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ダイニング イン ザ ダイ【午後8時〜午後9時】
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これで助かった――と安心するには早かった。春日に勢いがついていたせいで、想定以上の負荷がかかってしまったのであろう。重さに耐えることができなかったのか、水落の手を掴んでも重力に逆らえない。上半身を乗り出した形だった水落の体が、春日ごと大穴の中へと引きずり込まれる。このままでは、水落まで巻き添いにして大穴へと落下する。落ちても助かるなんてことは、まずあり得ない。
一瞬だけひやりとしたが、春日と水落の体は、ようやく重力へと逆らった。どうやら、水落の体を支えていた陸士長のおかげらしい。
「……陸士長! 絶対に手を離すなよっ!」
水落は春日を落下させまいとするべく、両手で春日の腕を掴む。
「普段からの鍛え方が違うんだ! 言われなくても絶対に離すものか!」
さすがは自衛官。訓練を積んで来ただけのことはある。
「春日さん、今引き上げるから、もう少し辛抱し……」
水落はそこまで言いかけて、春日の足元を見て息をのむ。それにつられるようにして、春日は自分の足元へと視線を移した。それで、ようやく理解した。一度は大穴に引きずり込まれそうになったのには、明確な理由があったのだ。むしろ、これでよく踏ん張ったものだと思う。
――春日の足首に、真っ白な手が絡みついていた。
春日のシナリオ通りならば、大穴の存在を知らないナタ女は春日を追って穴底に真っ逆さまのはずだった。しかし、魔物はとっさに掴んだのだ。地面がないことに気づき、春日の後を追って跳んだ――そして、春日の足首を掴んだのである。
ニタリと笑みを浮かべたナタ女と目が合うと同時に、春日の全身から血の気が引いていく。こんな状態で切り付けられてしまったら、一巻の終わりだ。だが、不幸中の幸いというべきか、ナタ女は両手で春日の足を掴んでいる。どうやらナタは落としてしまったようだ。
「……悪いが、もうそこまで長くはもたないぞ」
陸士長の絞り出したような声が上から降ってくる。どれだけ鍛えていようとも限界というものがあるだろう。三人分の体重をずっと支えているのには無理がある。このままでは全員落下。春日とナタ女だけではなく、水落と陸士長もろとも穴に落下してしまう。落下すれば串刺しはまぬがれない。
「頑張れ陸士長! おい、誰か来てくれっ! このままじゃ……」
春日の腕を掴む水落の手も、小刻みに震え始めた。陸士長と同様に、彼にも限界が訪れようとしているのだ。
「助けてぇ! 誰か来てぇ! 落ちちゃう! 落ちちゃうよぉぉぉぉぉ!」
一方、それをあざ笑うかのようにして、左右へと体を振り始めたナタ女。死に対する恐怖感は、もう壊れてしまっているのであろう。春日達の様子を楽しんでいるかのごとく、その顔には満面の笑みが浮かんでいることだろう。
一瞬だけひやりとしたが、春日と水落の体は、ようやく重力へと逆らった。どうやら、水落の体を支えていた陸士長のおかげらしい。
「……陸士長! 絶対に手を離すなよっ!」
水落は春日を落下させまいとするべく、両手で春日の腕を掴む。
「普段からの鍛え方が違うんだ! 言われなくても絶対に離すものか!」
さすがは自衛官。訓練を積んで来ただけのことはある。
「春日さん、今引き上げるから、もう少し辛抱し……」
水落はそこまで言いかけて、春日の足元を見て息をのむ。それにつられるようにして、春日は自分の足元へと視線を移した。それで、ようやく理解した。一度は大穴に引きずり込まれそうになったのには、明確な理由があったのだ。むしろ、これでよく踏ん張ったものだと思う。
――春日の足首に、真っ白な手が絡みついていた。
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ニタリと笑みを浮かべたナタ女と目が合うと同時に、春日の全身から血の気が引いていく。こんな状態で切り付けられてしまったら、一巻の終わりだ。だが、不幸中の幸いというべきか、ナタ女は両手で春日の足を掴んでいる。どうやらナタは落としてしまったようだ。
「……悪いが、もうそこまで長くはもたないぞ」
陸士長の絞り出したような声が上から降ってくる。どれだけ鍛えていようとも限界というものがあるだろう。三人分の体重をずっと支えているのには無理がある。このままでは全員落下。春日とナタ女だけではなく、水落と陸士長もろとも穴に落下してしまう。落下すれば串刺しはまぬがれない。
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「助けてぇ! 誰か来てぇ! 落ちちゃう! 落ちちゃうよぉぉぉぉぉ!」
一方、それをあざ笑うかのようにして、左右へと体を振り始めたナタ女。死に対する恐怖感は、もう壊れてしまっているのであろう。春日達の様子を楽しんでいるかのごとく、その顔には満面の笑みが浮かんでいることだろう。
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