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第六章 王都
第155話
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ケイトの目を誤魔化しつつ、魔石を近くの箱から取る様に装いながら収納から取り出します。
あたかも手遊びでもするかのように、こっそり魔力を充填すると、みんなからの魔力の線が切れないように根元を魔石に押し込みます。
仄かな抵抗感があったけど、そこは力業で押し込むと、どうにか収まってくれました。
『へぇ…なるほど。ユーマが作業する時ってこういう感じに考えるのね』
『そうですね。錬金術師などにも、なにがしか呟きながら作業する者もいますから、そういった類ではないですかねぇ』
『ネル様はいつも、この様な感じじゃったんじゃのぅ』
…ん?
『なになに?どうかした?』
『作業中ずっと、頭の中の声が筒抜けだったのよ』
ファッ!?まじか…なにそれ、怖い。
『気を抜くと、考えてる事がずっと垂れ流し状態になるって事じゃないかい?
意識して話をしようとすれば、そちらが優先されるみたいだよ。アタシ達も試してみたから』
な、なるほど…気をつけよう。
『それで、魔導具には出来そうかい?』
『そうですね、多分大丈夫だと思います。後はどの程度の素材を使うのかですね。
あ、それで思い出したんですけど、ゴブリンやオークはなんで魔石を持ってるんですか?どっちも魔法を使ってるの見た事ないし』
『なんだい?急に…まぁ簡単な話さ。それはね…』
マイラさんの解説はとてもわかりやすかったです。
要は魔法を使う能力の有る無しとイコールなんだって。ゴブリンにもオークにも「メイジ」と呼ばれる亜種がいるんだけど、肉体的にはほぼ普通のものと変わらず、若干知能が高いだけなんだってさ。
メイジを亜種って呼べるのか?って感じだけど、魔法を使えるだけで脅威度が上がるから、わかりやすくそう分類してるみたい。
『…というわけなんだがね。何か関係あるのかい?』
『えぇ、まぁ。魔導具にするなら多分、数が必要じゃないですか?それで、数を揃えるならゴブリンとかオークあたりがお手頃かなと。
そう思ってみると、なんで魔石持ってんだ?ってなったんですよね』
『今更どうしたのかと思ったよ。確かにゴブリンやオークの魔石ってのは市場にも出回ってるし、自分で集めるのも簡単だからねぇ』
確かに集めやすくはあるかも。ゴブリンくらいなら今の風羽花や銀達なら、片手間で狩って来そうだしね。
ヨーゼル村に着いたら、1日滞在日を作ってゴブリン狩りとかしてもらおうかな?
『旦那、話し中すいやせん。そろそろ暗くなる時間なんですが、どうしやすか?
出発が遅かったんで、街道の夜営ポイントまではまだかかると思いますぜ?』
『そっか…それならもう休憩にしちゃおう。街道から離れすぎないところでキャンプするってことで。
場所選びはグラルに任せるよ』
『了解でさ。多少揺れますんで気をつけてくだせぇ』
その後しばらく何事もなく進んでいると、不意に段差を越える横揺れを感じ、先程までと異なる路面に侵入した事がわかりました。
程なく揺れが収まると同時に、馬車は停車します。
「ここでいいですかい?旦那」
「街道脇だよね?大丈夫。ここで夜営にしよう。じゃあみんな準備にかかって!」
「あの、私も焚き木集めくらい手伝います!」
いや、いらんし。
「ケイトさん。慣れてるメンバーでやる方が早いですから。それに大事なお客様に、そんな事はさせられません。
食事の準備が出来ましたら、お声がけしますので、馬車でお待ち下さい」
『勝手な事されても迷惑だしねぇ…』
ほんとそれです。
そもそも街道脇に燃料になる木や枝なんてないし、遠くまで探しに行かれても困るわけで。
「…はい。わかりました」
『ずいぶん落ち込んでるわよ?いいの?』
『あんまり馴染んでも良くないし、いいんじゃないかな?』
馬車で三角座りしているケイトを放置して、一気に準備してしまいましょう。と言っても、小屋は出せないし、馬車に備え付けの天幕を張って、地面に敷物を敷いたらおしまいです。
収納もほどほどに使わないと、食事の支度出来ないのはちょっと不便かも。今後のカムフラージュ用に、煮炊きできる用具関係は用意しとこう。もったいないけど…
とりあえずカマドに使う石材と薪、調理用具を取り出し、魔導給湯器をセッティングします。
鍋を火にかけて、湯を沸かす間に、銀達に獲物を探してもらう事にしました。
流石に生肉を収納から出すわけにもいかないしなぁ…
銀達は、ほんの数分で角ウサギを数匹狩って来てくれたので、手早く処理して鍋にイン。味付けは塩胡椒だけど、なかなかいい香りの香草も足したので、美味しそうです。
ふとケイトを見ると、馬車から作業を眺めています。
…大丈夫だよね?変な事はしてないはず。
『今のところ問題ないわよ?今のところは』
うっわ!びっくりしたぁ…
いつのまにか、ネルが横に来てました。急に頭の中に話し掛けるのはやめて下さい。
『暇なんだもん。仕方ないじゃない』
「いや、まぁいいけどさ。いきなりは…」
『こらっ!声出てる!話が不自然極まりないわよ?気をつけなさいよねっ!』
やば、やっちまった。間が空くとウッカリしちゃうなぁ。
話し始めは気をつけないとね。
「ネル、すぐ出来るからもう少し待っててね」
「えぇ、わかったわ。みんなに声かけてくる」
『芝居が不自然なのよっ!全くもう…』
…そういう使い方は良くないと思います。
あたかも手遊びでもするかのように、こっそり魔力を充填すると、みんなからの魔力の線が切れないように根元を魔石に押し込みます。
仄かな抵抗感があったけど、そこは力業で押し込むと、どうにか収まってくれました。
『へぇ…なるほど。ユーマが作業する時ってこういう感じに考えるのね』
『そうですね。錬金術師などにも、なにがしか呟きながら作業する者もいますから、そういった類ではないですかねぇ』
『ネル様はいつも、この様な感じじゃったんじゃのぅ』
…ん?
『なになに?どうかした?』
『作業中ずっと、頭の中の声が筒抜けだったのよ』
ファッ!?まじか…なにそれ、怖い。
『気を抜くと、考えてる事がずっと垂れ流し状態になるって事じゃないかい?
意識して話をしようとすれば、そちらが優先されるみたいだよ。アタシ達も試してみたから』
な、なるほど…気をつけよう。
『それで、魔導具には出来そうかい?』
『そうですね、多分大丈夫だと思います。後はどの程度の素材を使うのかですね。
あ、それで思い出したんですけど、ゴブリンやオークはなんで魔石を持ってるんですか?どっちも魔法を使ってるの見た事ないし』
『なんだい?急に…まぁ簡単な話さ。それはね…』
マイラさんの解説はとてもわかりやすかったです。
要は魔法を使う能力の有る無しとイコールなんだって。ゴブリンにもオークにも「メイジ」と呼ばれる亜種がいるんだけど、肉体的にはほぼ普通のものと変わらず、若干知能が高いだけなんだってさ。
メイジを亜種って呼べるのか?って感じだけど、魔法を使えるだけで脅威度が上がるから、わかりやすくそう分類してるみたい。
『…というわけなんだがね。何か関係あるのかい?』
『えぇ、まぁ。魔導具にするなら多分、数が必要じゃないですか?それで、数を揃えるならゴブリンとかオークあたりがお手頃かなと。
そう思ってみると、なんで魔石持ってんだ?ってなったんですよね』
『今更どうしたのかと思ったよ。確かにゴブリンやオークの魔石ってのは市場にも出回ってるし、自分で集めるのも簡単だからねぇ』
確かに集めやすくはあるかも。ゴブリンくらいなら今の風羽花や銀達なら、片手間で狩って来そうだしね。
ヨーゼル村に着いたら、1日滞在日を作ってゴブリン狩りとかしてもらおうかな?
『旦那、話し中すいやせん。そろそろ暗くなる時間なんですが、どうしやすか?
出発が遅かったんで、街道の夜営ポイントまではまだかかると思いますぜ?』
『そっか…それならもう休憩にしちゃおう。街道から離れすぎないところでキャンプするってことで。
場所選びはグラルに任せるよ』
『了解でさ。多少揺れますんで気をつけてくだせぇ』
その後しばらく何事もなく進んでいると、不意に段差を越える横揺れを感じ、先程までと異なる路面に侵入した事がわかりました。
程なく揺れが収まると同時に、馬車は停車します。
「ここでいいですかい?旦那」
「街道脇だよね?大丈夫。ここで夜営にしよう。じゃあみんな準備にかかって!」
「あの、私も焚き木集めくらい手伝います!」
いや、いらんし。
「ケイトさん。慣れてるメンバーでやる方が早いですから。それに大事なお客様に、そんな事はさせられません。
食事の準備が出来ましたら、お声がけしますので、馬車でお待ち下さい」
『勝手な事されても迷惑だしねぇ…』
ほんとそれです。
そもそも街道脇に燃料になる木や枝なんてないし、遠くまで探しに行かれても困るわけで。
「…はい。わかりました」
『ずいぶん落ち込んでるわよ?いいの?』
『あんまり馴染んでも良くないし、いいんじゃないかな?』
馬車で三角座りしているケイトを放置して、一気に準備してしまいましょう。と言っても、小屋は出せないし、馬車に備え付けの天幕を張って、地面に敷物を敷いたらおしまいです。
収納もほどほどに使わないと、食事の支度出来ないのはちょっと不便かも。今後のカムフラージュ用に、煮炊きできる用具関係は用意しとこう。もったいないけど…
とりあえずカマドに使う石材と薪、調理用具を取り出し、魔導給湯器をセッティングします。
鍋を火にかけて、湯を沸かす間に、銀達に獲物を探してもらう事にしました。
流石に生肉を収納から出すわけにもいかないしなぁ…
銀達は、ほんの数分で角ウサギを数匹狩って来てくれたので、手早く処理して鍋にイン。味付けは塩胡椒だけど、なかなかいい香りの香草も足したので、美味しそうです。
ふとケイトを見ると、馬車から作業を眺めています。
…大丈夫だよね?変な事はしてないはず。
『今のところ問題ないわよ?今のところは』
うっわ!びっくりしたぁ…
いつのまにか、ネルが横に来てました。急に頭の中に話し掛けるのはやめて下さい。
『暇なんだもん。仕方ないじゃない』
「いや、まぁいいけどさ。いきなりは…」
『こらっ!声出てる!話が不自然極まりないわよ?気をつけなさいよねっ!』
やば、やっちまった。間が空くとウッカリしちゃうなぁ。
話し始めは気をつけないとね。
「ネル、すぐ出来るからもう少し待っててね」
「えぇ、わかったわ。みんなに声かけてくる」
『芝居が不自然なのよっ!全くもう…』
…そういう使い方は良くないと思います。
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