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動き出した狂気の果てに【午後7時〜午後8時】

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「今はそれよりも犯人について考察すべきじゃない? ヒントも集まりつつあるし、ちょっと意見を聞きたいんだけどいい? 男の中で頭が切れそうなのはあんたくらいしかいないみたいだし」

 寝そべって穴を覗き込んだままという姿勢だった深田が、声のしたほうへと視線をやる。つられて春日も視線をやると、晴美がこちらに向かって歩いてくるところだった。

「お――白。意外や意外に白。職人が一年かけて作り上げたパンツ履いてそうやのに」

 深田の低い視線から、晴美のスカートの中身が丸見えのようだった。春日とてカテゴリーとしては男であり、本能的に視線が行きそうになってしまうが、晴美が慌ててスカートをおさえたのを見て、理性で本能をおさえこむ。

「こ、今度覗いたら金取るわよ!」

 深田の肩を持つわけではないが、姿勢という観点から考えれば、晴美の下着が見えてしまったことは不可抗力だともいえる。そもそも、元はロングスカートだったであろうに、それを短くして着用しているのだ。下着を見られたくないのであれば、スカートを短くしなければいいだけのことだ。

「はぁ? たまたま見えただけなのに金取るとか。だったらあれや、俺のパンツも今ここで見せたるわ。それでおあいこやろが!」

 立ち上がって勢い良くズボンを下ろそうとする深田。春日はそれを見て止めに入る。

「待て、こちらから見せた場合、わいせつぶつ陳列罪になる恐れがある」

 状況が状況であるし、警察に通報しようにも通報できないが、犯罪であることを強調して深田の説得を試みる。それは思った以上の効果を見せ、ズボンから手を離しながら、深田は情けない声を絞り出す。

「なんでや――。こっちがパンツ見たら金取るとか言うくせに、こっちが見せたら見せたで犯罪とか、世の中は明らかに男にとって不利やないか! パンツ見たら駄目、パンツ見せても駄目。だったら俺はパンツをどうしたらええねん!」

 深田の言葉に思わず溜め息を漏らす。全く同じタイミングで晴美も溜め息を漏らし、お互いに顔を見合わせて苦笑い。

「それで、犯人について考察したいとのことだが――」

「えぇ、良くも悪くも【固有ヒント】も集まりつつあるし、今なら犯人を特定することが可能かもしれないと思ってね」

 顔を見合わせたついでに言葉を交わすと、深田が驚いたかのように目を丸くして、春日と晴美の間に割り込んでくる。

「え? 無視? もしかして俺、今無視された?」

 無視をしたわけではなく、なんか扱いが面倒になった――では、言いわけにならないか。
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