怪物コルロルの一生

秋月 みろく

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■新品の翼

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「分かるの?」

 ずばり言い当てられ驚く。すかさずコルロルが挙手をした。

「僕も。僕も分かった。本当は僕の方が先に分かってたけど、人間の口に慣れていないせいで言葉を発するのに手間取ったんだ」

「気づいてないのかもしれないが、ちょっと前まで怪物だったとは思えない流暢さだぞ。まあいずれにせよ、人には多面性があるってことだ」、ライアンはあたしへ顔を向ける。「どこまでも清いだけのやつはいないし、どこまでも汚いだけのやつもいない。誰にだって光と影が混在していて、単純じゃない奥行きがある」

 ライアンの説明は、とても納得できた。だけど、実感はない。人を崖から突き落としながら、一方では綺麗な景色に感涙する……なんだかちぐはぐだ。

「レーニスの言いたいこと、分かるわ」、リーススはきちんと足をそろえて岩に座り、膝の上の瓶を両手で握っていた。「私も同じ気持ちだもの。おじさんは親切だったし、私たちを抱きしめてくれた。父さんを思い出した」

 リーススの横顔は寂しそうだった。あたしは空を見上げ、父さんを思った。戻りたての感情で、初めて父の死を悼んだ。すみやかに悲しみの波が心に流れ、寂しくてたまらなくなり、無性に父さんに会いたくなった。

 同時に、心の中でリーススに謝罪した。ごめん。ごめんねリースス。一緒に悲しめなくて。一緒に乗り越えなきゃいけなかったのに、あなたを孤独にした。だけどもう、謝罪は伝えなかった。

「リースス、ずっと一緒にいよう」、涙をこらえきれないまま伝える。「これからは、一緒に楽しんで、一緒に悲しもう。一緒にでかけて、一緒に帰ろう。今までの分まで、たくさん笑おう」

 リーススはなにも言わずに頷いて、手を差し出した。彼女の手を握り、あたしは鼻をすすった。

「ちなみになんだけど、それは僕も」


「まあまあ。せっかく姉妹の絆を深めてるところなんだから」








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