光の部屋、花の下で。

三尾

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二日目

26

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 響野は、パーのかたちに広げられた俺の手をまじまじと見たあと、あまり慣れていなさそうな手つきで、ぱしりと手のひらを合わせた。
「すごいな! ほんとに直った。ありがとう」
 俺があんまりニコニコしていたせいか、「ああ」とうなずいた響野の顔にもつられたような笑みが浮かぶ。
「ピックアップのほうで良かったな」
「ピックアップって?」
「ふたの下にあるレンズの部分。要は、セットしたCDを本体が認識できてなかったんだ。わりとよくある故障だよ」
「へえ」
 よどみない説明に感心した。
「パーツを交換したわけじゃないから、中の部品に寿命がきたらまた動かなくなると思う」
 ちょうど哺乳瓶を洗って戻った和田が、教室に流れている音楽を聞いて「あ、修理できたんだ?」とたずねる。
 イヤホンをすり抜けて音が聞こえたのか、窓際で寝ていた安西も身じろぎをした。……だけでなく、のそりと起きあがってマットの上にすわり直したので、何だろう?とそちらを見る。
「フーファイ、水元おまえの?」
「え? うん。おやじのお下がりだけど」
 響野が床の上のダンボール箱にちらりと視線をやってから、ボリュームのつまみをひねって音量を下げた。子猫たちの安眠に配慮したらしい。
「そうだ、響野、お礼させてよ。何がいい?」
 すでに工具箱を片付けはじめている相手にたずねる。
「別にいらない」
「まあ、俺もそんなにたいしたものをあげられるわけじゃないけど、一週間パシリとかなら全然やるよ」
「そんなことする必要ないだろう」
「購買のパンとか欲しいときに便利じゃない? ちょっと買ってこいとか」
 響野が眉をひそめた。気乗りしなさそうな、というよりは多分に不機嫌そうな相手の様子を見て、“パシリは嫌い”と頭の中のメモに書き加える。
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