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闇の中からの強行突破【午後6時〜午後7時】

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 今飛び出してしまえば、簡単に殺れてしまうだろう。しかし、ライフル銃が正真正銘の偽物であるという保障はない。あちらの戦力が明らかになるまでは、とりあえず身を潜めて様子を見るべきだ。

 迷彩服とスーツ姿は、比嘉が隠れている倉庫の真上――すなわち、階段をのぼる。ふたつの足音が頭上に響き、そして比嘉は笑みを浮かべた。

 ――楽しんでいる自分がいる。この状況にワクワクしている自分がいる。人数的な都合だけで考えれば、こちらのほうが明らかに不利。しかし、だからこそ面白い。限られた戦力で、いかにして相手の戦力を削ぐのか。どのようにして相手の裏をかくのか。策略を張り巡らせるだけで実に楽しい。異常者……という例えも、決して否定するつもりはなかった。

 迷彩服とスーツ姿の足音が次第に遠ざかる。現状、確認できたのは二人だけ。しかし、窓から連中の姿を確認した際、正確な人数は把握できていないが、少なくとも二人だけということはなかった。まだ仲間がいるはずだ。

 戦況を支配するためには、まずは相手の戦力を把握する必要がある。把握できない戦力が校内をうろつくなんて、想像しただけでゾッとする。

 ――どれくらい経っただろうか。待てども待てども、あの迷彩服とスーツ姿以外、誰も勝手口に姿を現さない。相手の戦力の把握も大切だが、時間をかけすぎてしまうと、女共と迷彩服達が合流してしまう。下手すると、もう合流してしまったのかもしれない。個別に撃破することは簡単でも、それが集団になった途端に難しくなる。ここで本当に待ち続けるべきなのであろうか。急に不安になる。

 あちら側には、少なくとも迷彩服とスーツ姿の他にも仲間がいた。だからこそ、こちらは相手の戦力を把握したくて、こうして潜伏を続けている。しかし、そこで比嘉はある可能性にたどり着いた。すなわち、比嘉のそのような心理を逆手に取られたのではないかと――。

 学校の出入り口は実質上でグラウンド側の出入り口のみとなる。だから、その付近で待ち伏せをされる可能性は予測できるはず。そこで、まずはライフル銃を持った迷彩服を先行させた。比嘉はそれを偽物かモデルガンの類であると踏んだのであるが、しかし確信を得るまでにはいたらなかった。ゆえに安易に動かずに様子を見ることにした。様子を見ることにしたのは、まだ他の人間が校内に侵入してくると考えたからだ。

 今の比嘉が恐れるべきは、把握できていない戦力が校内に存在すること。勝手口付近に潜伏したのは、相手の戦力を完全に把握するためだ。まさか、そこまで見越されていたというのか――。嫌な予感はさらに肥大する。
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