光の部屋、花の下で。

三尾

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四日目

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 一度、松本は教室内のからくり装置を指さして、「これはどこかに出展するつもりはないのか?」と横山にたずねた。
「ないです」と、彼にしては力強い口調で、横山はことわっていた。
「これは、ここに置いておかないとダメなやつなんで」
 からくり装置の中央には、ロールプレイングゲームR.P.Gに登場する宝箱のような外見のダンボール製の箱が安置されている。中身は、携帯ゲーム機や安西のエロ本など、教師に見つかれば、まず没収されそうな品々だ。箱の中身を取るためには、決まった手順に従ってからくり装置を解除しなければならなかった。
 宝箱の中の物については、もちろん松本には明かしていないけれど、彼はからくりの解除方法よりも製作課程のほうに興味があるらしく、横山とたびたび、装置のしかけについて話している。
 そういうときの松本は、眠たげな垂れ目の奥がきらりと輝いて、やけに楽しそうに見えた。まるで、空き教室の六人目のメンバーみたいだ。
 様子を見にきたついでに、こちらの理科の質問にいくつか答えた松本は、技術部員たちに向かって「テスト明けはブロック大会だな。頑張れよ」と言い残して教室を出ていった。
 ちらりと目を向けると、響野も横山も、あまり見たことのない表情をしている。
 闘争心、と呼ぶほど猛々しくはないけれど、何かに挑戦している人間に特有の、厳しさと真剣さをあわせ持った顔つきだった。
 本当に頑張っているんだな、と考えたとき、窓の西日が視界にちらついて、言いようのない寂しさに襲われる。
 全力で挑めるものを持っている響野たちがうらやましかった。夕暮れどきの寂しさは、誰かに置いていかれる寂しさに似ていると思う。
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