119 / 377
四日目
6
しおりを挟む
真っ先に動いたのは安西だった。昼寝場所からすばやく起きあがったかと思うと、ラジカセの横に積まれていた雑誌の山から特にヤバそうなものを抜いて教壇に隠す。
つられるように、ほかに隠すべき物がないか室内を見回した。CDは数がありすぎて手遅れだろう。運動マットもだ。大きすぎる。
「先生って誰?」と和田が聞いた。
「松本」
「技術部じゃん」
「そうだよ。響野が今、足止めしてるけど……」
横山が言いかけたとき、通路の方向から話し声と足音がして教室のドアが三度、がらりと開いた。
扉の外に立っているのは白衣を着た男性教師だ。一年のときの理科を担当していたから、相手の顔と、“松本”という苗字は知っていた。彼は響野と横山が所属している技術部の顧問でもある。
松本の背後、教室の入口から少し下がった通路に響野の姿が見えた。ドアが開く直前まで聞こえていた足音や話し声は彼と松本のものだったようだ。
ドアごしに室内を覗きこんだ松本を気にしながら、響野は空き教室にいる俺たちに視線を向けてきた。黒い目が「大丈夫か?」と問うているのがわかったけれど、それに対する答えはだれも持っていない。
「……何だか、すごいな」
空き教室の中をたっぷり十秒ほど観察してから松本は口を開いた。台本を棒読みするような抑揚のない話し方のせいで、“すごいな”と言いつつもあまり驚いている感じはしない。理科の授業もこんな調子で平坦にしゃべるスタイルだったことを思い出した。声に感情が出ないタイプなんだろうか。
そんなことを考えていた矢先に、眠たげな一重の目と視線が合って、反射的に「どうも」と頭を下げる。
つられるように、ほかに隠すべき物がないか室内を見回した。CDは数がありすぎて手遅れだろう。運動マットもだ。大きすぎる。
「先生って誰?」と和田が聞いた。
「松本」
「技術部じゃん」
「そうだよ。響野が今、足止めしてるけど……」
横山が言いかけたとき、通路の方向から話し声と足音がして教室のドアが三度、がらりと開いた。
扉の外に立っているのは白衣を着た男性教師だ。一年のときの理科を担当していたから、相手の顔と、“松本”という苗字は知っていた。彼は響野と横山が所属している技術部の顧問でもある。
松本の背後、教室の入口から少し下がった通路に響野の姿が見えた。ドアが開く直前まで聞こえていた足音や話し声は彼と松本のものだったようだ。
ドアごしに室内を覗きこんだ松本を気にしながら、響野は空き教室にいる俺たちに視線を向けてきた。黒い目が「大丈夫か?」と問うているのがわかったけれど、それに対する答えはだれも持っていない。
「……何だか、すごいな」
空き教室の中をたっぷり十秒ほど観察してから松本は口を開いた。台本を棒読みするような抑揚のない話し方のせいで、“すごいな”と言いつつもあまり驚いている感じはしない。理科の授業もこんな調子で平坦にしゃべるスタイルだったことを思い出した。声に感情が出ないタイプなんだろうか。
そんなことを考えていた矢先に、眠たげな一重の目と視線が合って、反射的に「どうも」と頭を下げる。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
九年セフレ
三雲久遠
BL
在宅でウェブデザインの仕事をしているゲイの緒方は、大学のサークル仲間だった新堂と、もう九年セフレの関係を続けていた。
元々ノンケの新堂。男同士で、いつかは必ず終わりがくる。
分かっているから、別れの言葉は言わないでほしい。
また来ると、その一言を最後にしてくれたらいい。
そしてついに、新堂が結婚すると言い出す。
(ムーンライトノベルズにて完結済み。
こちらで再掲載に当たり改稿しております。
13話から途中の展開を変えています。)
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる