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第五章 フランカ市
第150話
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門を抜けて、 市街に足を踏み入れた僕達を迎えたのは、恐ろしいまでの静寂と、かつては美しかったであろう破壊された街並みでした。
門から延びる石畳の街道の両脇には、扉や窓が壊され外壁にも破壊の痕跡が残る、石造りの建物が立ち並んでいます。
また石畳そのものにもひび割れが目立ち、路上には何かの部品らしい木片や、様々な大きさの瓦礫が散らばっていました。
時折吹く強い風に、吹き飛ばされた何かがどこかにぶつかる音や、蝶番が軋む様な音が、この街がゴーストタウンである事を訴えかけてくる様な気がします。
街の中を進むと、あちこちで乾いてドス黒く変色した血痕を見つける事はありましたが、肝心の遺体などは一つもみあたりません。
「乾いた血の匂いはするけど、腐臭がないのがせめてもの救いだねぇ…」
「死体はおそらくオーガに喰われたんじゃな…」
「あぁ、そうだろうねぇ。ヤツらは骨ごと全部平らげる」
おぉう…タイプの違う美女が2人、なんつー生々しい話をしますかね。
まぁ、スプラッタで腐臭が漂う街とか、絶対歩きたくないし、多分エリーヌあたりは卒倒するだろうから、手間が省けたと思っておきましょう。
「この状況だと生存者の確認とか救助の必要はなさそうだけど、とりあえず念の為に一回りながら探索しようか?」
『いや、殿。市内の見回りは我等にお任せくだされ。仮に生者がおりますれば、我等の鼻にかかりましょう』
確かにそうだね。僕が動き回るよりも確実だろうし。
「助かるよ、銀。救助活動が目的じゃないから、大まかに一周してみて。確実に生きてる人がいるのが見つかったら、後で教えてくれたらいいからさ。
回り終えたら此処に集合ってことで」
『承知仕りました!者共征くぞっ!』
銀、カッコいいな…もうサムライに見えてきたし。
「じゃあ、とりあえず鉱山の地図を探そうか。
マイラさん、さっき言ってた場所、どこかわかります?」
「あぁ多分大丈夫。市長と領主代理の館は隣同士のはずだし、近くに役所もあったと思う。
鉱山頭の詰所は、恐らく鉱山入り口の側だからちょっと遠いねぇ」
「ありがとうございます。じゃあ鉱山頭の方は後回しにしますかね。そっちはみんな揃ってから行きましょう。
とりあえず役所の場所まで案内して下さい」
市内の中心部にある役所もまた、オーガ達の襲撃を受けたようで、外観はおろか内装まで破壊の手が入っていました。
きっとここに居た職員達は、必死に抵抗したんじゃないだろうか。
その証拠に、風属性の魔法でつけられた様な傷跡があちらこちらにつけられています。
多分その後は…
建物そのものは、石造りという事もあり、致命的なダメージを受けている様子はなく、木製の部分さえ修復すればまだ充分利用可能みたい。2階へあがる階段も無事だったので、上がってみることにしました。
階段が狭かったせいか、2階の各部屋は魔物の襲撃を受けずに済んだようです。
市長や領主代理の執務室に目的の物はなく、1番奥にある領主執務室を探した時にようやく坑道の地図を見つける事が出来ました。
「おっ、これは運がいいねぇ。作成日が最近じゃないか!これなら多分最新版だろうね。
だけどユーマ君、これをどうするつもりだい?持ち出す気はないんだろう?全部書き写すのかい?」
「もちろんそんな事しませんよ。こうするんです」
近くを探して見ても、良さそうな大きさの羊皮紙が見つからず、仕方なく収納していたシーツ用の布を取り出しました。
「あ!思い出した!なるほど、やるわね!そういう方法か」
「ネル様?ユーマ君がする事をご存知なんですか?」
「えぇ!あれはいいものよ。すぐにわかるわ、見てなさい」
布地を拡げると、魔力を満遍なくいきわたらせます。地図を見つめ、細部まで把握出来たところで撮影!からの現像!
布地にくっきり浮き上がった坑道の地図をみて、マイラさんが目を見開いています。
「な、なんだい?こりゃ…そっくりそのままじゃないか!本職の複製屋でも、こうは上手くできやしないよ」
「ふふーん!すごいでしょ?これは写真って言うのよ。絵でも文字でも景色でも、なんだってありのままに写し取れる魔法なの!」
…なぜネルがドヤる。
「そりゃすごいねぇ…けどユーマ君、凄いのはよくわかるが、コレは些か危険過ぎやしないかい?」
「ですね。間違いなく秘匿する必要がある魔法だと思います。
だからコレ使うの3回目なんですよ。今迄、ネルとシアしか撮ってませんし」
「ちょうどいいじゃない。マイラも撮って貰いなさいよ」
ネルの突然の問い掛けに、一瞬驚いた顔をしたマイラさんだけど、やっぱり研究者気質なんだろうね、興味を引いたら気になっちゃうみたいです。
「その…大丈夫なんでしょうか?ネル様がたは神霊的な存在ですから平気でしょうが、アタシはただのエルフですよ?
なんかこう、魂の一部を剥ぎ取って写してるんでは…?」
「バカねぇ…それだと人以外写らないじゃない。大丈夫よ!ほら、ユーマ!やっちゃって!」
「はいはい。マイラさん、ちょっと動かないで下さいね」
…ほい、完成って、マイラさんめちゃくちゃ引き攣ってるし。
「ぷっ!あはははっ!マイラってば、何を緊張してるんだか」
「なぁっ!?酷いじゃないか!ユーマ君!もっとちゃんとやってくれないかい!?やり直しを要求する!」
「酷いって言われても。ありのままの姿しか撮れませんからね?マイラさんが緊張してるからそうなるんですってば」
その後、撮り直す事数回。
ようやくマイラさんの納得いくものが撮れた時には、坑道の地図の周りには、マイラさんが一杯居ましたとさ。
門から延びる石畳の街道の両脇には、扉や窓が壊され外壁にも破壊の痕跡が残る、石造りの建物が立ち並んでいます。
また石畳そのものにもひび割れが目立ち、路上には何かの部品らしい木片や、様々な大きさの瓦礫が散らばっていました。
時折吹く強い風に、吹き飛ばされた何かがどこかにぶつかる音や、蝶番が軋む様な音が、この街がゴーストタウンである事を訴えかけてくる様な気がします。
街の中を進むと、あちこちで乾いてドス黒く変色した血痕を見つける事はありましたが、肝心の遺体などは一つもみあたりません。
「乾いた血の匂いはするけど、腐臭がないのがせめてもの救いだねぇ…」
「死体はおそらくオーガに喰われたんじゃな…」
「あぁ、そうだろうねぇ。ヤツらは骨ごと全部平らげる」
おぉう…タイプの違う美女が2人、なんつー生々しい話をしますかね。
まぁ、スプラッタで腐臭が漂う街とか、絶対歩きたくないし、多分エリーヌあたりは卒倒するだろうから、手間が省けたと思っておきましょう。
「この状況だと生存者の確認とか救助の必要はなさそうだけど、とりあえず念の為に一回りながら探索しようか?」
『いや、殿。市内の見回りは我等にお任せくだされ。仮に生者がおりますれば、我等の鼻にかかりましょう』
確かにそうだね。僕が動き回るよりも確実だろうし。
「助かるよ、銀。救助活動が目的じゃないから、大まかに一周してみて。確実に生きてる人がいるのが見つかったら、後で教えてくれたらいいからさ。
回り終えたら此処に集合ってことで」
『承知仕りました!者共征くぞっ!』
銀、カッコいいな…もうサムライに見えてきたし。
「じゃあ、とりあえず鉱山の地図を探そうか。
マイラさん、さっき言ってた場所、どこかわかります?」
「あぁ多分大丈夫。市長と領主代理の館は隣同士のはずだし、近くに役所もあったと思う。
鉱山頭の詰所は、恐らく鉱山入り口の側だからちょっと遠いねぇ」
「ありがとうございます。じゃあ鉱山頭の方は後回しにしますかね。そっちはみんな揃ってから行きましょう。
とりあえず役所の場所まで案内して下さい」
市内の中心部にある役所もまた、オーガ達の襲撃を受けたようで、外観はおろか内装まで破壊の手が入っていました。
きっとここに居た職員達は、必死に抵抗したんじゃないだろうか。
その証拠に、風属性の魔法でつけられた様な傷跡があちらこちらにつけられています。
多分その後は…
建物そのものは、石造りという事もあり、致命的なダメージを受けている様子はなく、木製の部分さえ修復すればまだ充分利用可能みたい。2階へあがる階段も無事だったので、上がってみることにしました。
階段が狭かったせいか、2階の各部屋は魔物の襲撃を受けずに済んだようです。
市長や領主代理の執務室に目的の物はなく、1番奥にある領主執務室を探した時にようやく坑道の地図を見つける事が出来ました。
「おっ、これは運がいいねぇ。作成日が最近じゃないか!これなら多分最新版だろうね。
だけどユーマ君、これをどうするつもりだい?持ち出す気はないんだろう?全部書き写すのかい?」
「もちろんそんな事しませんよ。こうするんです」
近くを探して見ても、良さそうな大きさの羊皮紙が見つからず、仕方なく収納していたシーツ用の布を取り出しました。
「あ!思い出した!なるほど、やるわね!そういう方法か」
「ネル様?ユーマ君がする事をご存知なんですか?」
「えぇ!あれはいいものよ。すぐにわかるわ、見てなさい」
布地を拡げると、魔力を満遍なくいきわたらせます。地図を見つめ、細部まで把握出来たところで撮影!からの現像!
布地にくっきり浮き上がった坑道の地図をみて、マイラさんが目を見開いています。
「な、なんだい?こりゃ…そっくりそのままじゃないか!本職の複製屋でも、こうは上手くできやしないよ」
「ふふーん!すごいでしょ?これは写真って言うのよ。絵でも文字でも景色でも、なんだってありのままに写し取れる魔法なの!」
…なぜネルがドヤる。
「そりゃすごいねぇ…けどユーマ君、凄いのはよくわかるが、コレは些か危険過ぎやしないかい?」
「ですね。間違いなく秘匿する必要がある魔法だと思います。
だからコレ使うの3回目なんですよ。今迄、ネルとシアしか撮ってませんし」
「ちょうどいいじゃない。マイラも撮って貰いなさいよ」
ネルの突然の問い掛けに、一瞬驚いた顔をしたマイラさんだけど、やっぱり研究者気質なんだろうね、興味を引いたら気になっちゃうみたいです。
「その…大丈夫なんでしょうか?ネル様がたは神霊的な存在ですから平気でしょうが、アタシはただのエルフですよ?
なんかこう、魂の一部を剥ぎ取って写してるんでは…?」
「バカねぇ…それだと人以外写らないじゃない。大丈夫よ!ほら、ユーマ!やっちゃって!」
「はいはい。マイラさん、ちょっと動かないで下さいね」
…ほい、完成って、マイラさんめちゃくちゃ引き攣ってるし。
「ぷっ!あはははっ!マイラってば、何を緊張してるんだか」
「なぁっ!?酷いじゃないか!ユーマ君!もっとちゃんとやってくれないかい!?やり直しを要求する!」
「酷いって言われても。ありのままの姿しか撮れませんからね?マイラさんが緊張してるからそうなるんですってば」
その後、撮り直す事数回。
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