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第一章 異世界に来ちゃいました
第4話
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イモムシのやつら完全にコッチを獲物って認識してるんだろうな。さっきチラッと見えた口には鋭い牙が並んでて絶対に肉食だわ。
しかもリンゴっぽいのが、このイモムシの頭のあたりから生えてる角についてる飾りみたいなヤツだった。たぶんアンコウの疑似餌みたいなもんなんだよね。
うちの腹ペコ自称女神様が、ばっちり釣れてたし。
…とか、冷静に分析してる場合じゃない。
「まじかよ!めっちゃ足速いわ!」
もう10メートルもないくらいだ。逃げ切れる気がしない。
「ユーマ!殺るしかないわ!」
なんか物騒な漢字が当てられてる気がします。
「この距離なら大丈夫!ユーマ!魔法で攻撃するのよ!」
「簡単に言うなし!使った事ないのにわからんわー!」
ネルが無茶振りしてきます。
「そんなの気合いで乗り切るのよ!男の子でしょ!」
もうイモムシとの距離は5メートルくらい。もう悩んでる暇はないみたいだ。
目の前には一抱え以上ある木が見える。これを回り込んで攻撃に転じてみよう。ダメで元々だ。
大木の横を走り抜け、回り込むように方向を変える。
どうにか足を滑らせる事なく体勢を維持出来た。
うひゃーとかなんとか聞こえた気もするけど、もはややるしかない。
先頭のイモムシは、勢いそのままに飛びかかる体勢だ。
体を起こし、側腕を拡げて僕を捕まえる気に見える。
「たぁっ!!」
僕は格闘技の経験なんて一切ない。だから子供の頃見た戦隊ヒーローのイメージでイモムシのど真ん中に向かって、飛び蹴りを叩き込んだ。
ぱぁん!!
…!?
なんだか想像してた以上にポップな音を上げて、イモムシは弾け散った…
…は?
…何これ?まさかコイツら弱いの?
そう、僕は当然ながらネルも知らなかった。
イモムシはめちゃくちゃ弱い。見た目は恐ろしく、移動速度もかなり速いために誤解されやすいが、分類としては魔獣ですらなく、ただのでっかい虫だそうな。
のちに聞いたところによれば、通称「たまごむし」と呼ばれるほど衝撃に弱く、森に入る樵達でさえ投石一つで撃退するらしい。
ともあれ、弱い事さえわかれば、あと2匹はそこらに落ちていた枯れ木の枝で切り払って片付けることができた。
…紛らわしいんだよ!
全速力で走り回った疲労と、初戦闘が無事に終わった事で、張り詰めていた緊張の糸がぷっつり切れてしまったみたいだね。すっかり力が抜けて歩く気力が出てこない。
「ダメだぁ…お腹空いたし、これ以上動ける気がしない。…短い第二の人生だった…」
「…ちょっとー!何諦めてんのよー!」
どこか離れた所から、いつか聴いたような声が聞こえる。
「早く助けなさいよー!この体勢苦しいんだからー!」
…あぁ、ネルか。忘れてた。そう言えばいつの間に姿がなかったけど。
「あんたが急に向き変えるから!は、や、く、し、ろー!」
声がする方に視線を遣ると、近くの木の枝に引っかかっていた。しかも逆さまになった状態で必死にスカートを押さえているし。
「ちょっと待って、動くのダルい」
「待たないわよっ!これ押さえてるのキツイのっ!私の尊厳のピンチなのよっ!」
…いや、白じゃん。ってゆーかそこ?
「…はぁ。わかったよっと」
僕はどうにか身体を起こすと、ネルを回収しつつ空腹を堪えて再び森を歩く。
そうしてしばらくあてもなく歩いた先で、運良くちょっとした沢に行き当たったんだ。
「良かった。とりあえず水飲もう」
「そうね!あ、お腹壊したりしないから安心して!」
ネル曰く、僕の身体は丈夫になってるそうで、生水でも問題ないらしいから、直接掬って喉を潤す事が出来た。
「あ、魚がいる!あれって食べられるのかな?」
「あら?ほんとね!もちろん大丈夫よ!ユーマ捕まえて?」
「簡単に言うね。結構大変だと思うんだけど…」
「なんとかしなさいよっ!男でしょ!」
「いや、性別関係ないと思うんだけどなぁ…」
とは言っても、お腹も限界だし、ネルに言われなくても獲る気まんまんだったけど。
当然ながらなんの道具も持ち合わせてないけれど、こういう時に役に立つのは記憶だねっ!
僕は周りを見渡して、ちょっと大きめの石を拾い上げた。
「そんな大きな石だと魚が潰れちゃうわよ?もっと小さいのにしなさいよ?」
「いやこれを魚に当てるとか、無理に決まってるでしょうが!これはこうするんだよっと」
持ち上げた石を、流れの中から顔を出す岩に向かって放り投げる。
よし!命中!予想通り岩陰にいたらしい魚が数匹浮き上がって来たので、流されてしまう前に急いで回収すると、近くにあった木の枝で締める。
「へぇ、魔法みたいね!」
「向こうの世界に、こうやってする漁があるんだよ。やったのは初めてだったから上手くいって良かった」
確か、ガチン漁とかなんか言ったっけかな?うろ覚えだけど。
さぁ、異世界初の食事にしよう!
しかもリンゴっぽいのが、このイモムシの頭のあたりから生えてる角についてる飾りみたいなヤツだった。たぶんアンコウの疑似餌みたいなもんなんだよね。
うちの腹ペコ自称女神様が、ばっちり釣れてたし。
…とか、冷静に分析してる場合じゃない。
「まじかよ!めっちゃ足速いわ!」
もう10メートルもないくらいだ。逃げ切れる気がしない。
「ユーマ!殺るしかないわ!」
なんか物騒な漢字が当てられてる気がします。
「この距離なら大丈夫!ユーマ!魔法で攻撃するのよ!」
「簡単に言うなし!使った事ないのにわからんわー!」
ネルが無茶振りしてきます。
「そんなの気合いで乗り切るのよ!男の子でしょ!」
もうイモムシとの距離は5メートルくらい。もう悩んでる暇はないみたいだ。
目の前には一抱え以上ある木が見える。これを回り込んで攻撃に転じてみよう。ダメで元々だ。
大木の横を走り抜け、回り込むように方向を変える。
どうにか足を滑らせる事なく体勢を維持出来た。
うひゃーとかなんとか聞こえた気もするけど、もはややるしかない。
先頭のイモムシは、勢いそのままに飛びかかる体勢だ。
体を起こし、側腕を拡げて僕を捕まえる気に見える。
「たぁっ!!」
僕は格闘技の経験なんて一切ない。だから子供の頃見た戦隊ヒーローのイメージでイモムシのど真ん中に向かって、飛び蹴りを叩き込んだ。
ぱぁん!!
…!?
なんだか想像してた以上にポップな音を上げて、イモムシは弾け散った…
…は?
…何これ?まさかコイツら弱いの?
そう、僕は当然ながらネルも知らなかった。
イモムシはめちゃくちゃ弱い。見た目は恐ろしく、移動速度もかなり速いために誤解されやすいが、分類としては魔獣ですらなく、ただのでっかい虫だそうな。
のちに聞いたところによれば、通称「たまごむし」と呼ばれるほど衝撃に弱く、森に入る樵達でさえ投石一つで撃退するらしい。
ともあれ、弱い事さえわかれば、あと2匹はそこらに落ちていた枯れ木の枝で切り払って片付けることができた。
…紛らわしいんだよ!
全速力で走り回った疲労と、初戦闘が無事に終わった事で、張り詰めていた緊張の糸がぷっつり切れてしまったみたいだね。すっかり力が抜けて歩く気力が出てこない。
「ダメだぁ…お腹空いたし、これ以上動ける気がしない。…短い第二の人生だった…」
「…ちょっとー!何諦めてんのよー!」
どこか離れた所から、いつか聴いたような声が聞こえる。
「早く助けなさいよー!この体勢苦しいんだからー!」
…あぁ、ネルか。忘れてた。そう言えばいつの間に姿がなかったけど。
「あんたが急に向き変えるから!は、や、く、し、ろー!」
声がする方に視線を遣ると、近くの木の枝に引っかかっていた。しかも逆さまになった状態で必死にスカートを押さえているし。
「ちょっと待って、動くのダルい」
「待たないわよっ!これ押さえてるのキツイのっ!私の尊厳のピンチなのよっ!」
…いや、白じゃん。ってゆーかそこ?
「…はぁ。わかったよっと」
僕はどうにか身体を起こすと、ネルを回収しつつ空腹を堪えて再び森を歩く。
そうしてしばらくあてもなく歩いた先で、運良くちょっとした沢に行き当たったんだ。
「良かった。とりあえず水飲もう」
「そうね!あ、お腹壊したりしないから安心して!」
ネル曰く、僕の身体は丈夫になってるそうで、生水でも問題ないらしいから、直接掬って喉を潤す事が出来た。
「あ、魚がいる!あれって食べられるのかな?」
「あら?ほんとね!もちろん大丈夫よ!ユーマ捕まえて?」
「簡単に言うね。結構大変だと思うんだけど…」
「なんとかしなさいよっ!男でしょ!」
「いや、性別関係ないと思うんだけどなぁ…」
とは言っても、お腹も限界だし、ネルに言われなくても獲る気まんまんだったけど。
当然ながらなんの道具も持ち合わせてないけれど、こういう時に役に立つのは記憶だねっ!
僕は周りを見渡して、ちょっと大きめの石を拾い上げた。
「そんな大きな石だと魚が潰れちゃうわよ?もっと小さいのにしなさいよ?」
「いやこれを魚に当てるとか、無理に決まってるでしょうが!これはこうするんだよっと」
持ち上げた石を、流れの中から顔を出す岩に向かって放り投げる。
よし!命中!予想通り岩陰にいたらしい魚が数匹浮き上がって来たので、流されてしまう前に急いで回収すると、近くにあった木の枝で締める。
「へぇ、魔法みたいね!」
「向こうの世界に、こうやってする漁があるんだよ。やったのは初めてだったから上手くいって良かった」
確か、ガチン漁とかなんか言ったっけかな?うろ覚えだけど。
さぁ、異世界初の食事にしよう!
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