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file.1:トイレの花夫くん②
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(おかっぱ頭をやめたいんです…!)
花夫くんは、目と鼻と耳を真っ赤にしながら私たちに向かって叫んだ。おかっぱをやめたい…?なんて可愛い願いなんだ…!
(…ぼ、僕、まだ生きていた頃にいじめられていたんだ…いじめが辛くて自殺…したんだ…)
「そうだったんだ…」
(…僕、本当は死にたくなかったんだ…もっと生きていたかった…でも自殺した。しかも原因がいじめ…悔しいんだ…いじめのせいで自殺したこと。いじめ原因はおかっぱ頭…こんなの…死んだ後も悔しくて…)
泣きながら、花夫くんは話してくれた。本当に辛かったんだなぁと私まで辛くなってくる。
『じゃあ髪、切ればよかったじゃないか』
タツは呆れたように言った。
…確かにそう考えるとそう思う。
(…切れなかったんだ…お金がなくて…お金がないからお母さんお父さんはいつも働きに出てた。朝も夜も。自分でしか切ることができなかったんだ…自分で切ったら…おかっぱに…)
『…それなら仕方ないよな…ごめんな。嫌なこと思い出させて』
(…いいんだよ…今は僕が死んだおかげで家にお金が入って、今は幸せそうだから…)
私はもう悲しみに耐えられなくて涙を流した。こんな辛いことがあったら誰だって死にたくなる。死んだ後もずっと辛い思いをしているなんて…あまりにも可哀想すぎる…
「花夫くん…私はあなたを救いたい…成仏させてあげたい…何をすれば…」
(…)
『やることなんて一つに決まってんだろ…髪を切りに行くんだよ』
「え!?」
(…僕にも…幽霊の僕にも髪を切りに行けるんですか!?)
『あぁ。行けるぞ。少しじっとしてろよ』
すると、タツは花夫くんの首を優しくなぞり、優しく息を吹きかけた。
『よし。いいぞ。』
タツは優しく花夫くんの背中を叩いた。
「ねえ…いま何したの?」
『こいつ、トイレから離れられない地縛霊だったから、その呪いを解いたんだ。呪いを解いたって言っても五時間だけだけどな。』
「へぇ…」
『あと、霊は普通の人間には見えないだろ?それを普通の人間にも見えるようにした。これは1日経ったら効果が切れる』
あんな短時間でそんな凄いことを…改めてタツは凄いんだと思った。
『じゃあ行くか。美容室』
(本当に行けるんですか…!?)
『あぁ。金は涼未が負担するから』
「え!私が!?」
『当たり前だろ。俺らお金なんて持ってないし』
「そ、そんなぁ…」
今月のお小遣いが今日で切れてしまうことを覚悟して、私がいつも行っている少しお高めの美容室に連れて行った。
店員さんには私の親戚だと伝えた。
(ごめんなさい…でも本当感謝しています…夢にも思いませんでした。おかっぱ頭を卒業できるなんて…)花夫くんは目を潤ませながら私に言った。連れてきて良かったなと思った。
しみじみとしている私の横でタツが髪の毛をいじっていた。
「タツ、何してるの?」
小さな声で訪ねた。
『なんか花夫が髪切ってるの見たら俺もイメチェンしたくなってさ』
「えー?タツはそのままの方がかっこいいよ?」
『…それ今日初対面の幽霊に言うことか…?』
そう言うとタツは、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。
(…あの、終わりました…)
私とタツの元に、見違えるようにカッコよくなった花夫くんがもじもじしながら歩いてきた。
「わぁ…!カッコいいよ!」
『おう。似合ってる』
(ありがとうございます!本当にありがとうございます!)
涙を流しながら、笑顔で私たちにそう告げた後すぐに、花夫くんは小さな光になって何処かへ消えた。
この状況を見ていたはずの美容師は、何事もなかったかのように平然と業務をこなしている。
私は少し寂しい気持ちでお金を払い、店の外へ出た。
『無事に成仏できたみたいだな』
「うん…ねぇ、成仏したら幽霊は何処へ行くの?」
『俺にもわからん。でもここで未練だらけで漂ってるよりは全然楽なんだろうな…』
タツは切なげな表情で茜色に染まった空を見上げた。
私もそれにつられるように空を見上げた。それは、今まで見た空の中でいちばん綺麗な空だった。
花夫くんは、目と鼻と耳を真っ赤にしながら私たちに向かって叫んだ。おかっぱをやめたい…?なんて可愛い願いなんだ…!
(…ぼ、僕、まだ生きていた頃にいじめられていたんだ…いじめが辛くて自殺…したんだ…)
「そうだったんだ…」
(…僕、本当は死にたくなかったんだ…もっと生きていたかった…でも自殺した。しかも原因がいじめ…悔しいんだ…いじめのせいで自殺したこと。いじめ原因はおかっぱ頭…こんなの…死んだ後も悔しくて…)
泣きながら、花夫くんは話してくれた。本当に辛かったんだなぁと私まで辛くなってくる。
『じゃあ髪、切ればよかったじゃないか』
タツは呆れたように言った。
…確かにそう考えるとそう思う。
(…切れなかったんだ…お金がなくて…お金がないからお母さんお父さんはいつも働きに出てた。朝も夜も。自分でしか切ることができなかったんだ…自分で切ったら…おかっぱに…)
『…それなら仕方ないよな…ごめんな。嫌なこと思い出させて』
(…いいんだよ…今は僕が死んだおかげで家にお金が入って、今は幸せそうだから…)
私はもう悲しみに耐えられなくて涙を流した。こんな辛いことがあったら誰だって死にたくなる。死んだ後もずっと辛い思いをしているなんて…あまりにも可哀想すぎる…
「花夫くん…私はあなたを救いたい…成仏させてあげたい…何をすれば…」
(…)
『やることなんて一つに決まってんだろ…髪を切りに行くんだよ』
「え!?」
(…僕にも…幽霊の僕にも髪を切りに行けるんですか!?)
『あぁ。行けるぞ。少しじっとしてろよ』
すると、タツは花夫くんの首を優しくなぞり、優しく息を吹きかけた。
『よし。いいぞ。』
タツは優しく花夫くんの背中を叩いた。
「ねえ…いま何したの?」
『こいつ、トイレから離れられない地縛霊だったから、その呪いを解いたんだ。呪いを解いたって言っても五時間だけだけどな。』
「へぇ…」
『あと、霊は普通の人間には見えないだろ?それを普通の人間にも見えるようにした。これは1日経ったら効果が切れる』
あんな短時間でそんな凄いことを…改めてタツは凄いんだと思った。
『じゃあ行くか。美容室』
(本当に行けるんですか…!?)
『あぁ。金は涼未が負担するから』
「え!私が!?」
『当たり前だろ。俺らお金なんて持ってないし』
「そ、そんなぁ…」
今月のお小遣いが今日で切れてしまうことを覚悟して、私がいつも行っている少しお高めの美容室に連れて行った。
店員さんには私の親戚だと伝えた。
(ごめんなさい…でも本当感謝しています…夢にも思いませんでした。おかっぱ頭を卒業できるなんて…)花夫くんは目を潤ませながら私に言った。連れてきて良かったなと思った。
しみじみとしている私の横でタツが髪の毛をいじっていた。
「タツ、何してるの?」
小さな声で訪ねた。
『なんか花夫が髪切ってるの見たら俺もイメチェンしたくなってさ』
「えー?タツはそのままの方がかっこいいよ?」
『…それ今日初対面の幽霊に言うことか…?』
そう言うとタツは、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。
(…あの、終わりました…)
私とタツの元に、見違えるようにカッコよくなった花夫くんがもじもじしながら歩いてきた。
「わぁ…!カッコいいよ!」
『おう。似合ってる』
(ありがとうございます!本当にありがとうございます!)
涙を流しながら、笑顔で私たちにそう告げた後すぐに、花夫くんは小さな光になって何処かへ消えた。
この状況を見ていたはずの美容師は、何事もなかったかのように平然と業務をこなしている。
私は少し寂しい気持ちでお金を払い、店の外へ出た。
『無事に成仏できたみたいだな』
「うん…ねぇ、成仏したら幽霊は何処へ行くの?」
『俺にもわからん。でもここで未練だらけで漂ってるよりは全然楽なんだろうな…』
タツは切なげな表情で茜色に染まった空を見上げた。
私もそれにつられるように空を見上げた。それは、今まで見た空の中でいちばん綺麗な空だった。
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