168 / 170
第六章 王都
第166話
しおりを挟む
『要は、この先の対処を間違え続けたら、さすがの候爵でも領民の支持を失うってことさ。
もちろん支持の有無にかかわらず領主なんだけど』
やっぱり問題はそこだろうなぁ。
民主的に選ばれた指導者ではないんだから、王命でもなければ簡単には代われないはず。
場合によっては…
『そうだねぇ。悪い方向に考えたなら、不信感から生まれたちょっとした悪い噂が為政者の耳に届いて、言論弾圧と粛正だなんて充分にあり得る話だよ。
もちろん、これまでの侯爵からは考え難いとは思うけどねぇ』
「ちょ、っと!あん、た達!少しは、か、まいな、さっいよ、ねっ!」
…いや、構うもなんも楽しそうじゃん
などというやり取りもしつつ馬車は街道を進み、気付けば徐々に日は傾き夜の気配が近付き始めています。
「旦那ぁ!少し先にちょっとした林がありますぜ。そこでどうでしょうか?」
「そう?任せるよ。良さそうな所に向かって」
「了解しやした!ちょっと大きく揺れますんで、ご注意くだせぇ」
グラルの操作で街道から草原へ進入した馬車は、しばらく走った後、静かに停車しました。
「ほぅ、泉があるのじゃ。水も澄んでおる」
「綺麗な泉ね!ねぇシア、アンタなら調べられるわよね?なんか居るかとか」
「もちろんじゃよ。まぁ探らずとも…」
シアが泉に近づいて水面に手をかざすのとほぼ同時に、泉の中心に近いあたりから淡い水色の光に包まれた小さなナニかがシアに向けて飛んできて、目の前で止まりました。
「ルーテシア様!初めてお目にかかります!このような辺鄙な場所まで、ようこそおいで下さいました!」
「まぁ、ぬしに会いに来たわけではないんじゃがな…」
淡い水色の光が徐々に収まり始めると、ソレの姿形が次第にハッキリと見えてきます。
サイズ的には20センチくらい。表面はつるっとしていて、シルエットはナマズに短い手足を付けて、アゴの後ろにヒラヒラしたヒレの様なものを付けた感じ。
「って、ウーパールーパーじゃん…」
おっと、ウッカリ声に出してしまいました。
僕の声が聞こえたらしいソレは、シアの肩越しに覗く僕をキッと見つめてきました。
あ、目があった。円らな瞳です。
「なんだ貴様は!?吾は水の精霊竜であるぞ!頭が高いわっ!
それに、なんだその目はっ!?貴様の言うウーパールーパーが何かは知らぬが、吾にはわかるぞ!貴様、吾をバカにしておるだろう?
ルーテシア様の前とは言え、許すまじ!」
「いや、バカにしてないけど…」
コレ竜なんだ?そっちに驚くわ。
「いーや、貴様の目が語っておるわっ!許さぬ!
ルーテシア様!此奴、恐らくルーテシア様の従者でございましょうが、ここは何卒わたくしめが此奴を懲らしめる許可を頂きたく!」
「ほう?許可とな?どうじゃろうなぁ…」
おい待てシアさんや?なぜゆえこっちをチラ見する?
『ユーマ様、ちと申し訳ないのじゃが、後程反省させるゆえ此奴が消えぬ程度に痛めつけてやっては貰えんかのぅ?』
『え?うーん、まぁいいけど…』
『ありがたいのじゃ!ちと茶番にお付き合いたも』
シアが何か企んでるようです。仕方ないなぁ…
「わかった。おぬしの力を我に見せてみるがよい。じゃが仮にも我に縁のあるものじゃ。全力であたるとよいぞ」
「ははっ!ありがたきお言葉!
おい貴様!残念だったな!お優しいルーテシア様もご立腹でいらっしゃるようだ。
己の驕りを反省せよ!くらえっ!」
そう叫んだウーパー君(仮)は、再び身体を淡く光らせながら舞い上がり、水の魔力で作り上げた30センチくらいの水球を飛ばして来ました。
えー…これ受けるの?濡れるやつじゃん。仕方ない、すぐ乾かせばいいか。
顔にまともに直撃させるのは流石に嫌だったので、軽くジャンプして胸で受け止めます。
そしてはじける水球。
予想通り、衝撃は丁度サッカーボールをトラップしたくらいだけど、服はびしょ濡れに…
覚えとけよシアめ…
「あふっ!何やらゾクゾクしよるぅ…」
…ぐぬっ
一方、水球を命中させたウーパー君(仮)は、自らの魔法が直撃した事で喜び中です。
「ふははははっ!躱し切れなかったようだなっ!
無様に吹き飛んで…ない?だ、と…?
くっ!ならば再び喰らうがよい!」
驚きはしたものの、すかさず先程より一回り大きい水球を作り上げ打ち込んで来るあたり、なかなかたいしたもんです。
とは言え、これ以上濡れるのは嬉しくないので、水球そのものを消してやろうと思います。
ついでに濡れた服も乾かそうという事で、選択肢は温風一択でしょう。
「誰が喰らうか!これでどうだ!吹けよ乾いた風!」
イメージは、ドライヤーじゃなくて、現場で大活躍のジェットヒーターです。あ、ヒーター付きの大型扇風機みたいなやつね。
…こうかはばつぐんだ。
ウーパー君(仮)の放った水球は、強烈な風圧と熱にみるみる掻き消されていきます。
それを目の当たりにしたウーパー君(仮)は、余りの出来事にその場に立ち尽くし(?)ていました。
そして吹き続ける熱い風。
「…はっ!熱っ!ふぁっ!?だめー!乾く!乾いちゃうー!アーッ!」
…あ、やり過ぎた?
えーと、表面乾き易かったみたいです。
見た目両生類だけに…
もちろん支持の有無にかかわらず領主なんだけど』
やっぱり問題はそこだろうなぁ。
民主的に選ばれた指導者ではないんだから、王命でもなければ簡単には代われないはず。
場合によっては…
『そうだねぇ。悪い方向に考えたなら、不信感から生まれたちょっとした悪い噂が為政者の耳に届いて、言論弾圧と粛正だなんて充分にあり得る話だよ。
もちろん、これまでの侯爵からは考え難いとは思うけどねぇ』
「ちょ、っと!あん、た達!少しは、か、まいな、さっいよ、ねっ!」
…いや、構うもなんも楽しそうじゃん
などというやり取りもしつつ馬車は街道を進み、気付けば徐々に日は傾き夜の気配が近付き始めています。
「旦那ぁ!少し先にちょっとした林がありますぜ。そこでどうでしょうか?」
「そう?任せるよ。良さそうな所に向かって」
「了解しやした!ちょっと大きく揺れますんで、ご注意くだせぇ」
グラルの操作で街道から草原へ進入した馬車は、しばらく走った後、静かに停車しました。
「ほぅ、泉があるのじゃ。水も澄んでおる」
「綺麗な泉ね!ねぇシア、アンタなら調べられるわよね?なんか居るかとか」
「もちろんじゃよ。まぁ探らずとも…」
シアが泉に近づいて水面に手をかざすのとほぼ同時に、泉の中心に近いあたりから淡い水色の光に包まれた小さなナニかがシアに向けて飛んできて、目の前で止まりました。
「ルーテシア様!初めてお目にかかります!このような辺鄙な場所まで、ようこそおいで下さいました!」
「まぁ、ぬしに会いに来たわけではないんじゃがな…」
淡い水色の光が徐々に収まり始めると、ソレの姿形が次第にハッキリと見えてきます。
サイズ的には20センチくらい。表面はつるっとしていて、シルエットはナマズに短い手足を付けて、アゴの後ろにヒラヒラしたヒレの様なものを付けた感じ。
「って、ウーパールーパーじゃん…」
おっと、ウッカリ声に出してしまいました。
僕の声が聞こえたらしいソレは、シアの肩越しに覗く僕をキッと見つめてきました。
あ、目があった。円らな瞳です。
「なんだ貴様は!?吾は水の精霊竜であるぞ!頭が高いわっ!
それに、なんだその目はっ!?貴様の言うウーパールーパーが何かは知らぬが、吾にはわかるぞ!貴様、吾をバカにしておるだろう?
ルーテシア様の前とは言え、許すまじ!」
「いや、バカにしてないけど…」
コレ竜なんだ?そっちに驚くわ。
「いーや、貴様の目が語っておるわっ!許さぬ!
ルーテシア様!此奴、恐らくルーテシア様の従者でございましょうが、ここは何卒わたくしめが此奴を懲らしめる許可を頂きたく!」
「ほう?許可とな?どうじゃろうなぁ…」
おい待てシアさんや?なぜゆえこっちをチラ見する?
『ユーマ様、ちと申し訳ないのじゃが、後程反省させるゆえ此奴が消えぬ程度に痛めつけてやっては貰えんかのぅ?』
『え?うーん、まぁいいけど…』
『ありがたいのじゃ!ちと茶番にお付き合いたも』
シアが何か企んでるようです。仕方ないなぁ…
「わかった。おぬしの力を我に見せてみるがよい。じゃが仮にも我に縁のあるものじゃ。全力であたるとよいぞ」
「ははっ!ありがたきお言葉!
おい貴様!残念だったな!お優しいルーテシア様もご立腹でいらっしゃるようだ。
己の驕りを反省せよ!くらえっ!」
そう叫んだウーパー君(仮)は、再び身体を淡く光らせながら舞い上がり、水の魔力で作り上げた30センチくらいの水球を飛ばして来ました。
えー…これ受けるの?濡れるやつじゃん。仕方ない、すぐ乾かせばいいか。
顔にまともに直撃させるのは流石に嫌だったので、軽くジャンプして胸で受け止めます。
そしてはじける水球。
予想通り、衝撃は丁度サッカーボールをトラップしたくらいだけど、服はびしょ濡れに…
覚えとけよシアめ…
「あふっ!何やらゾクゾクしよるぅ…」
…ぐぬっ
一方、水球を命中させたウーパー君(仮)は、自らの魔法が直撃した事で喜び中です。
「ふははははっ!躱し切れなかったようだなっ!
無様に吹き飛んで…ない?だ、と…?
くっ!ならば再び喰らうがよい!」
驚きはしたものの、すかさず先程より一回り大きい水球を作り上げ打ち込んで来るあたり、なかなかたいしたもんです。
とは言え、これ以上濡れるのは嬉しくないので、水球そのものを消してやろうと思います。
ついでに濡れた服も乾かそうという事で、選択肢は温風一択でしょう。
「誰が喰らうか!これでどうだ!吹けよ乾いた風!」
イメージは、ドライヤーじゃなくて、現場で大活躍のジェットヒーターです。あ、ヒーター付きの大型扇風機みたいなやつね。
…こうかはばつぐんだ。
ウーパー君(仮)の放った水球は、強烈な風圧と熱にみるみる掻き消されていきます。
それを目の当たりにしたウーパー君(仮)は、余りの出来事にその場に立ち尽くし(?)ていました。
そして吹き続ける熱い風。
「…はっ!熱っ!ふぁっ!?だめー!乾く!乾いちゃうー!アーッ!」
…あ、やり過ぎた?
えーと、表面乾き易かったみたいです。
見た目両生類だけに…
0
お気に入りに追加
533
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる