光の部屋、花の下で。

三尾

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三日目

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「では、今日の結果は追ってメールします」
 笑顔の相手はそう言って席を立った。四十代半ばくらいだろうか。大きな四角い顔の中央にちょこんと銀縁眼鏡をかけた男性だった。この施設の主任介護士を務めているという。
 小野寺おのでらと名乗った男性は、面談室から玄関先まで俺を送ると、自動ドアのわきで「今日はお疲れ様でした」と会釈した。
「こちらこそ、お世話になりました」
 あわてて姿勢を正し、地面と平行の位置まで頭を下げる。
 二つ目の応募先は、以前の職場と似たタイプの特別養護老人ホームだった。定員は百名ほど。全国から入居者を受け入れる広域型ホームで、長期入所とショートステイの両方のサービスを提供している。私鉄の駅からバスで十分ほど離れた高台に佇む施設の窓からは、遠くにみなとみらいの高層ビル群がうっすらと見えた。
 帰りのバスに揺られて小さな駅の改札をくぐったところで、タイミング良く鈍行列車がホームに入ってくる。
 電車が走る高架線路の下には、横浜の雑多な街並みが広がっていた。ビルも民家も一つの空間にぎゅっと押し込まれているようで、どこかせせこましい。
 この町の一角で部屋を借りて暮らす自分を想像した。たくさんの信号と、もっとたくさんの道路標識。慣れるまで運転には苦労するかもしれない。駐車場代の相場は月あたりいくらだろう?
「車通勤のスタッフには交通費の代わりにマイカー手当を支給しています」という小野寺さんの説明を思い出したところで、電車は踏切をすぎて最寄り駅に到着した。
 繁華街の入口付近には、全国展開しているビジネスホテルの看板が見える。来週まで泊まるはずだったそのホテルをキャンセルしたのは、昨日の午後、響野ひびのの家に移ることを決めたあとだった。
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