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第一章 異世界に来ちゃいました
第9話
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戻って来た風羽花は、僕の肩に掴まるとしきりにゴロゴロ喉を鳴らしながら頬擦りして来ます。
でも、いつもの甘えた感じじゃなくって、何かを訴えようと必死になってるような雰囲気がしたんだ。
「…あっ!?もしかして何かいたのっ?」
どうやら風羽花は、この先に何か危険がありそうなモノを見つけて、知らせに戻って来たみたい。
すっごい賢いわ、この子。
僕が尋ねた事で、気持ちが伝わったのがわかって嬉しそうに喉を鳴らす風羽花。あら、かわいい。
…いかん。危うくほっこりし過ぎる処だった。
せっかく風羽花が知らせてくれたのを、無駄にしちゃダメだよな。
「ネル!この先に何かしらがいるみたいだ。どうする?」
「そうみたいね。危険は避けるべきだけど、進まないっていうわけにはいかないもの。最大限に警戒しながら先に進みましょ?」
「わかった。じゃあネルは前みたいに落ちたら危ないから、ちょっと窮屈かもしれないけど服の襟の所に入って?そこは絶対に守るから」
「了解よ!信じてるから守ってね?」
一瞬、風羽花にネルを掴んで上にいて貰うことも頭に浮かんだけど、万が一風羽花が狙われたりしたら2人ともが危ないなって思い止まったよ。
「風羽花は相手の視界に入らない様に、そこらの木から様子を見ててね」
軽く頭を撫でながらそう伝えると、一度頬擦りをしてから川縁の木の一本に飛び移って行きました。
「よし、行くよ!」
僕は慎重に歩きながら、身体の中の魔力を集めます。いつでも魔法は発動出来る様に準備しておかないとね。
一際大きな岩に身を寄せて、そっと先を覗き込みます。
….いた!小柄な体格の二足歩行の何かだ。
「あれはゴブリンよ。まだこっちには気付いてないわね」
「あれがゴブリンか…初めて見たけどやっぱり気味が悪いね」
「連中は武器を使う事もあるわ。ちらっと見えた感じだと3匹か4匹かかしら?」
「そうだね。多分4匹だと思う。
ただ、もしかしたら死角にまだ居るかもしれないから、飛び込んで魔法を撃つ間に、ネルは少し右奥の方を確認して?」
「わかったわ。ユーマは初撃に集中してね。出来れば見えた連中だけでも仕留められたら、後はやりやすいはずだから」
「オッケー。じゃあいちにのさんで飛び込むから。
いーち、にーの、さん!」
僕達は岩陰から一気に飛び出すと、視界に入った4匹のゴブリンに向かって、火の弾を飛ばす。
運良く4発全てがゴブリン達の顔面を直撃してくれた。
「ユーマ!右奥2匹よっ!」
死角を確認してくれたネルから、後続の報告が上がる。
すぐに右方向に身体を向けると、突然の襲撃で動揺している2匹のゴブリンが視界に入って来た。
僕は再度魔力を集めて、2匹に向かって、今度は魔法で生み出した岩の弾を高速で投げつける。
岩弾は狙いを過たず、2匹の頭を直撃。2匹の頭が弾け散るのが見えた。これは間違いなく殺ったはずだ。
すかさず最初の4匹の方に視線をやると、どうやら1匹だけまだ息があるようで、燃えた顔を押さえながらヨロヨロと立っている。
少し体勢を整えてそいつに向けて岩弾を放つと、弾は胸の辺りに大きな穴を開け、そいつは膝から倒れた。
僕は念の為、倒れている残りの3匹にもう一度火弾を投げつけると、3匹とも激しく燃え上がった。これなら間違いなく絶命するだろうね。
「お疲れ様!ユーマ凄かったわね!魔法の精度は一流の魔法使い並みよ!驚いたわ」
ネルが胸元から歓喜の声を上げて、僕を労ってくれた。
向こうの木から飛んで来た風羽花も、肩に降りるとゴロゴロ喉を鳴らしながら頬擦りをして来る。多分凄く褒めてくれてるみたいだ。
「2人が無事で安心したよ。夢中でやったけど、どうにか上手くいってほんと良かった」
「多分人型の生き物を手に掛けたのは初めてだと思うから、今のウチに教えておくわ。
ゴブリンは鬼族に分類される魔物なのよ。
あいつらは自分達も含めた全ての生き物が食料であり、同時に増える為の苗床なの。
だからこのガイアスでは、ゴブリンは見かけ次第即全滅させるっていうのが常識ね」
「よく物語でも同じ様な感じで紹介されてたから、想像してたよりも罪悪感みたいなのは無いっぽいよ。
一瞬、向こうからは何もされてないのにって思ったりもしたけどさ」
「ゴブリンに関しては、問答無用で殲滅するのが唯一の正解ね」
そっか、きっとあのGのコードネームが付けられた台所に沸く黒いあんちきしょうと同じ様なもんなんだろう。
多分次に出会っても、即退治出来ると思う。
「いやぁ、ほんとに風羽花のおかげだよ!もしあのまま進んでたら、出会い頭に戦闘突入してたはずだもんね。お手柄だぞ!」
「そうね!ふーちゃんほんと賢いわっ!これからも私達を助けてね?」
僕達から盛大に褒められて、風羽花も胸を張ってる。いつも以上に羽毛を膨らませて、もこもこかわいい。
唯一残念なのは、風羽花の伝えたい事を僕が理解するのが大変って事。
風羽花は一生懸命伝えようとしてくれてるんだけどね。
「あ、そうだ!ユーマ!ゴブリンは魔物だから魔石を持ってるのよ。忘れるところだったわ。
ちょっと汚いけどアイツらの身体を調べてみなさい!」
「え?気持ち悪いんですけど…
はいっ!わかりました!やります!やればいいんでしょ!」
文句を言いかけたら、ネルにすっごい目で睨まれました。
あの眼はあかんやつです。多分何人か殺っちゃってる眼です。
「ユーマ?触ってなくてもアンタの顔見てたらわかるわ?今すっごく失礼な事考えてたでしょ?」
…はいっ!大変申し訳ございませんでした!
…やっぱ怖ぇぇ。
でも、いつもの甘えた感じじゃなくって、何かを訴えようと必死になってるような雰囲気がしたんだ。
「…あっ!?もしかして何かいたのっ?」
どうやら風羽花は、この先に何か危険がありそうなモノを見つけて、知らせに戻って来たみたい。
すっごい賢いわ、この子。
僕が尋ねた事で、気持ちが伝わったのがわかって嬉しそうに喉を鳴らす風羽花。あら、かわいい。
…いかん。危うくほっこりし過ぎる処だった。
せっかく風羽花が知らせてくれたのを、無駄にしちゃダメだよな。
「ネル!この先に何かしらがいるみたいだ。どうする?」
「そうみたいね。危険は避けるべきだけど、進まないっていうわけにはいかないもの。最大限に警戒しながら先に進みましょ?」
「わかった。じゃあネルは前みたいに落ちたら危ないから、ちょっと窮屈かもしれないけど服の襟の所に入って?そこは絶対に守るから」
「了解よ!信じてるから守ってね?」
一瞬、風羽花にネルを掴んで上にいて貰うことも頭に浮かんだけど、万が一風羽花が狙われたりしたら2人ともが危ないなって思い止まったよ。
「風羽花は相手の視界に入らない様に、そこらの木から様子を見ててね」
軽く頭を撫でながらそう伝えると、一度頬擦りをしてから川縁の木の一本に飛び移って行きました。
「よし、行くよ!」
僕は慎重に歩きながら、身体の中の魔力を集めます。いつでも魔法は発動出来る様に準備しておかないとね。
一際大きな岩に身を寄せて、そっと先を覗き込みます。
….いた!小柄な体格の二足歩行の何かだ。
「あれはゴブリンよ。まだこっちには気付いてないわね」
「あれがゴブリンか…初めて見たけどやっぱり気味が悪いね」
「連中は武器を使う事もあるわ。ちらっと見えた感じだと3匹か4匹かかしら?」
「そうだね。多分4匹だと思う。
ただ、もしかしたら死角にまだ居るかもしれないから、飛び込んで魔法を撃つ間に、ネルは少し右奥の方を確認して?」
「わかったわ。ユーマは初撃に集中してね。出来れば見えた連中だけでも仕留められたら、後はやりやすいはずだから」
「オッケー。じゃあいちにのさんで飛び込むから。
いーち、にーの、さん!」
僕達は岩陰から一気に飛び出すと、視界に入った4匹のゴブリンに向かって、火の弾を飛ばす。
運良く4発全てがゴブリン達の顔面を直撃してくれた。
「ユーマ!右奥2匹よっ!」
死角を確認してくれたネルから、後続の報告が上がる。
すぐに右方向に身体を向けると、突然の襲撃で動揺している2匹のゴブリンが視界に入って来た。
僕は再度魔力を集めて、2匹に向かって、今度は魔法で生み出した岩の弾を高速で投げつける。
岩弾は狙いを過たず、2匹の頭を直撃。2匹の頭が弾け散るのが見えた。これは間違いなく殺ったはずだ。
すかさず最初の4匹の方に視線をやると、どうやら1匹だけまだ息があるようで、燃えた顔を押さえながらヨロヨロと立っている。
少し体勢を整えてそいつに向けて岩弾を放つと、弾は胸の辺りに大きな穴を開け、そいつは膝から倒れた。
僕は念の為、倒れている残りの3匹にもう一度火弾を投げつけると、3匹とも激しく燃え上がった。これなら間違いなく絶命するだろうね。
「お疲れ様!ユーマ凄かったわね!魔法の精度は一流の魔法使い並みよ!驚いたわ」
ネルが胸元から歓喜の声を上げて、僕を労ってくれた。
向こうの木から飛んで来た風羽花も、肩に降りるとゴロゴロ喉を鳴らしながら頬擦りをして来る。多分凄く褒めてくれてるみたいだ。
「2人が無事で安心したよ。夢中でやったけど、どうにか上手くいってほんと良かった」
「多分人型の生き物を手に掛けたのは初めてだと思うから、今のウチに教えておくわ。
ゴブリンは鬼族に分類される魔物なのよ。
あいつらは自分達も含めた全ての生き物が食料であり、同時に増える為の苗床なの。
だからこのガイアスでは、ゴブリンは見かけ次第即全滅させるっていうのが常識ね」
「よく物語でも同じ様な感じで紹介されてたから、想像してたよりも罪悪感みたいなのは無いっぽいよ。
一瞬、向こうからは何もされてないのにって思ったりもしたけどさ」
「ゴブリンに関しては、問答無用で殲滅するのが唯一の正解ね」
そっか、きっとあのGのコードネームが付けられた台所に沸く黒いあんちきしょうと同じ様なもんなんだろう。
多分次に出会っても、即退治出来ると思う。
「いやぁ、ほんとに風羽花のおかげだよ!もしあのまま進んでたら、出会い頭に戦闘突入してたはずだもんね。お手柄だぞ!」
「そうね!ふーちゃんほんと賢いわっ!これからも私達を助けてね?」
僕達から盛大に褒められて、風羽花も胸を張ってる。いつも以上に羽毛を膨らませて、もこもこかわいい。
唯一残念なのは、風羽花の伝えたい事を僕が理解するのが大変って事。
風羽花は一生懸命伝えようとしてくれてるんだけどね。
「あ、そうだ!ユーマ!ゴブリンは魔物だから魔石を持ってるのよ。忘れるところだったわ。
ちょっと汚いけどアイツらの身体を調べてみなさい!」
「え?気持ち悪いんですけど…
はいっ!わかりました!やります!やればいいんでしょ!」
文句を言いかけたら、ネルにすっごい目で睨まれました。
あの眼はあかんやつです。多分何人か殺っちゃってる眼です。
「ユーマ?触ってなくてもアンタの顔見てたらわかるわ?今すっごく失礼な事考えてたでしょ?」
…はいっ!大変申し訳ございませんでした!
…やっぱ怖ぇぇ。
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