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「最強のライバル?」
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しおりを挟む「では説明しましょう。この子はどうやら詩絵子の親戚の子で、今日は詩絵子が預かってるみたいなの」
「みたいなのって」
「私もさっきバッタリ見てね。そん時の会話から察してって感じだけど。だいたいあってる?」
美里がたずねると、少女は素直に頷きました。心なしか、やっと頼りになる人に出会えて安堵しているようでもありました。
「そこでね、どうやら詩絵子は、この子相手に対抗心剥き出しで、大人気ないことをやってたわけよ」
「おー、あいつ子供だもんな」
「ちなみに詳細はこんな感じ」
『もうッ!詩音つまんない!詩絵姉ちゃんばっかりずるい!』
『でたでた。子供の勝手な言い分。ほんっとーに幼稚なんだから』
美里は店内の客に紛れ、二人の様子をはらはらして伺っておりました。
『本当に詩絵姉ちゃんばっかりじゃん!』
『そんなことないでしょ!このあとにあんたの服も見に行くんだから!』
『ママたちなら、いつも詩音の好きなところ見せてくれるもん!詩音、こういうの知ってる。『おとなげない』っていうんだよ』
『ハン!大人になった覚えなんてないからね!こっちは骨の髄までお子様ランチでやってきてんのよ!』
「おおー。自分のことはよく分かってんだな」
「そう。そうなの。詩絵子は自分がよく見えてんのよ。だからってこう開き直るのもねえ」
ようよう美里は拳を握りしめて、詩絵子を後ろから殴りつけてやろうとしていました。
『そうそう。最初っからそうやって大人しくしとけばいいのよ』
「ここ、そうこの時よ」
「なに?」
拳を握り締める美里の視界に映ったのは、物陰に隠れ、カメラを構えてシャッターを切る主任の姿でした。
「なにやってんだよ、あいつは……え、てかドエム彼氏と別れてねーの?奥さんいたとか言ってたじゃん」
「その辺は丸く収まったわ。それはともかく、どうやら主任はね、この時のエスっぷりを発揮した詩絵子を写真に収めたかったみたいなのよ。夢中で撮ってんの」
『詩絵子様……いい表情をなさる』
「そんなことを呟いて、詩絵子がエスの頭角を現した感動を噛み締めていたわ。会社の人間にみられてないかって、私がハラハラしたんだから」
「へえー……」
『もういいッ!!詩音かえる!ママのとこに行く!』
『あ……』
これには向井帝人も反応を示しました。追いかけるべきか……それとも写真を撮り続けるべきか……。彼の行動に迷いが滲みます。
『あっそー。勝手にすれば?』
『そうですその顔です!待っていました!』
「主任は条件反射のように、詩絵子を撮り続けたわ……」
「なるほど……」
二人はしんみりして呟きます。それから、いくらかハリのある声で美里は言いました。
「それで、私が詩音ちゃんの後を追ったの。途中で見失ってしまって、また見つけたときにはあんたといた。こういう経緯よ」
「そっかー。まあ良かったぜ、親族だから似てるってわけだな」
「私も最初に見たときは驚いたけど、さすがにサイズの違いで分かるでしょ」
「あいつもこんなもんだろ」
「そうね、中身はこの時期からずーっと横ばいでしょうね」
腕を組んで、彼女は長くため息を吐きました。
「そんじゃ、どうする?この子連れてくか」
「まさか」
朔の提案を、美里は食い気味に拒否します。
「あのお子様ランチはね、今までにも増してわがままに拍車がかかってんのよ。主任がなんでも受け入れちゃうから」
「あいつとしては、ワガママになって欲しいんだろうな。なにせヌンニャク志願者だから」
「このまま行くと、私の手に負えなくなっちゃうのよ。ということで」
いったん言葉を区切り、美里は詩音の小さな頭に手を乗せました。
「詩音ちゃんには、しばらく迷子になってもらおうと思います。それで、詩絵子があわてふためいて泣き出した頃に、説教してやんの。ね、詩音ちゃん嫌な思いしたでしょ?」
少女は俯いて、小さく頷きます。それを見て、朔はこんな風に言いました。
「それじゃ甘いね」
「甘い?」
「そうだよ、こーーんな小さい子をいじめたんだぜ?もっとキツく懲らしめないと」
詩音の頭をガシガシと撫でて、彼はいたずらを思いついたような顔をします。
「それもそうね。あの子バカだから繰り返しそうだし。でも、懲らしめるって具体的になにするのよ?」
「ふっふっふー」
不敵に笑い、顔の横で人差し指を立てます。それから朔は言いました。
「それは……」
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