横には並ばず。
「……」
「……」
「……」
「……」
え!?なんで無言!?
「主任」
私は立ち止まり、主任を振り返った。
「なんで後ろを歩くんですか」
「ランドセルがよくお似合いの後ろ姿を、脳裏に焼き付けておくためですよ」
……あっそう。
「それにしても無口じゃないですか。いつもはもっとこう、はっちゃけてマシンガントークするじゃないですか」
私の言葉に、主任は少し驚いたようだった。
「……僕、はっちゃけて、ますか?」
そう聞き返されると、はっちゃけてるという言葉が持つイメージは主任に合っていない気がした。どうだろ?思い返してみると……。
『どうか……どうか、僕を踏んでください!!』
~初めて本性を表したその時~
『そのぺったんこで慎ましやかな胸!短い手足!ほどよく生意気につった目!見事なまでの幼児体型!すべてがこの駄犬の理想通りでございました』
~言葉のナイフ乱刺事件~
『さあ今です詩絵子様!そのピンヒールで僕にトドメを…っ!』
~半裸でロープを巻きつけての衝撃発言~
うん。やっぱはっちゃけてるな。
「はっちゃけてますよー、よく喋るし常人離れした動きするし」
「そうですか……初めて言われました……」
納得するように呟いて、主任は少し笑った。
「詩絵子様の前では、そうなんでしょうね」
「……」
くっ……。久々に……、ひっさ、びさに、きゅうっときたぞ。なんでよなんでよ!私の前では変態だって言ってるだけじゃん!きゅん要素ないじゃん!
でも、主任って笑うと優しい顔になるんだよなあ。なんか、嬉しくなっちゃうよ。なんか、ずるいよ。その笑顔。
「そういえば、涼子さんとは仲良くなったんですね」
森に入るまでは一緒だったという発言と、2人の熱い握手を思い出して言ってみる。
「仲良くというのは少し語弊がありますね。彼女はいわば同志なのです。ひとつの木になる同じ実なのです。枝分かれしていても、根っこに持つ志は同じなのです。互いを見るのは初めてでも、共有されている信念があります」
「ふ~ん。嫌な木ですね」
「詩絵子様!その調子です!」
喜ぶ主任を冷たく一瞥し、無言で歩き始める。こんな態度は主任をさらに喜ばせてしまうって分かってたけど、そんなことには構っていられないくらいムッとしている自分に気がついた。
なんなの?主任がそんなに女の人へ熱意を向けてるのって、詩音以来じゃない?そんなに言うなら、同志同士なかよしこよしやってればいいじゃん。
「……」
ってなにこれ!?やきもち!?
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