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第四章 プラム村
第114話
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どうも、僕です。
この入りも久しぶりな気がします。
今僕の隣には、エリーヌが満足気な顔で寝ています。
…まぁ、お察し頂けると思いますが、こうなったのはヤツの仕業です。
はい、犯人はネルです。
愛と豊穣の女神様めェ…
宿に着いた僕達を出迎えてくれたエリーヌでしたが、あまりの涙目に一瞬グラルを疑ってしまいました。
グラルに目をやると、視線を外す事もなく、どうやら疚しい事は何も無かった様です。
「旦那…今ちょっとばかりあっしを疑いましたでしょう?
ほんっとにネルの姉御に誓ってもいい。一切なんにもしとりませんぜ」
「一瞬疑ったのは認めるけど、何もしてないって言葉は信用するよ。
グラルは、そんな事出来ないと思うし」
「それには私も同感ね。むしろエリーヌ?あんた、あれ程言ったのに、なんでそんな事になってんのか説明しなさいよ」
ネルは、むしろグラルの味方って感じだね。
エリーヌも、ネルが味方しないのは想定してたのかな?ネルに尋ねられても、潤んだ目で僕に助けを求めてるみたいだし。
「うぅ…わたくしの味方はいないのですね。でも聞いてくださいませ!
先程、守衛の方に教会まで案内して頂いて、他の村民の方々と避難してきたのです。
ただ、避難していた人の数に比べ教会は狭く、中では各々が肌を擦り合わせるような状態でしたの。
その状況を良い事に、この男と来たらわたくしの身体を抱き寄せ、あろう事かわたくしを壁に押し付けてきたのです!」
「…で?」
僕の冷たい問い掛けには気付かず、我が意を得たりと、エリーヌの口撃は加速していきます。
「その上、あまりの衝撃に声を上げようとしたわたくしの口を、その汚らしい手で塞いだのです!」
「それから?」
「は?えっ?それだけ…ですわ?」
ここにきてエリーヌは、ようやく僕の冷めた反応が、自分に向けられてる事に気が付いたみたいです。
「やっぱりね。多分、エリーヌ以外全員が理解してると思うけどさ、グラルがエリーヌを壁に押し付けたのは、エリーヌが人混みで潰されない様にしただけだし、口を塞いだのは、そんな狭い場所の人混みで悲鳴なんて上げたらパニックになって危ないし、エリーヌが言っても理解しないって判断したからだよ。
つまり、グラルはエリーヌを護衛するっていう役割を十分に果たしただけだね」
「へっ?」
僕がそう告げると、「私も同感」「アタシもだよ」「我もじゃ」『それがしもその様に』『ふうかもー』と全員から次々と同意の声があがりました。
「つまり、グラルに非はないね」
同時に頷くみんなを見て、グラルはホッと胸を撫で下ろしています。
「そ、そんな…誰もわたくしに味方して下さらないのですね…」
その場に崩れ、よよと泣き出したエリーヌに、ネルが一言。
「いつまでも、アンタの姫気分が抜けないからこういう事になるのよ。そろそろ気持ち入れ替えたら?」
「うわぁぁぁぁぁん」
「あ。泣ーかした、泣ーかした。ネールが泣ーかした」
はい、そこ。裏切られたって顔でみるんじゃありません。
みんなも、ちょっと言い過ぎじゃない?酷くなーい?って感じの顔を見合わせてたりして。
「ちょっ!あんたらー!なに私が悪いみたいな空気作ってんのよっ!うらぎりものー!」
「いや、ほら、だってねぇ…誰もそこまで言ってないし?」
「なっ!?なによー!ちくしょー!覚えときなさいよー!
このうらみはらさでおくべきかぁー!」
ネルはそう捨てゼリフを残し、部屋を飛び出していきました。
しばらくするといつもの顔で戻ってきたので、ごめん、ちょっとした冗談だから許して?と謝罪したところ、にっこり微笑んで、もういいのよーと言ってくれたのでした。
しかし、その微笑みの裏に隠された般若に気付く者はいなかったのです…
そこからネルの仕業と思われる、様々な嫌がらせが始まりました。
例えば…
・座った椅子のクッションに押しピン
・ベッド脇通路の死角に小指をぶつけそうな物を置く
・肉に塗してある香辛料の中に凄く苦い薬草を混ぜる
・スリッパの中の爪先だけ濡れてる
・湯上がりに身体を拭くタオルが湿っぽい
…などなど。
極めつけが、冒頭。
イタズラの数々に疲れ果ててベッドに入ったところ、エリーヌが待ち構えていました。もちろん何も身に付けず…
「ネル様に聞きました。据え膳食わぬは男の恥と言うそうですね?
今夜は誰も同室しないようにと、ネル様が根回ししてくださったそうですから。もう逃がしませんわっ」
「ネルめェ…」
流石にこれはやり過ぎだと思う一方、ネルをいじり過ぎた自分がうらめしい…
で、僕も男なもので…
そりゃねぇ…
割愛…
「おはよう。ユーマ。よく眠れたかしら?うふふふ…」
「さーせんしたっ!」
「あら?何の事かしらねぇ?私にはちょっと何言ってるかわからないわぁ」
起き抜けにジャンピング土下座を決めた僕の頭の上に立って、足をグリグリするネル。怖ぇぇぇ…
「もう二度と致しません!大変申し訳ありませんでした!」
「だからぁ、何の事かわからないって言ってるじゃなぁい?私に何かしたのかしらぁ?」
あ、これはまだお怒りのご様子。
その後、エリーヌが目覚めてきてネルを止めるまで、ひたすらこれを繰り返していました。
ネル、怖い…
この入りも久しぶりな気がします。
今僕の隣には、エリーヌが満足気な顔で寝ています。
…まぁ、お察し頂けると思いますが、こうなったのはヤツの仕業です。
はい、犯人はネルです。
愛と豊穣の女神様めェ…
宿に着いた僕達を出迎えてくれたエリーヌでしたが、あまりの涙目に一瞬グラルを疑ってしまいました。
グラルに目をやると、視線を外す事もなく、どうやら疚しい事は何も無かった様です。
「旦那…今ちょっとばかりあっしを疑いましたでしょう?
ほんっとにネルの姉御に誓ってもいい。一切なんにもしとりませんぜ」
「一瞬疑ったのは認めるけど、何もしてないって言葉は信用するよ。
グラルは、そんな事出来ないと思うし」
「それには私も同感ね。むしろエリーヌ?あんた、あれ程言ったのに、なんでそんな事になってんのか説明しなさいよ」
ネルは、むしろグラルの味方って感じだね。
エリーヌも、ネルが味方しないのは想定してたのかな?ネルに尋ねられても、潤んだ目で僕に助けを求めてるみたいだし。
「うぅ…わたくしの味方はいないのですね。でも聞いてくださいませ!
先程、守衛の方に教会まで案内して頂いて、他の村民の方々と避難してきたのです。
ただ、避難していた人の数に比べ教会は狭く、中では各々が肌を擦り合わせるような状態でしたの。
その状況を良い事に、この男と来たらわたくしの身体を抱き寄せ、あろう事かわたくしを壁に押し付けてきたのです!」
「…で?」
僕の冷たい問い掛けには気付かず、我が意を得たりと、エリーヌの口撃は加速していきます。
「その上、あまりの衝撃に声を上げようとしたわたくしの口を、その汚らしい手で塞いだのです!」
「それから?」
「は?えっ?それだけ…ですわ?」
ここにきてエリーヌは、ようやく僕の冷めた反応が、自分に向けられてる事に気が付いたみたいです。
「やっぱりね。多分、エリーヌ以外全員が理解してると思うけどさ、グラルがエリーヌを壁に押し付けたのは、エリーヌが人混みで潰されない様にしただけだし、口を塞いだのは、そんな狭い場所の人混みで悲鳴なんて上げたらパニックになって危ないし、エリーヌが言っても理解しないって判断したからだよ。
つまり、グラルはエリーヌを護衛するっていう役割を十分に果たしただけだね」
「へっ?」
僕がそう告げると、「私も同感」「アタシもだよ」「我もじゃ」『それがしもその様に』『ふうかもー』と全員から次々と同意の声があがりました。
「つまり、グラルに非はないね」
同時に頷くみんなを見て、グラルはホッと胸を撫で下ろしています。
「そ、そんな…誰もわたくしに味方して下さらないのですね…」
その場に崩れ、よよと泣き出したエリーヌに、ネルが一言。
「いつまでも、アンタの姫気分が抜けないからこういう事になるのよ。そろそろ気持ち入れ替えたら?」
「うわぁぁぁぁぁん」
「あ。泣ーかした、泣ーかした。ネールが泣ーかした」
はい、そこ。裏切られたって顔でみるんじゃありません。
みんなも、ちょっと言い過ぎじゃない?酷くなーい?って感じの顔を見合わせてたりして。
「ちょっ!あんたらー!なに私が悪いみたいな空気作ってんのよっ!うらぎりものー!」
「いや、ほら、だってねぇ…誰もそこまで言ってないし?」
「なっ!?なによー!ちくしょー!覚えときなさいよー!
このうらみはらさでおくべきかぁー!」
ネルはそう捨てゼリフを残し、部屋を飛び出していきました。
しばらくするといつもの顔で戻ってきたので、ごめん、ちょっとした冗談だから許して?と謝罪したところ、にっこり微笑んで、もういいのよーと言ってくれたのでした。
しかし、その微笑みの裏に隠された般若に気付く者はいなかったのです…
そこからネルの仕業と思われる、様々な嫌がらせが始まりました。
例えば…
・座った椅子のクッションに押しピン
・ベッド脇通路の死角に小指をぶつけそうな物を置く
・肉に塗してある香辛料の中に凄く苦い薬草を混ぜる
・スリッパの中の爪先だけ濡れてる
・湯上がりに身体を拭くタオルが湿っぽい
…などなど。
極めつけが、冒頭。
イタズラの数々に疲れ果ててベッドに入ったところ、エリーヌが待ち構えていました。もちろん何も身に付けず…
「ネル様に聞きました。据え膳食わぬは男の恥と言うそうですね?
今夜は誰も同室しないようにと、ネル様が根回ししてくださったそうですから。もう逃がしませんわっ」
「ネルめェ…」
流石にこれはやり過ぎだと思う一方、ネルをいじり過ぎた自分がうらめしい…
で、僕も男なもので…
そりゃねぇ…
割愛…
「おはよう。ユーマ。よく眠れたかしら?うふふふ…」
「さーせんしたっ!」
「あら?何の事かしらねぇ?私にはちょっと何言ってるかわからないわぁ」
起き抜けにジャンピング土下座を決めた僕の頭の上に立って、足をグリグリするネル。怖ぇぇぇ…
「もう二度と致しません!大変申し訳ありませんでした!」
「だからぁ、何の事かわからないって言ってるじゃなぁい?私に何かしたのかしらぁ?」
あ、これはまだお怒りのご様子。
その後、エリーヌが目覚めてきてネルを止めるまで、ひたすらこれを繰り返していました。
ネル、怖い…
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