ドМ彼氏。

秋月 みろく

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「今夜、お迎えにあがります」

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送信者:主任
件名:駄犬です。



「……」



 お前かあーーーーい!!!


 なに偉そうに注意してんのさ!


 ていうかどういうこと!?今説明してる間に打ったわけ!?


 私は顔を上げて主任を凝視した。


 右手にはペンを持ち、ホワイトボードを滑らせている。携帯電話は持っていない。だとすると、あのポケットに入った左手……あの中に携帯が……?


 ……いや、入っていたとしてもだ。



 あんな難しい説明をしながら、右手でボードに図やら文字やらを書きながら、左手でメールを打つだと……?


 ……もはや神の所業じゃないか。


 デスクの下で、おそるおそるメールを開く。



『先程の無礼な態度、言葉遣い、申し訳ありませんでした。詩絵子様が多用な中、メールを送りつけるとう無礼をお許しください』



 多用なのはあんただから!私はあんたの説明聞いてるだけだから!!


 人知れず突っ込みをいれ、続きを読もうとしたところで、またバイブが振動した。




送信者:主任
件名:度々申し訳ありません。


『この駄犬は今しがた、詩絵子様を叱りつけるという、死に値する冒涜的な行動をとってしまいました。立場上しょうがなかったとはいえ、詩絵子様がマナーモードに切り替えていないことまで推測できなかった僕の浅はかさが悔やまれます。謝って済む問題でないことは重々承知しております。どうか今夜、詩絵子様の気がすむまで、昨晩お渡ししたピンヒールで、血が流れるまで僕の頭を蹴ってください。』



 なに上手く自分の変態欲求かなえようとしてんだよ!!



「そこまで言うなら蹴ってやるよ!!」



 バン!と机に手をついて立ち上がる。私の声に、しん……と室内が静まり返る。



 あれ……?声に出ちゃってた……?
 パチ、パチ。二度瞬きをして、目を白黒させる。主任と、目が合った。



「清水。白昼夢でも見てるのか?俺が教師だったら、廊下に立ってろと怒鳴ってるとこだぞ?」



手の中で、すぐにバイブが鳴った。



送信者;主任
件名:無上の喜び!!



『今夜、お迎えに上がります。』



 もしかしてわたし……やっちゃった……?




 つづく!

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