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第六章 王都
第160話
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「やっと行ったわね…」
「行きましたねぇ…」
「うむ、開放されたのじゃ…」
えー…感慨深そうに騎士団を見送っておりますが、彼女達の脳裏にはアレしかありません。あしからず。
「今夜はふやけるまでつかるわっ!」
「悔しいけどアタシもネル様に賛成です。こんなにお風呂に依存する事になるなんて思わなかったねぇ…」
「マイラはまだまだじゃの。我なんて、初めて入った時から虜じゃったしなっ」
シア…なぜそこに張り合う?
「ともかくよっ!今夜は何があっても野営にするわよっ!いいわね?ユーマ!」
ズビシッ!って音が聞こえて来そうな勢いで指差すなし。
「わかってるよ。ネル達だけじゃなくって、風羽花も銀達も巴だって好きなんだからさ。お風呂。
とりあえず、人目に付きにくそうな場所探そうよ」
「旦那、ちょっと言いにくいんですがね、しばらくは見通しの良い草原みたいですぜ?」
「それがどうした!甘いわグラル!例え草原の真ん中だって私はお風呂に入る!」
…なんて清々しい宣言かよ。
まぁ、それならお風呂諦めるとか言う性格じゃないのは知ってるけどさ。
「わかったよ。じゃあさ、もう街道離れちゃおうか?どうせもう少ししたら昼食のタイミングだったしさ。
今日は移動やめにして、そのまま野営にしよう」
「それいいわねっ!そうしましょ!昼食ちょっと遅れるくらい、みんなも構わないでしょ?」
ネルの意見に反対する仲間は誰もいなかったので、馬車を草原に向けて進める事になりました。
「くぁぁぁ…いいわぁ…」
「日の高い内に入る風呂はたまらんのじゃ…」
「なんだろうねぇ…この背徳感がまたなんとも」
街道を離れ、小一時間ほど草原を進んだところで、ぽつんと立つ枝振りの良い木を見つけた僕達は、そこを野営ポイントにする事にしました。
木の影が程良くかかるあたりに小屋を設置し、あり合わせの食材で簡単に昼食を済ませると、早速、魔導給湯器をフル稼働。
昼過ぎの明るい陽の光を浴びながらの入浴タイムです。
なんとなく、二泊三日の温泉旅行の二日目って感じだね。
ゆったりと湯に浸かりながら、青空に流れる雲を眺めるのは、ある意味露天風呂の醍醐味なのかも。
時折、正体不明の鳥の鳴き声がしたり上空を飛び去るナニかの影さえなければ、ここが異世界だと忘れてしまいそうです。
ふと、水面の揺らぎを感じると、すぐ近くから話しかける声がしました。
「ユーマ君、どうしたんだい?」
「いやぁ、こういうのっていいなぁって。マイラさんはどうなんですか?」
「うん。正直言って、昔のアタシだったら絶対あり得ないような気分だよ。最高に素敵さ」
マイラさんは、さりげなく僕の肩に頭をもたれかけながら、感慨深げにそう言ってくれました。
「マイラよ、さりげなく何をしておるのじゃ」
「そうよっ!油断も隙もありゃしないわねっ!」
「ウチも混ぜて欲しいなっ!」
風情が…
まぁ賑やかなのも楽しいけどね!
「そろそろ僕は先に上がるね。湯当たりしそうだしさ。それにせっかく時間あるから、やっときたい事もあるし。
この辺りなら給湯器動かし続けても問題なさそうだから、このまま掛け流しにしとくね。みんなも好きなだけのんびりしててよ」
みんなにそう声をかけ、1人風呂から上がりました。
1人小屋の中に入ってみると、改めて思う事があります。
やっぱ狭いよなぁ…
最初はネルと2人で始めた旅も、今や7人。巴の人化バージョンも加えたら8人の大所帯です。
ほとんど使わなくなったダイニングテーブルも、今は収納の肥やしになり、小屋全部が寝床と化してるんだよね。
よし!増築するぞ!
別にみんなに個室を作る必要はないけど、せめてもう一つ二つ部屋を増やしてもいいんじゃないかな?
幸いな事に、あちこちの森で小屋を設置する為に伐採した木材は大量に収納してあるので、思い切って製材してしまいましょう。
久しぶりにやりましたが、身体も覚えてたのか、製材した木材達は今や新しい部屋の材料となっています。
今回の増築で、小屋のサイズは大体倍になりました。
以前から使ってた所を、リビング兼雑魚寝部屋に。新たに作った2部屋を、それぞれ寝室として使えるようにしたんです。
木材にはまだまだ余裕があったので、ついでにベッドも2台自作する事に。ここはもう思い切ってキングサイズ一択だね。
そうなると強度の維持が大変です。まぁ僕には職人さんみたいな技術はないけど、替わりに付与という手段があります。組んだ本体の枠には強化をかけ頑丈に。布団が乗る床板にもちょっと一工夫します。
次に、布団のサイズを合わせる為に思い付いたのは、毛皮の利用です。
収納の中には、毎日の様に銀達が狩ってきてくれる、角ウサギの皮が大量にストックされています。それを並べて拡げると、あのベッド5~6台分くらいありました。
一応生き物の皮だし、出来んじゃね?位の気持ちで、傷を塞ぐ様なイメージで毛皮に魔力を通すと、見事に皮同士が繋がってくれました。やだ、魔力術超便利。
一応洗って乾燥した方が気持ちよく使えそうだったので、大きな水球に汚れ除去のイメージを足した物を魔力で作ります。
毛皮を全部まとめて水球に投げ入れ、撹拌するイメージで水球を操ると、水に血とか油汚れみたいなものが流れ出ました。
もう一つ同じ様な水球を作って、毛皮を移し、再度撹拌。2回ほど繰り返すとすっかり綺麗になったようです。
収納から解体用の台を取り出し毛皮を広げたら、今度は水分を毛皮から集めて乾かします。うん、完璧。手触りもモフモフで最高です。
まとめて収納して部屋にベッドを設置すれば完了です。
これでゆっくり寝る事ができるね!
「行きましたねぇ…」
「うむ、開放されたのじゃ…」
えー…感慨深そうに騎士団を見送っておりますが、彼女達の脳裏にはアレしかありません。あしからず。
「今夜はふやけるまでつかるわっ!」
「悔しいけどアタシもネル様に賛成です。こんなにお風呂に依存する事になるなんて思わなかったねぇ…」
「マイラはまだまだじゃの。我なんて、初めて入った時から虜じゃったしなっ」
シア…なぜそこに張り合う?
「ともかくよっ!今夜は何があっても野営にするわよっ!いいわね?ユーマ!」
ズビシッ!って音が聞こえて来そうな勢いで指差すなし。
「わかってるよ。ネル達だけじゃなくって、風羽花も銀達も巴だって好きなんだからさ。お風呂。
とりあえず、人目に付きにくそうな場所探そうよ」
「旦那、ちょっと言いにくいんですがね、しばらくは見通しの良い草原みたいですぜ?」
「それがどうした!甘いわグラル!例え草原の真ん中だって私はお風呂に入る!」
…なんて清々しい宣言かよ。
まぁ、それならお風呂諦めるとか言う性格じゃないのは知ってるけどさ。
「わかったよ。じゃあさ、もう街道離れちゃおうか?どうせもう少ししたら昼食のタイミングだったしさ。
今日は移動やめにして、そのまま野営にしよう」
「それいいわねっ!そうしましょ!昼食ちょっと遅れるくらい、みんなも構わないでしょ?」
ネルの意見に反対する仲間は誰もいなかったので、馬車を草原に向けて進める事になりました。
「くぁぁぁ…いいわぁ…」
「日の高い内に入る風呂はたまらんのじゃ…」
「なんだろうねぇ…この背徳感がまたなんとも」
街道を離れ、小一時間ほど草原を進んだところで、ぽつんと立つ枝振りの良い木を見つけた僕達は、そこを野営ポイントにする事にしました。
木の影が程良くかかるあたりに小屋を設置し、あり合わせの食材で簡単に昼食を済ませると、早速、魔導給湯器をフル稼働。
昼過ぎの明るい陽の光を浴びながらの入浴タイムです。
なんとなく、二泊三日の温泉旅行の二日目って感じだね。
ゆったりと湯に浸かりながら、青空に流れる雲を眺めるのは、ある意味露天風呂の醍醐味なのかも。
時折、正体不明の鳥の鳴き声がしたり上空を飛び去るナニかの影さえなければ、ここが異世界だと忘れてしまいそうです。
ふと、水面の揺らぎを感じると、すぐ近くから話しかける声がしました。
「ユーマ君、どうしたんだい?」
「いやぁ、こういうのっていいなぁって。マイラさんはどうなんですか?」
「うん。正直言って、昔のアタシだったら絶対あり得ないような気分だよ。最高に素敵さ」
マイラさんは、さりげなく僕の肩に頭をもたれかけながら、感慨深げにそう言ってくれました。
「マイラよ、さりげなく何をしておるのじゃ」
「そうよっ!油断も隙もありゃしないわねっ!」
「ウチも混ぜて欲しいなっ!」
風情が…
まぁ賑やかなのも楽しいけどね!
「そろそろ僕は先に上がるね。湯当たりしそうだしさ。それにせっかく時間あるから、やっときたい事もあるし。
この辺りなら給湯器動かし続けても問題なさそうだから、このまま掛け流しにしとくね。みんなも好きなだけのんびりしててよ」
みんなにそう声をかけ、1人風呂から上がりました。
1人小屋の中に入ってみると、改めて思う事があります。
やっぱ狭いよなぁ…
最初はネルと2人で始めた旅も、今や7人。巴の人化バージョンも加えたら8人の大所帯です。
ほとんど使わなくなったダイニングテーブルも、今は収納の肥やしになり、小屋全部が寝床と化してるんだよね。
よし!増築するぞ!
別にみんなに個室を作る必要はないけど、せめてもう一つ二つ部屋を増やしてもいいんじゃないかな?
幸いな事に、あちこちの森で小屋を設置する為に伐採した木材は大量に収納してあるので、思い切って製材してしまいましょう。
久しぶりにやりましたが、身体も覚えてたのか、製材した木材達は今や新しい部屋の材料となっています。
今回の増築で、小屋のサイズは大体倍になりました。
以前から使ってた所を、リビング兼雑魚寝部屋に。新たに作った2部屋を、それぞれ寝室として使えるようにしたんです。
木材にはまだまだ余裕があったので、ついでにベッドも2台自作する事に。ここはもう思い切ってキングサイズ一択だね。
そうなると強度の維持が大変です。まぁ僕には職人さんみたいな技術はないけど、替わりに付与という手段があります。組んだ本体の枠には強化をかけ頑丈に。布団が乗る床板にもちょっと一工夫します。
次に、布団のサイズを合わせる為に思い付いたのは、毛皮の利用です。
収納の中には、毎日の様に銀達が狩ってきてくれる、角ウサギの皮が大量にストックされています。それを並べて拡げると、あのベッド5~6台分くらいありました。
一応生き物の皮だし、出来んじゃね?位の気持ちで、傷を塞ぐ様なイメージで毛皮に魔力を通すと、見事に皮同士が繋がってくれました。やだ、魔力術超便利。
一応洗って乾燥した方が気持ちよく使えそうだったので、大きな水球に汚れ除去のイメージを足した物を魔力で作ります。
毛皮を全部まとめて水球に投げ入れ、撹拌するイメージで水球を操ると、水に血とか油汚れみたいなものが流れ出ました。
もう一つ同じ様な水球を作って、毛皮を移し、再度撹拌。2回ほど繰り返すとすっかり綺麗になったようです。
収納から解体用の台を取り出し毛皮を広げたら、今度は水分を毛皮から集めて乾かします。うん、完璧。手触りもモフモフで最高です。
まとめて収納して部屋にベッドを設置すれば完了です。
これでゆっくり寝る事ができるね!
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