光の部屋、花の下で。

五日目

50 ※

「あ……いい……気持ちいい……」
　声を漏らすと、こらえきれなくなったのかノアさんが上体を起こして俺を抱き寄せ、激しく突きはじめる。初めての座位を新鮮に思う余裕もなく、あっという間に限界がきた。彼の膝の上で四肢を痙攣させ、達する。
　支えきれなくなった俺の身体をシーツの上に組み敷いて、「続けていい？」とノアさんが聞いた。上になる許可を求められているようだった。返事の代わりに両脚を彼の腰に回す。
　床に脱ぎ捨てられたノアさんのズボンの中で、再び携帯電話のバイブが鳴りはじめた。
　低い振動音を聞きながら、考えなければ、と思う。色々なことを、一度きちんと考えて、自分の中で答えを出しておかなければ、と。
　でも、今は何も考えられない。覆いかぶさってきた熱い身体に四肢を絡め、ひとつの生き物のようになってベッドを揺らした。


　ホテルを出たのは、チェックアウト時間の一、二分前だった。ふたりとも猛烈に腹が減っていて、目に付いたコンビニで調達した弁当やおにぎりを食べながら帰った。
　山間にある地元の町は、海沿いよりも気温が低く、車を降りた瞬間に吐く息が白くなる。
　いつもの休耕地のわきで別れるとき、「遅くなったけど叱られない？」と聞かれた。
「大丈夫です。ノアさんも……さっきの電話に折り返すの忘れないでください」
「さっき？　いつ？」
「帰ってるときと、ヤってるとき」
　ああ、とつぶやいた顔は、いまいち要領を得ていない様子だった。その反応が本心からのものか、演技なのかさえわからない。
「昼間も鳴ってた」
　思わず付け加えると、相手は困ったような笑みを浮かべる。