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闇の中からの強行突破【午後6時〜午後7時】

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 それにしても、タイミングとは何のタイミングのことを意味しているのだろうか。あの時、迷彩服達がやったことといえば、急に迷彩服が大声を出して、それをスーツ姿が注意したくらいだと思うのだが。

「まさか――あの時」

 そこで比嘉はある考えにいたった。出入り口は正面玄関かグラウンド側のふたつしかない。それ以外の窓という窓には鍵をかけて回った。しかし、正面玄関でもなく、またグラウンド側でもない場所から侵入しようとするのならば、その出入り口は鍵のかかった窓に限られる。

「やはり、頭だけは切れるみたいだな。荒削りな策だったが、見抜かれずに済んで良かったよ」

 そう言ってスーツ姿が大きく溜め息を漏らした。

「二手に別れた俺達は、あらかじめキッチリ三分後に、ある行動を起こすことを決めていた。俺とこいつはグラウンド側の出入り口から一番遠くなりそうなところで待機。俺らと別れた陸士長達はグラウンド側の出入り口に向かった」

 関西弁の妙に勝ち誇った喋り方が気に入らない。何様のつもりなのだろうか。関西弁に迷彩服が続く。

「グラウンド側の出入り口に向かった私達は、恐らく敵が潜んでいるであろうことを承知しながら、あえてグラウンド側の出入り口から中に入った。この時点で私達が最初に姿を現したことになるが、奇襲を受ける可能性は低いと踏んでいた」

 まるであらかじめ台詞が決まっていたかのごとく、交代で口を開く面々。それができるほど、比嘉の知らないところで策略が張り巡らされていたのであろう。今度はスーツ姿の番だ。

「君は良くも悪くも頭が切れる。単独で行動するのであれば、まずはこちらの戦力を見極めてから動くだろうと思ったんだ。私達が二人だけではないことはすでに気づかれていただろうし、だから最初にグラウンド側の出入り口を訪れた私達は、簡単に奇襲を受けたりしないだろうと予測できた。まぁ、陸士長のライフルも牽制力になるだろうから、そちらも慎重になったはずだ」

 見透かされている。いいや、見透かされていた。こんな連中に、こちらの意図を完全に見抜かれていたというのか。これでは完全にピエロではないか。またしてもスーツ姿から迷彩服へと発言権が移った。

「私達はあくまでも囮だった。本命は私達ではなく、もうひとつの別働隊。だから、私はあの時、あらかじめ決めておいた時間に大声を上げたんだ」

 比嘉の思い描いた通りに話が展開してしまう。まさか、こんな荒削りで、探せば粗があるような不十分な策に引っかかったのか。いいや、不十分で現実的ではないからこそ、比嘉の思考にはなかった策ともいえる。
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