上 下
146 / 231
闇の中からの強行突破【午後6時〜午後7時】

21

しおりを挟む
「普通の感覚やったら、どこに罠が仕掛けられているか分からんし、素直にグラウンド側の出入り口から学校の中に入ろうとする。正面玄関側は穴が大きすぎて、飛び越えるにも危ないし、わざわざそんなリスクまで背負って正面玄関側にこだわるやつはおらん。だからこそ、お前はグラウンド側の出入り口付近で俺達のことを待ち伏せしたわけや」

 金髪の男に完全に拘束されてしまう。関西弁の言葉が実に勝ち誇っていて腹立たしかった。

「さて、待ち伏せをするにしても、簡単に見つかるような場所で待ち伏せなんてしないだろう。なんせ、君は私達の戦力を把握していない。こちらが明かりの代わりになるようなものを持っている可能性だってあるし、飛び道具――陸士長のライフル銃のような、遠距離からでも攻撃されてしまう恐れのあるものを持っている可能性だってある。よって――君はどこかに隠れて私達を待ち伏せすることになる。どこに身を潜めるかまでは予測できなかったが、私が見た限りでは、ロッカーの中だとか、階段下の倉庫らしき場所とか、外からの情報がある程度遮断される場所であることは間違いなさそうだった」

 スーツ姿が口を開けば、今度は関西弁が口を開く。一人の人間を寄ってたかって――これはいじめというやつなのではないのか。実に屈辱的であった。確かに、ある程度外部の情報が遮断された階段下の倉庫で待ち伏せしていたわけだが。

「先発隊の俺達は、グラウンド側の出入り口から離れた場所――おおむね真反対側で待機や。そして、お互いに決めておいたタイミングで行動に出たんや」

 全てはこいつらの思い通り。こいつらの手の平の上で踊らされていたと思うと、腹が立って仕方がない。かといって、拘束された状態でジタバタするのも惨めだ。何もできない――何もできない。これまで人をいいように利用するばかりだった自分が、何もできないなんて。

「タイミングはバッチリだったな。上手くいったのは陸士長の時間感覚のおかげだ。他の人間ならタイミングを外していただろうからな」

 一体、何のことを言っているのだろうか。そして、自分のあずかり知らぬところで何が起きていたのか。ここまでくると逆に気になる。

「ぴったり三分だったな。こっちは時計があったから時間をキッチリ計れたけど、そっちは感覚だけだろ? やっぱ自衛隊って凄ぇな」

 頭上から声がする。察するに金髪の男のほうが口を開いたのであろう。関西弁も金髪の男に加わり、もはや拘束は絶対に解けないものになっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

月影館の呪い

葉羽
ミステリー
高校2年生の神藤葉羽(しんどう はね)は、名門の一軒家に住み、学業成績は常にトップ。推理小説を愛し、暇さえあれば本を読みふける彼の日常は、ある日、幼馴染の望月彩由美(もちづき あゆみ)からの一通の招待状によって一変する。彩由美の親戚が管理する「月影館」で、家族にまつわる不気味な事件が起きたというのだ。 彼女の無邪気な笑顔に背中を押され、葉羽は月影館へと足を運ぶ。しかし、館に到着すると、彼を待ち受けていたのは、過去の悲劇と不気味な現象、そして不可解な暗号の数々だった。兄弟が失踪した事件、村に伝わる「月影の呪い」、さらには日記に隠された暗号が、葉羽と彩由美を恐怖の渦へと引きずり込む。 果たして、葉羽はこの謎を解き明かし、彩由美を守ることができるのか? 二人の絆と、月影館の真実が交錯する中、彼らは恐ろしい結末に直面する。

密室島の輪舞曲

葉羽
ミステリー
夏休み、天才高校生の神藤葉羽は幼なじみの望月彩由美とともに、離島にある古い洋館「月影館」を訪れる。その洋館で連続して起きる不可解な密室殺人事件。被害者たちは、内側から完全に施錠された部屋で首吊り死体として発見される。しかし、葉羽は死体の状況に違和感を覚えていた。 洋館には、著名な実業家や学者たち12名が宿泊しており、彼らは謎めいた「月影会」というグループに所属していた。彼らの間で次々と起こる密室殺人。不可解な現象と怪奇的な出来事が重なり、洋館は恐怖の渦に包まれていく。

糾弾ホームルーム! ―ぼくたち、わたしたちの主張―

鬼霧宗作
ミステリー
 もし、復讐を合法的に行えるのであれば、どうしますか?  罪に問われず、合法的であれば、迷いなく憎い人を殺しますか?  今の日本よりかけ離れた大日本帝国において、とある法案が施行されようとしています。  それは、特定の条件を満たした人に、合法的な復讐を認めるという狂った法案。大日本帝国政府は、ある学校のあるクラスを、法案のモデルケースとして選んだのです。あまりにも残酷で、あまりにも非情な決定でした。  そもそも世の中が狂っていて、それに抗える者など誰もいない。大々的に全国放送される思春期の男女の欺き合い。  これは救いのない物語。ごくごく普通の、どこにでもあるようなクラスを襲った非日常。  ――目をそらすな。例えそれが真実であっても。  生死をかけた糾弾ホームルームが始まる。 【#1 毒殺における最低限の憶測】《完結》 【#2 ぼくとわたしと禁断の数字】《完結》 【#3 罠と死体とみんなのアリバイ】《連載中》  二度目の【糾弾ホームルーム】からの生還を果たした2年4組は、自分達の立場に理不尽さを感じ、そして反撃へと打って出ようとする。  しかし、そんな最中、全員に絶対的なアリバイがある中、またしても犠牲者が出てしまう。  次々と減っていくクラスメイト。その団結を揺るがすように起きてしまった三度目の事件。  次第に狂気を帯びゆく世界に、2年4組は何をみるのか。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作
ミステリー
 IT企業の経営者である司馬龍平は、見知らぬ部屋で目を覚ました。メイクをするための大きな鏡。ガラステーブルの上に置かれた差し入れらしきおにぎり。そして、番組名らしきものが書かれた台本。そこは楽屋のようだった。  司馬と同じように、それぞれの楽屋で目を覚ました8人の男女。廊下の先に見える【スタジオ】との不気味な文字列に、やはり台本のタイトルが頭をよぎる。  ――クイズ 誰がやったのでSHOW。  出題される問題は、全て現実に起こった事件で、しかもその犯人は……集められた8人の中にいる。  ぶっ飛んだテンションで司会進行をする司会者と、現実離れしたルールで進行されるクイズ番組。  果たして降板と卒業の違いとは。誰が何のためにこんなことを企てたのか。そして、8人の中に人殺しがどれだけ紛れ込んでいるのか。徐々に疑心暗鬼に陥っていく出演者達。  一方、同じように部屋に監禁された刑事コンビ2人は、わけも分からないままにクイズ番組【誰がやったのでSHOW】を視聴させれることになるのだが――。  様々な思惑が飛び交うクローズドサークル&ゼロサムゲーム。  次第に明らかになっていく謎と、見えてくるミッシングリンク。  さぁ、張り切って参りましょう。第1問!

双極の鏡

葉羽
ミステリー
神藤葉羽は、高校2年生にして天才的な頭脳を持つ少年。彼は推理小説を読み漁る日々を送っていたが、ある日、幼馴染の望月彩由美からの突然の依頼を受ける。彼女の友人が密室で発見された死体となり、周囲は不可解な状況に包まれていた。葉羽は、彼女の優しさに惹かれつつも、事件の真相を解明することに心血を注ぐ。 事件の背後には、視覚的な錯覚を利用した巧妙なトリックが隠されており、密室の真実を解き明かすために葉羽は思考を巡らせる。彼と彩由美の絆が深まる中、恐怖と謎が交錯する不気味な空間で、彼は人間の心の闇にも触れることになる。果たして、葉羽は真実を見抜くことができるのか。

子成神社殺人事件~ダブったよ2024~

八木山
ミステリー
■イントロダクション ここは某県の山中の村にひっそりと聳え立つ子成神社だ。 蛭子なる神を祀った寺には、今日も何人かの参拝客が訪れる。 バスは一日一度しか来ないため、神主である紅丸・藍丈兄弟の屋敷に参拝客は集っていた。 そこで事件が起きる。 夜中、屋敷の両脇にそびえる塔の片割れが燃え上がったのだ。 中からは黒焦げになった紅丸の死体が見つかる。 容疑者は全員。 調査中に起きる悲劇。 混沌とした擦り付け合い。 全員が裏を抱えたイカれた設定。 主人公はこれを読んでいるあなたってことになるんじゃないでしょうか。 ■登場人物 子成紅丸・・・神主の双子の片割れ。赤の塔で焼死体となって見つかる。酒飲みで和風かぶれ。 子成藍丈・・・神主の双子の片割れ。酒飲みで西洋かぶれ。 紫  野・・・住み込みで働く若い巫女の一人。3人の中ではもっとも古株で最年長。 鳩  羽・・・住み込みで働く若い巫女の一人。料理は主に彼女が担当している。 彩  芽・・・住み込みで働く若い巫女の一人。もっとも新入り。 黒木蔵人・・・参拝客の一人。30前後の物静かなサラリーマン。 月白 雪・・・参拝客の一人。還暦を超えている老婦。 老竹梅松・・・参拝客の一人。明るい金髪に象徴される、軽薄な若者。 柳 茶凛・・・参拝客の一人。山吹の連れ添いの若い女性。 山吹悠人・・・参拝客の一人。柳の連れ添いの若い男性。二人は付き合っていない。 ■注意事項 画像の一部にDALL-Eと五百式立ち絵メーカーを使用しています。

処理中です...