ドМ彼氏。

秋月 みろく

文字の大きさ
上 下
102 / 188
「最強のライバル?」

6

しおりを挟む



「では説明しましょう。この子はどうやら詩絵子の親戚の子で、今日は詩絵子が預かってるみたいなの」


「みたいなのって」


「私もさっきバッタリ見てね。そん時の会話から察してって感じだけど。だいたいあってる?」



 美里がたずねると、少女は素直に頷きました。心なしか、やっと頼りになる人に出会えて安堵しているようでもありました。



「そこでね、どうやら詩絵子は、この子相手に対抗心剥き出しで、大人気ないことをやってたわけよ」


「おー、あいつ子供だもんな」


「ちなみに詳細はこんな感じ」




『もうッ!詩音つまんない!詩絵姉ちゃんばっかりずるい!』


『でたでた。子供の勝手な言い分。ほんっとーに幼稚なんだから』



 美里は店内の客に紛れ、二人の様子をはらはらして伺っておりました。



『本当に詩絵姉ちゃんばっかりじゃん!』


『そんなことないでしょ!このあとにあんたの服も見に行くんだから!』


『ママたちなら、いつも詩音の好きなところ見せてくれるもん!詩音、こういうの知ってる。『おとなげない』っていうんだよ』


『ハン!大人になった覚えなんてないからね!こっちは骨の髄までお子様ランチでやってきてんのよ!』




「おおー。自分のことはよく分かってんだな」


「そう。そうなの。詩絵子は自分がよく見えてんのよ。だからってこう開き直るのもねえ」



 ようよう美里は拳を握りしめて、詩絵子を後ろから殴りつけてやろうとしていました。



『そうそう。最初っからそうやって大人しくしとけばいいのよ』



「ここ、そうこの時よ」


「なに?」



 拳を握り締める美里の視界に映ったのは、物陰に隠れ、カメラを構えてシャッターを切る主任の姿でした。



「なにやってんだよ、あいつは……え、てかドエム彼氏と別れてねーの?奥さんいたとか言ってたじゃん」


「その辺は丸く収まったわ。それはともかく、どうやら主任はね、この時のエスっぷりを発揮した詩絵子を写真に収めたかったみたいなのよ。夢中で撮ってんの」



『詩絵子様……いい表情をなさる』



「そんなことを呟いて、詩絵子がエスの頭角を現した感動を噛み締めていたわ。会社の人間にみられてないかって、私がハラハラしたんだから」


「へえー……」



『もういいッ!!詩音かえる!ママのとこに行く!』



『あ……』



 これには向井帝人も反応を示しました。追いかけるべきか……それとも写真を撮り続けるべきか……。彼の行動に迷いが滲みます。



『あっそー。勝手にすれば?』


『そうですその顔です!待っていました!』



「主任は条件反射のように、詩絵子を撮り続けたわ……」


「なるほど……」



 二人はしんみりして呟きます。それから、いくらかハリのある声で美里は言いました。



「それで、私が詩音ちゃんの後を追ったの。途中で見失ってしまって、また見つけたときにはあんたといた。こういう経緯よ」


「そっかー。まあ良かったぜ、親族だから似てるってわけだな」


「私も最初に見たときは驚いたけど、さすがにサイズの違いで分かるでしょ」


「あいつもこんなもんだろ」


「そうね、中身はこの時期からずーっと横ばいでしょうね」



 腕を組んで、彼女は長くため息を吐きました。



「そんじゃ、どうする?この子連れてくか」


「まさか」



 朔の提案を、美里は食い気味に拒否します。



「あのお子様ランチはね、今までにも増してわがままに拍車がかかってんのよ。主任がなんでも受け入れちゃうから」


「あいつとしては、ワガママになって欲しいんだろうな。なにせヌンニャク志願者だから」


「このまま行くと、私の手に負えなくなっちゃうのよ。ということで」



 いったん言葉を区切り、美里は詩音の小さな頭に手を乗せました。



「詩音ちゃんには、しばらく迷子になってもらおうと思います。それで、詩絵子があわてふためいて泣き出した頃に、説教してやんの。ね、詩音ちゃん嫌な思いしたでしょ?」



 少女は俯いて、小さく頷きます。それを見て、朔はこんな風に言いました。



「それじゃ甘いね」


「甘い?」


「そうだよ、こーーんな小さい子をいじめたんだぜ?もっとキツく懲らしめないと」



 詩音の頭をガシガシと撫でて、彼はいたずらを思いついたような顔をします。



「それもそうね。あの子バカだから繰り返しそうだし。でも、懲らしめるって具体的になにするのよ?」


「ふっふっふー」



 不敵に笑い、顔の横で人差し指を立てます。それから朔は言いました。



「それは……」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

【R18】エリートビジネスマンの裏の顔

白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます​─​──​。 私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。 同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが…… この生活に果たして救いはあるのか。 ※サムネにAI生成画像を使用しています

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

私を犯してください♡ 爽やかイケメンに狂う人妻

花野りら
恋愛
人妻がじわじわと乱れていくのは必読です♡

処理中です...