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ダイニング イン ザ ダイ【午後8時〜午後9時】

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 ようやく喋れる程度には回復したのか、春日に対して愚痴を漏らす水落。彼には本当に迷惑をかけたし、よくぞ手を離さずにいてくれたものだと思う。

「――生きた心地はしなかったな。まぁ、私も必死になる時くらいあるさ。今後は気をつけよう」

 それに答えつつ立ち上がろうとするが、腰から下に力が入らない。もしかすると腰が抜けた状態とは、このようなことを指すのかもしれない。なんであれ、しばらくは立てそうもなかった。

 深田はというと、エアガンを懐へと仕舞うと、無言のままさっさと廊下の奥に消えてしまった。どうも様子がおかしい。なんと言うか、深田の背中から生気が感じられないのだ。

「まぁ、今回の功労者は陸士長だな――」

 深田の様子に疑問を抱く春日をよそに、水落が陸士長のほうへと視線を移す。そこには俯せになったままの陸士長の姿があった。胴には何本ものロープもどき――カーテンを破って繋げた即席のものが結ばれ、そのロープが正面玄関の支柱に結び付けられていた。また両手に結び付けられた何本もの即席ロープは、水落の腰へと巻き付けられている。よくも短時間でここまで用意できたものだ。この辺りは、晴美やアガサも手伝ったのかもしれない。

「一時はどうなるかと思ったが、やってやれないことはなかったな。なんにせよ、二人が無事で良かった」

 陸士長は満身創痍でありながらも、小さく笑みを浮かべた。

 無事生還。しかしながら、きっと片岡という大切な仲間は――助からない。素人目で見たって明らかだった。あれで助かるかもしれないなどと考えること自体、片岡に失礼だ。

 もう一度立ち上がろうとすると、やはり全身に強い脱力感を感じた。ただ、それと同時に痛みが走り、その勢いで辛うじて立ち上がることができた。

「……春日さん、陸士長。一旦、教室に戻ろう。片岡が心配だ」

 水落も両の頬を手で叩くと、小さな掛け声と共に立ち上がった。罠の張り巡らされた街で行われるゲーム――しかし、片岡が負傷したのは罠が原因ではない。罠を天災だとするのであれば、片岡は人災によって負傷したのである。

 この状況下ならば、まず障害になるはずのない他のプレイヤー。本来ならば手を取り合うはずのプレイヤーに、片岡は傷つけられてしまった。争う理由もなどなく、むしろ協力しなければならない理由はあるのに、このような争いが起きてしまうのは、人間の本質のせいなのか。だからこそ、どれだけ平和を訴えたところで、戦争はなくならないのかもしれない。
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