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トアイトンの迷宮
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「さて、明日からどうしたものか」
風呂上がりローレインが窓から外を見つめ、そんなことを呟く。カレンとフェリック以外の者は疲れたのか、先に眠ってしまっていた。
「あてがないのか?」
「ああ、私も契約が切れたらどうするか決めておくつもりだったのだがな。魔王"エイルカス"またあの厄介者が再臨したせいでくるってしまった」
「魔王エイルカスか⋯⋯」
フェリックは怪訝な様子でそう訊ねる。
魔王エイルカス。その名の通りこの国を脅かす魔の王。魔王自体も相当な強さだが、その行く手を阻む魔王の精鋭もかなりの強さと聞いたことがあった。
「ああ。やつは手強い。さすがの強さだ。しかも再臨したとなれば、おそらく強さもさらに強くなっていることだろう。実に厄介だ」
「でも、カレンたちはそれを倒したんだろ? すげぇよ」
「ああ、だが奴隷の身分で戦うことは許されていなくて、ほとんど見ているだけだったがな」
「⋯⋯そうだったのか」
「そろそろ私たちも寝るとしよう。睡眠不足は美容の敵だ」
そう言ってベッドに歩いていくカレン。
「そうだな。って、そういえば俺は挟まれて寝るのか⋯⋯」
思わずローレインを見てしまう。すやすやと気持ちよさそうに寝ているその顔は実に綺麗だった。まず、女性と寝るというのが思春期男子からしたらドキドキするシチュエーションなのだ。
と、そんなことを考えていると、先にベッドに入ったカレンから声が掛かる。
「フェリック殿、さっきのは冗談だ。床で寝たいなら床で寝てもよいぞ」
「冗談かよ!!なら床で寝る!!」
フェリックは少々拗ねた様子でその場に横になった。その場所は窓から月が見え随分とリラックスが出来た。今日あった出来事を考えているうちに、フェリックは眠りについてしまった。
△▼△
「ここがトアイトンの迷宮か! すげぇでけぇ入口だな!」
翌日の昼。フェリックたちのパーティーは王都ギルテリッジから少し離れた場所にある迷宮、トアイトンの迷宮へと来ていた。
理由はフェリックがカレンたちの戦いを見てみたいというだけだった。魔王討伐に成功する瞬間を見ているだけとはいえ、そんな強いパーティーにいたカレンたちは相当強いだろう。
「そうだな。トアイトンの迷宮は一度だけ来たことがある。久しぶりだな」
「そうだねー! すっごい久しぶり!」
「ですです! 最初の頃に来ましたね!」
「久しぶりなのだー!」
カレンたちのパーティーは一度来たことがあるようで、みな懐かしさに浸っている様子だった。ちなみに、シャロリンはカレンの言う通り、元の溌剌とした少女に戻っていた。その事には苦笑しか出ないフェリックである。
「さて、早速入ろうか」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
カレンたちが入口から中へ入ろうとしたとき、フェリックがそんなことを言い出す。
「どうしたフェリック殿」
「ほ、本当に大丈夫なのか? めちゃめちゃ強い敵が出てきたりしないか?」
フェリックは内心とてもビビっていた。このトアイトンの迷宮には地下にSランク程の魔獣が眠っていると聞いたことがある。
しかし、カレンは首を横に振った。
「大丈夫だフェリック殿。私たちの実力をなめてもらっては困るぞ。まぁ最下層の方へ行けば話は別だが、上層の方にはいないはずだ」
カレンにそう言われ、内心まだ少しビビりながらもフェリックは頷いた。
「そ、そうだよな。Sランクの魔獣なんて上層にはいないよな」
「ですです! そんな強い敵出てきませんよ!」
「分かった。止めてわるかったな。行こうか」
そしてなぜかフェリックを先頭にフェリックのパーティーはトアイトンの迷宮に入っていったのだった。
△▼△
「はっ! 余裕だな」
迷宮に入ってから数分。早速上層に出てきた敵、"リザードマン"をカレンは次々となぎ倒していった。リザードマンは二足歩行するトカゲの一種だ。トカゲの頭部と尻尾、全身に硬い鱗で覆われた皮膚を持つ。
カレンが使っている武器は弓、単に弓の攻撃ではリザードマンには歯が立たないだろうが、そこにカレンの魔法が加われば話は別だ。
「す、すげぇな⋯⋯。リザードマンを圧倒してる⋯⋯」
「ですです! カレンさんはこのパーティーの中でもリーダーだけあってかなり強いんです!」
「だよな、あんなに簡単に倒しているのは初めて見た」
フェリックがこうしてローレインと話していてる間もカレンはリザードマンを次々と倒していた。
リザードマンは縄張り意識が強く、仲間を呼び、侵入者をそう簡単には通させてくれない。しかし、カレンが倒してくれているので、ここでは大丈夫だろう。
それから全員でリザードマンの身体から使えそうな素材を剥ぎ取る。
「さて、ほとんど倒してしまったな。中層まで敵は出ないだろう。先へ行こう」
『おう!』
風呂上がりローレインが窓から外を見つめ、そんなことを呟く。カレンとフェリック以外の者は疲れたのか、先に眠ってしまっていた。
「あてがないのか?」
「ああ、私も契約が切れたらどうするか決めておくつもりだったのだがな。魔王"エイルカス"またあの厄介者が再臨したせいでくるってしまった」
「魔王エイルカスか⋯⋯」
フェリックは怪訝な様子でそう訊ねる。
魔王エイルカス。その名の通りこの国を脅かす魔の王。魔王自体も相当な強さだが、その行く手を阻む魔王の精鋭もかなりの強さと聞いたことがあった。
「ああ。やつは手強い。さすがの強さだ。しかも再臨したとなれば、おそらく強さもさらに強くなっていることだろう。実に厄介だ」
「でも、カレンたちはそれを倒したんだろ? すげぇよ」
「ああ、だが奴隷の身分で戦うことは許されていなくて、ほとんど見ているだけだったがな」
「⋯⋯そうだったのか」
「そろそろ私たちも寝るとしよう。睡眠不足は美容の敵だ」
そう言ってベッドに歩いていくカレン。
「そうだな。って、そういえば俺は挟まれて寝るのか⋯⋯」
思わずローレインを見てしまう。すやすやと気持ちよさそうに寝ているその顔は実に綺麗だった。まず、女性と寝るというのが思春期男子からしたらドキドキするシチュエーションなのだ。
と、そんなことを考えていると、先にベッドに入ったカレンから声が掛かる。
「フェリック殿、さっきのは冗談だ。床で寝たいなら床で寝てもよいぞ」
「冗談かよ!!なら床で寝る!!」
フェリックは少々拗ねた様子でその場に横になった。その場所は窓から月が見え随分とリラックスが出来た。今日あった出来事を考えているうちに、フェリックは眠りについてしまった。
△▼△
「ここがトアイトンの迷宮か! すげぇでけぇ入口だな!」
翌日の昼。フェリックたちのパーティーは王都ギルテリッジから少し離れた場所にある迷宮、トアイトンの迷宮へと来ていた。
理由はフェリックがカレンたちの戦いを見てみたいというだけだった。魔王討伐に成功する瞬間を見ているだけとはいえ、そんな強いパーティーにいたカレンたちは相当強いだろう。
「そうだな。トアイトンの迷宮は一度だけ来たことがある。久しぶりだな」
「そうだねー! すっごい久しぶり!」
「ですです! 最初の頃に来ましたね!」
「久しぶりなのだー!」
カレンたちのパーティーは一度来たことがあるようで、みな懐かしさに浸っている様子だった。ちなみに、シャロリンはカレンの言う通り、元の溌剌とした少女に戻っていた。その事には苦笑しか出ないフェリックである。
「さて、早速入ろうか」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
カレンたちが入口から中へ入ろうとしたとき、フェリックがそんなことを言い出す。
「どうしたフェリック殿」
「ほ、本当に大丈夫なのか? めちゃめちゃ強い敵が出てきたりしないか?」
フェリックは内心とてもビビっていた。このトアイトンの迷宮には地下にSランク程の魔獣が眠っていると聞いたことがある。
しかし、カレンは首を横に振った。
「大丈夫だフェリック殿。私たちの実力をなめてもらっては困るぞ。まぁ最下層の方へ行けば話は別だが、上層の方にはいないはずだ」
カレンにそう言われ、内心まだ少しビビりながらもフェリックは頷いた。
「そ、そうだよな。Sランクの魔獣なんて上層にはいないよな」
「ですです! そんな強い敵出てきませんよ!」
「分かった。止めてわるかったな。行こうか」
そしてなぜかフェリックを先頭にフェリックのパーティーはトアイトンの迷宮に入っていったのだった。
△▼△
「はっ! 余裕だな」
迷宮に入ってから数分。早速上層に出てきた敵、"リザードマン"をカレンは次々となぎ倒していった。リザードマンは二足歩行するトカゲの一種だ。トカゲの頭部と尻尾、全身に硬い鱗で覆われた皮膚を持つ。
カレンが使っている武器は弓、単に弓の攻撃ではリザードマンには歯が立たないだろうが、そこにカレンの魔法が加われば話は別だ。
「す、すげぇな⋯⋯。リザードマンを圧倒してる⋯⋯」
「ですです! カレンさんはこのパーティーの中でもリーダーだけあってかなり強いんです!」
「だよな、あんなに簡単に倒しているのは初めて見た」
フェリックがこうしてローレインと話していてる間もカレンはリザードマンを次々と倒していた。
リザードマンは縄張り意識が強く、仲間を呼び、侵入者をそう簡単には通させてくれない。しかし、カレンが倒してくれているので、ここでは大丈夫だろう。
それから全員でリザードマンの身体から使えそうな素材を剥ぎ取る。
「さて、ほとんど倒してしまったな。中層まで敵は出ないだろう。先へ行こう」
『おう!』
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