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第四章 プラム村

第111話

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 森の中に身を隠しながら、僕達は平地に陣取るオークの群を観察していました。
 目の前に展開する群れは、その向こうで激しい戦闘が行われているにも関わらず、まるで様子を眺めているだけのように動こうとはしていません。

 「アイツが完璧に統制してるってことか…」

 群のほぼ中央に。他と違うサイズのオークがいるんだよね。
 しかもそいつは、金属を身に付けて防具にしてるし。ただ、鎧を着てるっていうよりも、ツギハギした金属を無理矢理被せたみたいになってる。多分、冒険者の鎧やら盾なんかを加工したんだろうなぁ。

 「あれが多分ボスのジェネラルです。私達もはっきりとは見てないけど、それっぽい個体は1匹だけだったもん」

 「私もそう思います。それにアイツが身に付けてるのって…」

 「うん…そうだね。多分ジョッシュ達のだ」

 どうやらジェネラルが身に付けていたのは、ライサさん達のパーティメンバーの装備品だったみたいです。持ち主は殺されたんだろうなぁ…

 ありがたい事に前方に注意を向けているせいか、僕達に気付く様子はなさそうです。
 これなら奇襲しても成功するだろうね。

 「ライサさん、ミラさん。僕はさっきと同じようにあのジェネラルを狙撃しようと思ってる。2人はそれでいい?」

 「えっ…?もしかして私達に気を遣ってくれてますか?」

 「うん。だってアイツ等って2人のパーティメンバーの仇だし、あんな事した主犯だから」

 きっと恨む気持ちもあるだろうし、それを他人任せにしたくはないんじゃないかなって思ったんだよね。

 「そりゃあ…アイツが憎い気持ちはあります。出来る事ならこの手で殺してやりたい!
 でも私じゃ敵わない…もちろん二人掛かりだって絶対に無理だから。
 だったらアイツが死ぬ処を見れたら、それで満足します」

 「私もライサと同じ気持ちです。実際今だって、アイツ等にされた事が頭に浮かんでおかしくなりそう。ほんとに役立たずでごめんなさい。
 だからユーマさんにお願いします。私達の仇を取って下さい!」

 ライサさんもミラさんも、悔しそうな表情してる。

 「わかった。じゃあ僕がやるね。2人の悔しさもまとめて撃ち込んでやるから」

 「はい!ありがとうございます!」

 とは言ったものの、正直一発で仕留めきれなかったからどうしようかなとか思ってます。
 狙いはやっぱりヘッドショットが確実だろうなぁ。
 動くなよ…

 と思った瞬間、ジェネラルのやつが動き出しちゃいました…

 どうやら、待機させてたオーク達を戦場に投入するみたい。もしかすると、門が破られたのかも。
 こりゃタイミングを失ったかもしれないぞ…
 足留めする方法を考えないと、撃ち損じちゃうかもしれないよね。できれば肉弾戦は避けたいなぁ…

 そう考えていた時、オークの群れに目掛けて凄い竜巻が向かうのが見えました。
 竜巻に巻き込まれたオークは、ボロボロになって吹き飛ばされてます。
 …これってマイラさん?

 どうやら間違いないみたいだね。だって今度は、青白く光る炎球が群れに撃ち込まれたし。
 こっちの火魔法には、温度を上げる概念がないってマイラさんが言ってた。
 だから、あれはマイラさんの魔法に違いないです。

 ありがたい事に、マイラさんによる突然の魔法攻撃で動揺したのか、ジェネラルが棒立ちになってくれました。
 ここしかない!
 即座に、生成する岩弾をいつもより硬く鋭く調整すると、ヤツの後頭部目掛けて最大速度で発射します。
 効いてくれよ!

 一瞬の間をおいて岩弾はジェネラルに命中し、その頭部を弾け飛ばします。
 呆気なく終わった感じもするけど、あんなイカツいオークと肉弾戦とか考えたくもないし。

 指揮を執るリーダーが突然倒されたせいで、オーク達は一気に混乱し始めたようです。
 中には、既に森へと逃げ出し始めてるヤツがいたので、とりあえず膝に岩弾を当て、足留めをしていきます。シアと銀にも処理に動いてもらいましょう。
 森に逃がして、もしまた繁殖されても面倒だしね。

 こちらに逃げてくるオークを仕留めていると、プラム村の方から勝鬨が上がるのが聞こえて来ました。
 うん、村の方も防衛に成功したんだろうね。

 「凄い…オークジェネラルって、討伐指定ランクAだったはずよね?まさか一撃だなんて…」

 「うん、Aだよ。前に所長が酔っ払って、現役時代の武勇伝語ってる時に言ってたもん。
 でも所長もかなり倒すのに苦労したって…」

 ライサさんとミラさんの会話が聞こえてきたので、一応軽く茶化しておきますかね。

 「当たりどころが良かったみたいですね!
 多分、後頭部以外だったらあんなに上手くは行ってないですよ。
 下手すると、手負いのジェネラルと接近戦しなきゃいけなかったから…ほんと良かった」

 「えぇ…そうですね。でもそもそもあの距離だと、普通は当てるのだって難しいのに…」

 「いやぁ、精密射撃には自信あるんですよ。見張りのオークも上手くいけたでしょ?
 ただ、ジェネラルみたいな相手は初めてでしたから、弾かれたらどうしようかなって思ってましたよ」

 2人の目が、奇妙な人を見る目になって来ちゃったよ…
 ボロが出そうだから、違う話しないと。

 「それより急いで帰った方が良くないですか?心配してる人も沢山いるでしょうし」

 「あ、そうだった!ミラ!急ごうっ」

 「ユーマさん!ありがとうございましたっ!
 ギルドに居ますから後で寄って下さい!待って!ライサ!」

 急いで駆けていく2人の背中を見ながら、どうにか間に合った事を再認識して、長いため息を吐いた僕でした。
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