ドМ彼氏。

秋月 みろく

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「おおっ!?主任の軌跡がついに明らかに!?」

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『帝人さん、私が至らないばかりに退屈な思いをさせてごめんなさい。ただ流行っているというだけであの話を選んでしまい、後悔しています。今思えば脈絡のないつまらない映画だったように思います。それと、帝人さんがせっかくすすめてくれたポップコーン、食べれば良かった……。帝人さんがあんなに頬張るんだから、きっと美味しかったんでしょうね……。こちらも後悔したので、あとで買って食べました。とても美味しかったです。時間はずれてしまいましたが、帝人さんと一緒に食べたポップコーンの味、私は一生忘れないと思います。記念に帝人さんが置いていったポップコーンの入れ物は我が家で保管しておきますね。これを見るたびに、帝人さんのあの冷たいつまらなそうな顔が思い浮かびます。少しおかしく思うかもしれませんけど、それは私の一番好きな表情です。よくわかりませんけど、その表情を見ていると胸がときめいてたまりません。帝人さんは覚えていますか?ずっと前に私がつくったクッキーを、帝人さんは『粘土みたい』と一口食べたきりもう二度と手をつけることはありませんでした。あの時もひどく冷たい顔をされていましたね。実はそのクッキー……ずっと机の引き出しにしまっています(きゃっ、言っちゃった!)。ちゃんと乾燥剤と一緒にジップロックに入れているので、まだ形は損なわれていません。こうして帝人さんを思い出せる品が増えてきて、私はとても嬉しく……』




「詩絵子様、お分かりいただけますか……?彼女のメールは変態的な上に、おそろしく長いんですよ……」



 主任はどんよりと呟く。



「いやいや!主任にそっくりですよ!長文メール送り付けてくるところまで一緒じゃないですか!」


「僕のメールが長いと?」


「むしろ長くないと?」


「詩絵子様が疲れてしまわないよう、できるだけ掻い摘んで短くまとめております。それに、一日に何度も送り付けては申し訳ないので、原則として一日に一度だけと決めています」


「……主任のメールが長い原因が分かりました」




 ある時、大学生になった二人は、遊園地へ行く約束をした。現地集合の予定だったが、バイトに明け暮れていた主任は、すっかり彼女との約束を忘れてピザを配達していた。


 とっぷり日が暮れたころ、主任はピザ配達のバイクで遊園地へ向かった。彼女は暗い中、遊園地の入り口で風船を持ち、ひっそり立っていたという。



『美雪、悪い。約束忘れてた。これやる』



 美雪さんの前に停止し、主任はピザをやった。そしてそのままその場を去った。



「いよいよ鬼畜じゃないですか!!」


「その日もメールが届いたんですよね。名前を呼ばれたのは初めてで嬉しかったと……。意識したこともなかったのですが、その時初めて彼女の名を呼んだようですね。とまあ、このようにですね」



 正座して話を終えた主任は、話を総括するように居住まいを正した。


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