上 下
4 / 8

追い出された理由

しおりを挟む
その後、フェリックと女性4人組たちは酒場へたどり着いた。中は大勢の人で賑わっていて、少し大きめの声で話さないと、聞こえないほどだった。
  フェリックたちが席へつくと、胸元が大きく空いた制服を着た女性が水を運んでくる。そして、白髪の女性は酒を頼む。フェリックたちはサラダを頼んだ。酒場は何度か来たことはあるのだが、まだ慣れていないフェリックだった。視線を胸元から外しながら、小さく会釈する。
  白髪の女性は水をひと口含んで飲み下してから、口を開いた。

「さて、なぜ追い出されたのか⋯⋯と、聞きたいところだが、まずその前に自己紹介をしようではないか。まずはお前から頼むぞ」

「は、はい」

  フェリックは促されるまま、自己紹介をする。

「俺は、フェリックです。元勇者パーティーにいたけど、昨日追い出されてしまった者でもあります⋯⋯」

  フェリックが自己紹介をすると、白髪の女性は大仰に笑ってみせた。

「何もそこを強調しなくてもよいではないか。まぁいい。――私は、このパーティーのリーダーのカレンだ。よろしく頼むぞ」

「よ、よろしくお願いします!    カレンさん」

  その白髪の女性――カレンは、とても良いプロポーションが特徴な女性だった。白の装備を身に纏い、褐色肌、そして目はキリッとしていて凛々しく、口調も手伝ってか、大人びた印象を与えた。

「敬語は使わなくてよいぞ。名前もカレンでよい。次は誰だ?」

「はいはーい!    次は私だよー!」

  カレンが言うと、金髪の少女が手を上げながら立ち上がった。フェリックはいきなり大声を出されたため肩をビクつかせる。

「私はシャロリンっていうの!    どう!?    可愛いでしょ!?」

  そう言って目元にピースサインを当てながら顔を近づけてくるシャロリン。その勢いに気圧され、フェリックはこくこくと素早く頷く。 

「わぁありがとう!    気軽にシャロリンって呼んでね!」

「う、うん。よろしく、シャロリン」

「次は私なのだ!」

  そう言い出したのはシャロリンの隣に座るオレンジ髪の少女だった。

「私の名前はエリアンなのだ!    12歳なのだ!   ちなみに、カレンがエイリアン呼ばわりするけど、エイリアンではないのだ!」

  エリアンが頬をプクッと膨らませそう言うと、カレンが腿を叩きながら笑う。

「あ、あの、エイリアンって呼んでるのってもしかしてカレンなのか?」

「ああ、そうだ。可愛くて少しからかいたくなるのだよ」

「だからエイリアンじゃないのだー!」

  ぽこぽことカレンを叩く様子のエリアンに、フェリックは苦笑した。
  エリアンはオレンジ髪の少女で、背丈は低く、その満面の笑みや、口調からして、幼い印象を与えた。シャロリンと同じ、活発系女子だろう。
  そんなエリアンにフェリックは笑顔で挨拶する。

「エリアンもよろしくね」

「はいなのだー!」

「最後は私ですね!」

  そう言ったのはカレンの隣に座る、黒髪の少女だった。

「私は、ローレインと言います!    魔法は治癒魔法が得意です!    これから仲間になるフェリックさん!    よろしくお願いします!」

  そう自己紹介を終えた少女――ローレインは、お姫様のような印象を与えた。少し長めのサラサラの黒髪に、整った顔立ち。極めつけはピンク色の装備。まさにお姫様にぴったりだった。

「綺麗だな⋯⋯」

「え!?     あのあの、そんなこと急に言われると恥ずかしいです⋯⋯」

「あれ!     今俺口に出てた!?」

「もろ出ていたが⋯⋯」

  カレンが半目で言ってくる。どうやら心の声が出てしまっていたようである。今後気をつけようと思ったフェリックであった。

「ローレイン、よろしくね」

「はい!    よろしくです!」

「さて、自己紹介も終えたことだ。お互い聞きたかったことを聞くとしようか。といっても聞きたいことは両者同じだが」

「ああ、じゃあ俺から。なぜカレンたちは魔王討伐に成功したのに、パーティーを追い出されたんだ?」

「私たちは元からそういう契約なんだ」

「契約?」

「ああ、そうだ。私たちは元は奴隷でな――」

「ど、奴隷!?」

  思わず机を叩き立ち上がる。カレンからは静止の手を伸ばされた。
  奴隷。それは人でありながら雑な扱いをされる屈辱的な身分。
  しかし、フェリックはその奴隷について聞いたことがあった。ギルドの裏のシステム。それは、ギルドの裏の人間に金がなくて生活出来ないことを伝えると、裏の人間が高レベルの冒険者を捕まえ、その冒険者の奴隷にさせると。

「そんな驚かなくていいだろう。フェリック殿も知っているはずだ。このギルドの裏システムを」

  フェリックは知っていたため頷く。

「だけどなんでそんなところに⋯⋯」

「仕方のないことだ。私たちは実力はあるが金はない。そこでとりあえず奴隷身分になって耐え、金ができるまで奴隷を止めない。僥倖なことに、かなりの強さを誇るパーティーでな。魔王すら倒せてしまった。――まぁ当たり前のように再臨したがな」

「そ、そんな⋯⋯」

  フェリックには考えられなかった。
  こんな美少女なのに、奴隷という身分につくなど。金を稼ぐ方法はもっと他にあるだろうと。
  そんなことを考えていると、ローレインから声がかかる。

「あのあの、フェリックさんがそんな暗い顔しなくても大丈夫ですよ!     奴隷といっても、元いたパーティーは優しい方ばかりだったので!」

「そ、そうか。それならよかった」

  安堵の息を吐くフェリック。このローレインの言うことだ。きっと本当に優しい人ばかりに違いない。

「それで次は私たちから聞こうか。なぜフェリック殿はパーティーを追い出されたのだ?」

「ああ。俺は単に役立たずだったからだ」

「⋯⋯それだけか?」

「⋯⋯それだけだ」

『⋯⋯』

  その場に沈黙が訪れる。カレンもまさかそんな単純な理由で追い出されたとは思っていなかったのだろう。何か悪いことを聞いてしまったというような顔をしている。フェリックからしたら別にそんな深刻に捉えなくてもいいという気持ちだが、それはきっとお互い様だろう。

「ま、まぁそんなこともあるものだ。さぁ!    今夜は飲もう!    新たなパーティーメンバーの歓迎会だ!」

  高い位置にある窓から指す光はもう薄暗くなっていた。

「そ、そうだな!     飲もう!⋯⋯って!    俺金無いんだったー!」

「大丈夫なのだ!     お金ならいっぱいあるのだ!」

  すかさずエリアンがフォローを入れる。ナイスフォローだ。

「そ、そうだな!    また今度返せばいっか!    さぁ飲むぞー!    すみませーん!     骨付き肉も追加でー!」

  フェリックがそう追加の注文をしたときだった。シャロリンが何やら手を挙げて立ち上がる。

「シャロリン、どうした?」

「⋯⋯ちょっと御手洗行ってくるねー、あはははは」

  フェリックが言うと、シャロリンは苦笑いを浮かべそのまま御手洗の方向へと向かっていった。そんなシャロリンの顔色はかなり悪かった。

「カレン、なんかシャロリン顔色悪かったけど、大丈夫なのか?」

「大丈夫、いつものことだ」

「いつものこと?」

「ああ、それより飲もうぞ。さぁ乾杯」

「あ、ああ、乾杯」

  フェリックは気になったが、それ以上聞くことはなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~

一条おかゆ
ファンタジー
貴族の青年、イオは冒険者パーティーの中衛。 彼はレベルの低さゆえにパーティーを追放され、さらに婚約者を寝取られ、家からも追放されてしまう。 全てを失って悲しみに打ちひしがれるイオだったが、騎士学校時代の同級生、ベガに拾われる。 「──イオを勧誘しにきたんだ」 ベガと二人で新たなパーティーを組んだイオ。 ダンジョンへと向かい、そこで自身の本当の才能──『対人能力』に気が付いた。 そして心機一転。 「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる」 今までの全てを見返すことを目標に、彼は成り上がることを決意する。 これは、そんな英雄譚。

戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。

隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。 婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。 しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました

夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」  命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。  本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。  元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。  その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。  しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。 といった序盤ストーリーとなっております。 追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。 5月30日までは毎日2回更新を予定しています。 それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。

Sランクパーティから追放された俺、勇者の力に目覚めて最強になる。

石八
ファンタジー
 主人公のレンは、冒険者ギルドの中で最高ランクであるSランクパーティのメンバーであった。しかしある日突然、パーティリーダーであるギリュウという男に「いきなりで悪いが、レンにはこのパーティから抜けてもらう」と告げられ、パーティを脱退させられてしまう。怒りを覚えたレンはそのギルドを脱退し、別のギルドでまた1から冒険者稼業を始める。そしてそこで最強の《勇者》というスキルが開花し、ギリュウ達を見返すため、己を鍛えるため、レンの冒険譚が始まるのであった。

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

処理中です...