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闇の中からの強行突破【午後6時〜午後7時】
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この程度でねじ伏せられるとでも思っているのだろうか。しかしながら、まだ相手の戦力が未確定。動くのはもう少し様子を見てからでも遅くはない。
「もう一度言うぞ。武器になりそうなものを捨てて投降しろ。これが最後の忠告だ」
迷彩服がそう言って、改めて銃口を突きつけてくる。けれども、この暗闇の中で正確な射撃はできないはず。そして、ごくごく一般的な感覚で考えれば、狙いが定まらない状況で射撃をすることはあり得ない。単純に弾が外れるだけならまだしも、下手をすると当たってしまいかねないからだ。相手は事態を収束させたいだけであって、比嘉を殺したいわけではない。ゆえに、万が一を考えて闇雲に発砲するなんて真似はしないだろう。
「残念ながら、その忠告は聞き入れられない。なんせ、初対面で銃口を向けてくるような危険人物の言うことだからな」
状況的に追い詰められているような雰囲気になってはいるが、実のところまだまだ覆すチャンスはある。上手くいけば迷彩服達を懐柔することさえ可能かもしれない。
「――なんだと?」
「だってそうだろう? なんで俺が初対面のお前に銃口を突きつけられなきゃならない?」
迷彩服の言葉に間髪入れずに返してやる。ここから話を面白い方向へと持って行ってやろう。比嘉は今の状況を完全に楽しんでいた。
「それは――」
「もしかしてぇ、その女共が言っていることは狂言なのかもしれない。どうして、そこの女共を真っ先に信用できるのか疑問だぜ」
迷彩服と比嘉は初対面である。しかし、それと同時に女共とも初対面だ。すなわち、現在にいたるまでのプロセスというものを迷彩服達は知らない。ただ単純に要請を受けて、彼女達の味方に回ったに過ぎない。
「はっきり言ってやるとな、俺はそこの女共に殺されそうになったんだよ。殺らなきゃ殺られると思ったから、仕方がなくこんなことをしてるだけなんだ。もっと平和的な解決法があるなら、迷わずそっちを選ぶがな」
どちらが善で、どちらが悪か。当事者同士ならばそれは明らか。だが、第三者からしてみれば、簡単に善悪の区別はできない。そこを狙って揺さぶりをかける。
「ちょっと! なにふざけたこと言ってるの? あんたが私達に何をしようとしたか――」
「おーおー、怖いねぇ! 被害者面してそいつらを騙そうとするわけか!」
高飛車な女が反論してくるが、しかし焦れば焦るほど、その言葉の信憑性が低くなる。こちらは逆に淡々と冷静に返してやる。すると、なぜかこちらのほうが正しいことを言っているような印象になる。
「もう一度言うぞ。武器になりそうなものを捨てて投降しろ。これが最後の忠告だ」
迷彩服がそう言って、改めて銃口を突きつけてくる。けれども、この暗闇の中で正確な射撃はできないはず。そして、ごくごく一般的な感覚で考えれば、狙いが定まらない状況で射撃をすることはあり得ない。単純に弾が外れるだけならまだしも、下手をすると当たってしまいかねないからだ。相手は事態を収束させたいだけであって、比嘉を殺したいわけではない。ゆえに、万が一を考えて闇雲に発砲するなんて真似はしないだろう。
「残念ながら、その忠告は聞き入れられない。なんせ、初対面で銃口を向けてくるような危険人物の言うことだからな」
状況的に追い詰められているような雰囲気になってはいるが、実のところまだまだ覆すチャンスはある。上手くいけば迷彩服達を懐柔することさえ可能かもしれない。
「――なんだと?」
「だってそうだろう? なんで俺が初対面のお前に銃口を突きつけられなきゃならない?」
迷彩服の言葉に間髪入れずに返してやる。ここから話を面白い方向へと持って行ってやろう。比嘉は今の状況を完全に楽しんでいた。
「それは――」
「もしかしてぇ、その女共が言っていることは狂言なのかもしれない。どうして、そこの女共を真っ先に信用できるのか疑問だぜ」
迷彩服と比嘉は初対面である。しかし、それと同時に女共とも初対面だ。すなわち、現在にいたるまでのプロセスというものを迷彩服達は知らない。ただ単純に要請を受けて、彼女達の味方に回ったに過ぎない。
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「ちょっと! なにふざけたこと言ってるの? あんたが私達に何をしようとしたか――」
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