111 / 170
第四章 プラム村
第109話
しおりを挟む
ちょっとえらい事になってるねぇ。
アタシがどうにか防壁を乗り越えて、主戦場にたどり着くよりも早く、村の門が破られたみたいだ。
もう残された時間は、もうあまり無いんじゃないかな。
それでもアタシは、少しでもオークの数を減らしてやろうと、戦場へ急いだよ。
オーク達をはっきり視認出来る距離に辿り着いた時には、多分本隊だろうねぇ、アタシの目から見ても、明らかに強そうなオーク達が村へと進軍し始めてた。
連中の中には、他より存在感のある巨体が1匹。アレがきっと集落の長。しかも間違いなくオークジェネラルだねぇ。
咄嗟に発動したのは、アタシが一番得意な風魔法。
なかでも、威力はとびっきりの「残酷な竜巻」を撃ち込んだよ。
以前だったら、保有魔力の大半を消費しないと使えない、戦術級の範囲攻撃魔法だったんだけど、ユーマくんとそういう関係になって色々と彼の影響を受けたせいか、アタシの魔力保有量も運用効率も格段に向上してる。
やろうと思えば、あと数回は発動出来るだろうねぇ。
「あはっ!すごいねぇ!アタシ!」
思わず顔がにやけちゃったじゃないのさ。こんな顔絶対ユーマ君には見せられないよ…
「見ぃーちゃったわー♪すーごーい顔ぉー♪」
…!?
「マイラってばー♪大魔法で蹂躙してぇー♪カ・イ・カ・ン♡って顔するのぉー♪」
ネル様ぁ…
ふーちゃんに乗って、すっごいいい顔で笑ってらっしゃる…
見られたぁ…それも多分一番見られたらダメな方に…
「ほら、マイラー!ガクブルしてる場合じゃないわよー!まだオーク残ってるからねー」
そうだった!まだ魔力も余裕あるし、もう1発。
「同じ魔法じゃ芸がないわよー!なんか他のやつなーいーのー?」
なんか勝手な事言ってるし。
もうっ!
でも考えてみれば、自重しないで攻撃魔法使える場面なんて、そんなに多くないのも事実だねぇ。
どうせなら、まだ試した事ない魔法を使ってみてもいいかな。ちょうど苦手な火魔法で実験してみようじゃないか。
「炎球蓮華」
エルフ族は森に住むっていう種族特性から、火魔法は苦手だってずっと教えられてきたし、アタシもそう信じてた。
ただ、冒険者として生きていくなかで風や木魔法に強い耐性を持ってて、火魔法に弱い生物も相手にしなきゃいけない事もあったから、必要に駆られて初級火魔法はいくつか習得したんだ。
でもやっぱり苦手属性だから威力には自信なくて、余程の時以外は使ってなかったんだよ。
そしたらユーマ君が教えてくれたんだ。使える属性なら得手不得手はイメージの問題なんだって。才能の有無で絶対に使えない属性はあるけど、使える限りはその特性さえ理解してたら、魔力が足りる限りどんな魔法でも発動出来るんだって。
研究者でもあるアタシは、目から鱗ってやつだったよ。
実際ユーマ君は、器用に魔法を使ってた。後で知ったんだけど、属性の変更なんて非常識な事まで出来るらしい。
彼なりの理論では、魔力に属性という方向性を持たせたものが魔法という形で発動するだけで、どの属性でも根本的な違いはないんだそうだよ。
しかも発動する魔法は、同じ属性なら使用魔力量や形状・範囲・規模なんかが違うだけで、全く同じものなんだって。「風弾」も「風刃」も「竜巻旋風」も同じって事だねぇ。
ちなみに詠唱も、術者がイメージを固めやすくして、魔法として発動させやすくする補助でしかないらしい。
事実ユーマ君は全ての魔法を無詠唱で使える。たまに詠唱してるのは病気だってさ。「中二病」って病気、初めて聞いたけど。
ともかく、ユーマ君の教えを受けて以来、アタシの魔法の威力は格段に成長したよ。自分では、もう頭打ちだって思っていたから二重に驚いたさ。
そんなわけで、今発動した魔法はただの「炎球」だ。数を増やして、1つ1つの炎の温度を高くしただけなんだよ。
こんな名前の魔法は聞いた事ないんだけど、実際発動出来てるから、ユーマ君の理論の正しさを証明してるんだよねぇ。
ちなみに名付けはアタシ。ちょっとカッコいいだろ?
「マイラも中二病になったのね…」
え?そうなんですか?詠唱なんてしてませんよ?
「中二病っていうのはねぇ…」
な、なんだって!?そうだったのか…
アタシは精神にダメージを受けて、思わず膝を突いてしまったよ。
あ、たまにユーマ君がこうしてた理由がわかった…
「マイラぁ、アンタ最近ユーマに似てきたんじゃない?
合流したらユーマに報告しといてあげるわ。アンタも中二病だって」
やめてっ!お願いネル様!それだけはぁ…
ユーマ君の中ではお姉さんポジションでいたいんです。
「そう?喜ぶと思うけどなぁ….」
お願いします!ニヤニヤしながら言わないでください…
『ネルお姉さん。マイラおねーさんはなんでガックリしてるですか?』
「ふーちゃん。それは聞いちゃダメなやつよ?そっとしといてあげましょうね」
『はいなのです!マイラおねーさん元気出すですよ!』
ふーちゃんの優しさが痛いわ…
戦場にもかかわらず、アタシ達がこんなやり取りをしている時、オークの集団にいた、一際目立つジェネラルの頭部が弾け飛ぶのを目撃したんだよね。
あれはやっぱり…
アタシがどうにか防壁を乗り越えて、主戦場にたどり着くよりも早く、村の門が破られたみたいだ。
もう残された時間は、もうあまり無いんじゃないかな。
それでもアタシは、少しでもオークの数を減らしてやろうと、戦場へ急いだよ。
オーク達をはっきり視認出来る距離に辿り着いた時には、多分本隊だろうねぇ、アタシの目から見ても、明らかに強そうなオーク達が村へと進軍し始めてた。
連中の中には、他より存在感のある巨体が1匹。アレがきっと集落の長。しかも間違いなくオークジェネラルだねぇ。
咄嗟に発動したのは、アタシが一番得意な風魔法。
なかでも、威力はとびっきりの「残酷な竜巻」を撃ち込んだよ。
以前だったら、保有魔力の大半を消費しないと使えない、戦術級の範囲攻撃魔法だったんだけど、ユーマくんとそういう関係になって色々と彼の影響を受けたせいか、アタシの魔力保有量も運用効率も格段に向上してる。
やろうと思えば、あと数回は発動出来るだろうねぇ。
「あはっ!すごいねぇ!アタシ!」
思わず顔がにやけちゃったじゃないのさ。こんな顔絶対ユーマ君には見せられないよ…
「見ぃーちゃったわー♪すーごーい顔ぉー♪」
…!?
「マイラってばー♪大魔法で蹂躙してぇー♪カ・イ・カ・ン♡って顔するのぉー♪」
ネル様ぁ…
ふーちゃんに乗って、すっごいいい顔で笑ってらっしゃる…
見られたぁ…それも多分一番見られたらダメな方に…
「ほら、マイラー!ガクブルしてる場合じゃないわよー!まだオーク残ってるからねー」
そうだった!まだ魔力も余裕あるし、もう1発。
「同じ魔法じゃ芸がないわよー!なんか他のやつなーいーのー?」
なんか勝手な事言ってるし。
もうっ!
でも考えてみれば、自重しないで攻撃魔法使える場面なんて、そんなに多くないのも事実だねぇ。
どうせなら、まだ試した事ない魔法を使ってみてもいいかな。ちょうど苦手な火魔法で実験してみようじゃないか。
「炎球蓮華」
エルフ族は森に住むっていう種族特性から、火魔法は苦手だってずっと教えられてきたし、アタシもそう信じてた。
ただ、冒険者として生きていくなかで風や木魔法に強い耐性を持ってて、火魔法に弱い生物も相手にしなきゃいけない事もあったから、必要に駆られて初級火魔法はいくつか習得したんだ。
でもやっぱり苦手属性だから威力には自信なくて、余程の時以外は使ってなかったんだよ。
そしたらユーマ君が教えてくれたんだ。使える属性なら得手不得手はイメージの問題なんだって。才能の有無で絶対に使えない属性はあるけど、使える限りはその特性さえ理解してたら、魔力が足りる限りどんな魔法でも発動出来るんだって。
研究者でもあるアタシは、目から鱗ってやつだったよ。
実際ユーマ君は、器用に魔法を使ってた。後で知ったんだけど、属性の変更なんて非常識な事まで出来るらしい。
彼なりの理論では、魔力に属性という方向性を持たせたものが魔法という形で発動するだけで、どの属性でも根本的な違いはないんだそうだよ。
しかも発動する魔法は、同じ属性なら使用魔力量や形状・範囲・規模なんかが違うだけで、全く同じものなんだって。「風弾」も「風刃」も「竜巻旋風」も同じって事だねぇ。
ちなみに詠唱も、術者がイメージを固めやすくして、魔法として発動させやすくする補助でしかないらしい。
事実ユーマ君は全ての魔法を無詠唱で使える。たまに詠唱してるのは病気だってさ。「中二病」って病気、初めて聞いたけど。
ともかく、ユーマ君の教えを受けて以来、アタシの魔法の威力は格段に成長したよ。自分では、もう頭打ちだって思っていたから二重に驚いたさ。
そんなわけで、今発動した魔法はただの「炎球」だ。数を増やして、1つ1つの炎の温度を高くしただけなんだよ。
こんな名前の魔法は聞いた事ないんだけど、実際発動出来てるから、ユーマ君の理論の正しさを証明してるんだよねぇ。
ちなみに名付けはアタシ。ちょっとカッコいいだろ?
「マイラも中二病になったのね…」
え?そうなんですか?詠唱なんてしてませんよ?
「中二病っていうのはねぇ…」
な、なんだって!?そうだったのか…
アタシは精神にダメージを受けて、思わず膝を突いてしまったよ。
あ、たまにユーマ君がこうしてた理由がわかった…
「マイラぁ、アンタ最近ユーマに似てきたんじゃない?
合流したらユーマに報告しといてあげるわ。アンタも中二病だって」
やめてっ!お願いネル様!それだけはぁ…
ユーマ君の中ではお姉さんポジションでいたいんです。
「そう?喜ぶと思うけどなぁ….」
お願いします!ニヤニヤしながら言わないでください…
『ネルお姉さん。マイラおねーさんはなんでガックリしてるですか?』
「ふーちゃん。それは聞いちゃダメなやつよ?そっとしといてあげましょうね」
『はいなのです!マイラおねーさん元気出すですよ!』
ふーちゃんの優しさが痛いわ…
戦場にもかかわらず、アタシ達がこんなやり取りをしている時、オークの集団にいた、一際目立つジェネラルの頭部が弾け飛ぶのを目撃したんだよね。
あれはやっぱり…
0
お気に入りに追加
533
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる