77 / 170
第三章 バーナムの街
第75話
しおりを挟む
どうも僕です。
絶対に何も無かったというか、疚しいところなんて一つも無いんです。
それでも目覚めた時に知っている女性と同衾してる事に気付いた瞬間って、どうしてこんなにも激しく動悸がするんでしょうか?
このドキドキはいったいなんですか?
キングサイズなベッドなので、昨夜は僕を真ん中にしてシアとネルが両脇に、マイラさんがネルの向こうに横になる型で寝る事になったんですが、起きてみると僕は、なぜかマイラさんを両腕で抱き抱えるように寝ていました。
マイラさんはマイラさんで、腕枕状態で僕の胸元に顔を置き、なんとも幸せそうな顔で寝ています。
このままマイラさんが起きると、非常に良くない気がするので、マイラさんの頭が乗っている左脇を徐々に上にずらします。
「う、むぅ…ん」
びっくりしたぁ…僕の心臓は早鐘のように打ち鳴らされています。鼓動で起こしちゃわないか心配になるほどです。
再び腕をずらし始めましょう。
なんだとっ!動かし始めた感触に不快感を感じたのでしょうか?マイラさんの手があろう事か僕の服を握りしめてしまったのです。…終わった。
「ねぇマイラ、あんた本当はユーマの事好きなんじゃない」
あぁ、ネル…そんなツッコミしたらマイラさんが起きちゃうからっ!
「マイラならさっきから起きてるわよ?」
…ふぁっ!?
「服を握る前から起きてるから。正確に言うと、さっき声出した時に起きたわ。
何を思って服を握ったのかよね?マイラ」
「あぅ…これは…こ、このように腕枕というのも、ひ、久しぶりでしてっ!
その、な、名残惜しいといいますか、ちょ、もうちょっと味わっていたいなぁと…」
マイラさんは、顔を埋めたままで必死に解説してるんだけど、話しながら体温が上がってきたのが分ります。
「ユーマ君もご、誤解しないでくれよ?これは、その、好意とかそんなのじゃなくてだな、あれだ、その、なんとなく…そうだ!なんとなくなんだからなっ!」
「じゃあ、早く離れなさいよー。まったく…乙女なんだから」
ネルは確実にマイラさんの羞恥心を攻めていきます。
ほら、マイラさんがぷるぷるしだした。
「うわぁーーん!ユーマ君!ネル様が苛めるよ!」
「そうそう。そうやって感情を素直に表に出す方がオンナはかわいいわよ?」
この後しばらく、マイラさんが落ち着くまで身動き出来ませんでした。
朝の騒動からやっと落ち着いた僕達は、朝食を呼びに来たアリーナさんに連れられ、再び食堂にやって来ています。
「やぁユーマ君、おはよう。ゆっくり休めたかね?まずは朝食を済ませてしまおうか」
ハイネン男爵は、昨日の夜の続きは後でと暗に伝えてきました。
まぁ、お腹空いてるし、ありがたく頂きます。
焼きたての柔らかなパンに、ハム、ソーセージ、オムレツにサラダとかなり充実の内容で、すっかり満足ですね。
食後、男爵の執務室へと呼ばれた僕達は、ソファーセットで、アリーナさんが届けてくれたコーヒーと紅茶を飲みながら男爵を待っています。
「ユーマ様、この部屋もやはり監視されとるようじゃ」
シアが小声で教えてくれます。
そりゃまぁ、それなりに重要な書類やら貴重品やら沢山あるだろうからなぁ。
以前入った勤め先の役員室とかも、監視カメラが何台も設置されてたのを思い出しました。
ほどなくノックの音。
「やぁやぁおはよう、諸君。男爵閣下は間もなく参られる。
と、その前にワシからちと頼みがあるんじゃが…」
男爵に先立って入室して来たのはバローさんでした。
「おはようございます。どうなさったんですか?
お受け出来るかどうかわかりませんが聞かせて下さい」
「うむ、そんな大層な話ではないんじゃが、君らが捕らえた盗賊供の事なんじゃがのう…」
そういえば、レイドックさんから尋問と報奨金の話を聞いてたよなぁ。どうかしたんだろうか?
「夜通し尋問をした結果、今回の襲撃に背後関係はないのがハッキリしたのは良かったんじゃがな、連中の出どころに少々問題があったんじゃ。
というのもな…」
第1夫人のレイラさんの実家、ダブレク子爵家が治める街ハンザと、ここバーナムの間には、グラベール男爵家とモルト男爵家の領地があるらしい。
で、盗賊達は、グラベール男爵領ルーアン近郊で盗賊稼業に精を出していた一団だという事だった。
そこで最後に手を出したのがグラベール男爵からモルト男爵への使節団。
ところがその使節団が運んでいたのが、2男爵家で共謀してダブレク子爵家を貶める密約書だったらしい。
ハンザに持ち込んで稼ぎにしたかったものの、2男爵家からの追撃を受け、バーナム方面にどうにか逃げ切り、ようやくあの森に落ち着いた、という事だったそうだ。
「この密約書を確保出来れば、レイラ様のご実家に貸しもつくれるからのぅ。
盗賊に問い質したんじゃが、ユーマ君、君にじゃったら話しても良いと言って聞かぬのじゃよ。
どうも、ここに来るまでの道中に君がした振る舞いに、いたく感銘を受けたようでな、これを君の手柄にして恩に報いたいと言う事なんじゃ。
どうじゃろうか?引き受けては貰えんかの?」
いや、結構大層な話だと思いますけど…
でもこれは受けるべき話な気がする。
「わかりました。その役お受け致します」
これで一つ予定が決まったね。あとはエリーヌお嬢様の件を男爵に伝えたら、行動開始かな。
絶対に何も無かったというか、疚しいところなんて一つも無いんです。
それでも目覚めた時に知っている女性と同衾してる事に気付いた瞬間って、どうしてこんなにも激しく動悸がするんでしょうか?
このドキドキはいったいなんですか?
キングサイズなベッドなので、昨夜は僕を真ん中にしてシアとネルが両脇に、マイラさんがネルの向こうに横になる型で寝る事になったんですが、起きてみると僕は、なぜかマイラさんを両腕で抱き抱えるように寝ていました。
マイラさんはマイラさんで、腕枕状態で僕の胸元に顔を置き、なんとも幸せそうな顔で寝ています。
このままマイラさんが起きると、非常に良くない気がするので、マイラさんの頭が乗っている左脇を徐々に上にずらします。
「う、むぅ…ん」
びっくりしたぁ…僕の心臓は早鐘のように打ち鳴らされています。鼓動で起こしちゃわないか心配になるほどです。
再び腕をずらし始めましょう。
なんだとっ!動かし始めた感触に不快感を感じたのでしょうか?マイラさんの手があろう事か僕の服を握りしめてしまったのです。…終わった。
「ねぇマイラ、あんた本当はユーマの事好きなんじゃない」
あぁ、ネル…そんなツッコミしたらマイラさんが起きちゃうからっ!
「マイラならさっきから起きてるわよ?」
…ふぁっ!?
「服を握る前から起きてるから。正確に言うと、さっき声出した時に起きたわ。
何を思って服を握ったのかよね?マイラ」
「あぅ…これは…こ、このように腕枕というのも、ひ、久しぶりでしてっ!
その、な、名残惜しいといいますか、ちょ、もうちょっと味わっていたいなぁと…」
マイラさんは、顔を埋めたままで必死に解説してるんだけど、話しながら体温が上がってきたのが分ります。
「ユーマ君もご、誤解しないでくれよ?これは、その、好意とかそんなのじゃなくてだな、あれだ、その、なんとなく…そうだ!なんとなくなんだからなっ!」
「じゃあ、早く離れなさいよー。まったく…乙女なんだから」
ネルは確実にマイラさんの羞恥心を攻めていきます。
ほら、マイラさんがぷるぷるしだした。
「うわぁーーん!ユーマ君!ネル様が苛めるよ!」
「そうそう。そうやって感情を素直に表に出す方がオンナはかわいいわよ?」
この後しばらく、マイラさんが落ち着くまで身動き出来ませんでした。
朝の騒動からやっと落ち着いた僕達は、朝食を呼びに来たアリーナさんに連れられ、再び食堂にやって来ています。
「やぁユーマ君、おはよう。ゆっくり休めたかね?まずは朝食を済ませてしまおうか」
ハイネン男爵は、昨日の夜の続きは後でと暗に伝えてきました。
まぁ、お腹空いてるし、ありがたく頂きます。
焼きたての柔らかなパンに、ハム、ソーセージ、オムレツにサラダとかなり充実の内容で、すっかり満足ですね。
食後、男爵の執務室へと呼ばれた僕達は、ソファーセットで、アリーナさんが届けてくれたコーヒーと紅茶を飲みながら男爵を待っています。
「ユーマ様、この部屋もやはり監視されとるようじゃ」
シアが小声で教えてくれます。
そりゃまぁ、それなりに重要な書類やら貴重品やら沢山あるだろうからなぁ。
以前入った勤め先の役員室とかも、監視カメラが何台も設置されてたのを思い出しました。
ほどなくノックの音。
「やぁやぁおはよう、諸君。男爵閣下は間もなく参られる。
と、その前にワシからちと頼みがあるんじゃが…」
男爵に先立って入室して来たのはバローさんでした。
「おはようございます。どうなさったんですか?
お受け出来るかどうかわかりませんが聞かせて下さい」
「うむ、そんな大層な話ではないんじゃが、君らが捕らえた盗賊供の事なんじゃがのう…」
そういえば、レイドックさんから尋問と報奨金の話を聞いてたよなぁ。どうかしたんだろうか?
「夜通し尋問をした結果、今回の襲撃に背後関係はないのがハッキリしたのは良かったんじゃがな、連中の出どころに少々問題があったんじゃ。
というのもな…」
第1夫人のレイラさんの実家、ダブレク子爵家が治める街ハンザと、ここバーナムの間には、グラベール男爵家とモルト男爵家の領地があるらしい。
で、盗賊達は、グラベール男爵領ルーアン近郊で盗賊稼業に精を出していた一団だという事だった。
そこで最後に手を出したのがグラベール男爵からモルト男爵への使節団。
ところがその使節団が運んでいたのが、2男爵家で共謀してダブレク子爵家を貶める密約書だったらしい。
ハンザに持ち込んで稼ぎにしたかったものの、2男爵家からの追撃を受け、バーナム方面にどうにか逃げ切り、ようやくあの森に落ち着いた、という事だったそうだ。
「この密約書を確保出来れば、レイラ様のご実家に貸しもつくれるからのぅ。
盗賊に問い質したんじゃが、ユーマ君、君にじゃったら話しても良いと言って聞かぬのじゃよ。
どうも、ここに来るまでの道中に君がした振る舞いに、いたく感銘を受けたようでな、これを君の手柄にして恩に報いたいと言う事なんじゃ。
どうじゃろうか?引き受けては貰えんかの?」
いや、結構大層な話だと思いますけど…
でもこれは受けるべき話な気がする。
「わかりました。その役お受け致します」
これで一つ予定が決まったね。あとはエリーヌお嬢様の件を男爵に伝えたら、行動開始かな。
0
お気に入りに追加
533
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
異世界隠密冒険記
リュース
ファンタジー
ごく普通の人間だと自認している高校生の少年、御影黒斗。
人と違うところといえばほんの少し影が薄いことと、頭の回転が少し速いことくらい。
ある日、唐突に真っ白な空間に飛ばされる。そこにいた老人の管理者が言うには、この空間は世界の狭間であり、元の世界に戻るための路は、すでに閉じているとのこと。
黒斗は老人から色々説明を受けた後、現在開いている路から続いている世界へ旅立つことを決める。
その世界はステータスというものが存在しており、黒斗は自らのステータスを確認するのだが、そこには、とんでもない隠密系の才能が表示されており・・・。
冷静沈着で中性的な容姿を持つ主人公の、バトルあり、恋愛ありの、気ままな異世界隠密生活が、今、始まる。
現在、1日に2回は投稿します。それ以外の投稿は適当に。
改稿を始めました。
以前より読みやすくなっているはずです。
第一部完結しました。第二部完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる