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ようこそ特進クラスへ その1
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明けない夜はない。朝は必ずやってくる。
プラスな意味で良く使われる言葉。
うん。そうだよね、どんなに苦しくても、希望はあるよってことだよね。
でも神様、朝が来たら確実に地獄な人もいるんです。
だから明けない夜があってもいいと思うんだ・・・
「麻実、そろそろ起きないと。今日から特進クラスになるんでしょう?」
容赦なく朝がやってきました。
おはようございます。寝不足絶好調なテンションでお送りしたいと思います。
「・・・お母さん、昨日わたし学校で倒れたんだよ? 今日ぐらいゆっくり休んでいいと思わない?」
「何言ってるの。圭くんの掛かり付けのお医者様に一通り診てもらって、大丈夫だったんでしょう?休む理由がないじゃない」
う"っ、と言葉に詰まる。
その通りである。昨日、夕食を御馳走になっている時、どんな風に倒れたかと話したら顔色を変えた圭に病院に連れていかれ、諸々の検査を受けさせられた。結果は異状なし。それを聞いた圭は大げさなぐらい安心してて、お前はわたしの父親か!と突っ込みたくなったほど。
「で、でもね。精神的な理由で倒れたと思うんだ?ほら、目の下に隈があるでしょう」
じっとわたしの顔を見る母。
「隈なんてないわよ?さっさと顔洗ってきなさい」
うそだー!!昨晩一睡もできてないんだよ?!貫徹なんだよ?!
「大丈夫よ。若いから一日寝ないぐらいで隈なんてできないわ」
よ、読まれている・・・!?
「小嶋さんから説明は受けているけど。父さんも母さんも、あなたの特進クラス移動は正直不安なの」
はぁ、と胸に手をあてて心配そうな母に、もしやこれはチャンスか?!と意気込む。
「そうだよね!?わたしも不安なの。普通クラスのままじゃダメかな?お母さんから小嶋さんに話してくれない?」
「お世話になっている九条さんご両親に頼まれて、あなたを青葉学園に入れたけど。ただでさえ高額な授業料が、特進クラスになんて行ったらその何倍もの額になるでしょう?九条さんは出世払いで構わないって仰って下さるけど、あなた、きちんと働いて返すのよ?」
え?!何その話、初めて聞いたんだけど?!
「まってお母さん・・・学校の授業料って、わたしのツケなの?特待生免除じゃないの?」
「言ってなかったかしら?そうよ。特待生免除は、あなたのレベルだと授業料の一部減額のみで、足りない分の授業料や入学金、教科書代などもすべて九条さんが立て替えて下さっているわ。そうじゃなきゃ、うちみたいな一般家庭が青葉学園の制服なんて買えるわけないでしょう? お金は気にしなくていいと仰って下さったんだけど、そんなご迷惑も掛けられないし。それなら無利子で出世払いでいいからって言われてね」
「聞いてないよ!!」
なんてことだ・・・ショックのあまり空いた口が塞がらない。
友達のいないわたしは、ひたすら勉強を頑張って、先生に褒めてもらうのだけが楽しみだった。
だから勉強は嫌いじゃない。頑張ればその分点数として返ってくるから。
高校進学も、本当は公立の学校を希望してた。
だけど、進学率も就職率も抜群な青葉学園からなぜかわたし指名で特待生の誘いがあり、海外留学の噂のあった圭も同じ学校に行くと言う。九条家が絡んでいると踏んだわたしは速攻でお断りした。
が、その後折り菓子を持って圭パパと圭ママが我が家に現れ、「圭が麻実ちゃんと同じ学校じゃないと行かないって聞かないの。麻実ちゃんの志望校も素敵な学校だとは思うんだけど、圭は九条家の跡取りだし、お家の事情もあって、どうしても高校は青葉学園に行って欲しいの。だから麻実ちゃんも、青葉学園に行ってくれない?」と懇願されたのだ。説得するならわたしじゃなくて圭でしょう?!って思ったが、うるうるとした瞳で圭ママにお願いされたら、過去の負い目もあるわたしは頷くしかなかった。
そんな経緯があるため、てっきり特待生枠として学費や諸々が免除されていると思っていたのに・・・!!
「お金は心配しなくていいわ」と言っていたのに、まさかの全額わたしの借金。
まるでひどい詐欺にでもあった気分だ。
感情と情報の整理が追い付かず、パジャマのままわたしはベッドに倒れ込んだ。
確かに、色々おかしいと思うことはあったよ?
特待生のはずなのに、全然先生から期待とかされてないし。かと言って、友達のいないわたしは他の特待生なんて知らないし、特待生がどんななのかもよく分かってなかった。頑張って勉強してたけど、同じぐらい出来る子は普通クラスにも一杯いるし、さすがは青葉学園、レベルが高いなって思ってたけど。
なんだろう・・・なんか涙が出てくる。
どこまで惨めなんだろう自分は。
ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴り響き、母は「はいは~い」と言って下へ降りて行った。
わたしは部屋の窓をあけて下を覗く。
「あ、麻美おはよう!特進クラスの制服持ってきたよ。ちょっと早すぎたかな?」
キラキラと朝日を浴びて輝いているような圭の顔目掛けて、麻美は二階から教科書を思いっきり投げつけた。
プラスな意味で良く使われる言葉。
うん。そうだよね、どんなに苦しくても、希望はあるよってことだよね。
でも神様、朝が来たら確実に地獄な人もいるんです。
だから明けない夜があってもいいと思うんだ・・・
「麻実、そろそろ起きないと。今日から特進クラスになるんでしょう?」
容赦なく朝がやってきました。
おはようございます。寝不足絶好調なテンションでお送りしたいと思います。
「・・・お母さん、昨日わたし学校で倒れたんだよ? 今日ぐらいゆっくり休んでいいと思わない?」
「何言ってるの。圭くんの掛かり付けのお医者様に一通り診てもらって、大丈夫だったんでしょう?休む理由がないじゃない」
う"っ、と言葉に詰まる。
その通りである。昨日、夕食を御馳走になっている時、どんな風に倒れたかと話したら顔色を変えた圭に病院に連れていかれ、諸々の検査を受けさせられた。結果は異状なし。それを聞いた圭は大げさなぐらい安心してて、お前はわたしの父親か!と突っ込みたくなったほど。
「で、でもね。精神的な理由で倒れたと思うんだ?ほら、目の下に隈があるでしょう」
じっとわたしの顔を見る母。
「隈なんてないわよ?さっさと顔洗ってきなさい」
うそだー!!昨晩一睡もできてないんだよ?!貫徹なんだよ?!
「大丈夫よ。若いから一日寝ないぐらいで隈なんてできないわ」
よ、読まれている・・・!?
「小嶋さんから説明は受けているけど。父さんも母さんも、あなたの特進クラス移動は正直不安なの」
はぁ、と胸に手をあてて心配そうな母に、もしやこれはチャンスか?!と意気込む。
「そうだよね!?わたしも不安なの。普通クラスのままじゃダメかな?お母さんから小嶋さんに話してくれない?」
「お世話になっている九条さんご両親に頼まれて、あなたを青葉学園に入れたけど。ただでさえ高額な授業料が、特進クラスになんて行ったらその何倍もの額になるでしょう?九条さんは出世払いで構わないって仰って下さるけど、あなた、きちんと働いて返すのよ?」
え?!何その話、初めて聞いたんだけど?!
「まってお母さん・・・学校の授業料って、わたしのツケなの?特待生免除じゃないの?」
「言ってなかったかしら?そうよ。特待生免除は、あなたのレベルだと授業料の一部減額のみで、足りない分の授業料や入学金、教科書代などもすべて九条さんが立て替えて下さっているわ。そうじゃなきゃ、うちみたいな一般家庭が青葉学園の制服なんて買えるわけないでしょう? お金は気にしなくていいと仰って下さったんだけど、そんなご迷惑も掛けられないし。それなら無利子で出世払いでいいからって言われてね」
「聞いてないよ!!」
なんてことだ・・・ショックのあまり空いた口が塞がらない。
友達のいないわたしは、ひたすら勉強を頑張って、先生に褒めてもらうのだけが楽しみだった。
だから勉強は嫌いじゃない。頑張ればその分点数として返ってくるから。
高校進学も、本当は公立の学校を希望してた。
だけど、進学率も就職率も抜群な青葉学園からなぜかわたし指名で特待生の誘いがあり、海外留学の噂のあった圭も同じ学校に行くと言う。九条家が絡んでいると踏んだわたしは速攻でお断りした。
が、その後折り菓子を持って圭パパと圭ママが我が家に現れ、「圭が麻実ちゃんと同じ学校じゃないと行かないって聞かないの。麻実ちゃんの志望校も素敵な学校だとは思うんだけど、圭は九条家の跡取りだし、お家の事情もあって、どうしても高校は青葉学園に行って欲しいの。だから麻実ちゃんも、青葉学園に行ってくれない?」と懇願されたのだ。説得するならわたしじゃなくて圭でしょう?!って思ったが、うるうるとした瞳で圭ママにお願いされたら、過去の負い目もあるわたしは頷くしかなかった。
そんな経緯があるため、てっきり特待生枠として学費や諸々が免除されていると思っていたのに・・・!!
「お金は心配しなくていいわ」と言っていたのに、まさかの全額わたしの借金。
まるでひどい詐欺にでもあった気分だ。
感情と情報の整理が追い付かず、パジャマのままわたしはベッドに倒れ込んだ。
確かに、色々おかしいと思うことはあったよ?
特待生のはずなのに、全然先生から期待とかされてないし。かと言って、友達のいないわたしは他の特待生なんて知らないし、特待生がどんななのかもよく分かってなかった。頑張って勉強してたけど、同じぐらい出来る子は普通クラスにも一杯いるし、さすがは青葉学園、レベルが高いなって思ってたけど。
なんだろう・・・なんか涙が出てくる。
どこまで惨めなんだろう自分は。
ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴り響き、母は「はいは~い」と言って下へ降りて行った。
わたしは部屋の窓をあけて下を覗く。
「あ、麻美おはよう!特進クラスの制服持ってきたよ。ちょっと早すぎたかな?」
キラキラと朝日を浴びて輝いているような圭の顔目掛けて、麻美は二階から教科書を思いっきり投げつけた。
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