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闇の中からの強行突破【午後6時〜午後7時】

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 春日はいたって冷静だった。まず対抗し得る武器が極端に少ない。陸士長のレプリカライフル辺りが威嚇に使えそうではあるが、なんせ学校の中は真っ暗だ。相手にライフル銃を視認してもらわねば、威嚇として成立しない。確実に明かりを確保できるとは限らないことも考えると、何の策略もなしに学校に突入するのは危険だ。

「でも、人数的にはこちらが多いわけだから、力押しでどうにかなりそうにも思えるんだけど」

 いつしか水落は間抜けなピエロになってしまっていた。同じ立場の参加者同士で対立するなんて信じられない――。だからこそ、一刻も早く助けに向かって事実を確認したい。そのような考えが優先してしまい、現実的に状況を見ている春日の意見に、なにかと食らいつこうとする。どう考えても春日の見解のほうが正しいのだが。

「確かに人数的にはこちらが有利だ。力押しでなんとかなるということも否定はしない。しかし、私達の中の誰かが、刃物を持った男に刺されてしまうかもしれない。致命傷を逃れられればまだしも、それが原因で死んでしまう可能性だってある。ここにいる誰かが傷つくリスクがある以上、例え力押しが有効であっても、私はそれを実行しようとは思わない。水落――君の気持ちは何となく分かるが、ミイラ取りがミイラになっては意味がない。少し冷静になれ」

 学校の中で誰かが助けを求めている。しかし、明確なプランもなしに助けに向かうことは危険。仮に力押しでどうにかなる状況であっても、下手をすれば誰かが傷つく――もしくは死んでしまうリスクがある。身動きが取れないことが悔しかった。

「――言ってしまえば、明確なプランがあれば問題ないってことやろ? ちょっと耳貸せ。俺に考えがある」

 周囲に漂いつつあった良からぬ空気を払拭したのは、意外なことに深田だった。何やらアイディアがあるらしく、口調が少しばかり誇らしげだ。自然と全員が深田の周りに集まるような形になった。

「ええか? まずは――」

 深田の策は、実に突拍子のないものだった。思わず浜野が声を上げる。

「そんなの、リスクが高すぎる! お、俺は外で待ってるからな!」

 確かに深田の策は突拍子もない。しかしながら、もしかしてうまいことやれば――と思わせる不思議な力があった。その証拠に、慎重な姿勢を見せていた春日が頷く。

「ふむ、荒削りだがプランとしては悪くない」

 外で待つ――という、浜野の自分勝手な言い分には、誰も触れはしなかった。ほんの短い付き合いだが、彼の自己中心的な性格は分かっていたし、いちいち付き合っていたら疲れそうだ。

「だったら助けに行くで! 女子を――女子2人を!」

 学校を取り囲む不穏な空気。それを払拭するかのごとく、下心満載の様子で鼻の下を伸ばした深田を見て、陸士長が大きく溜め息を漏らしたのであった。

 夜の学校での攻防戦が始まる――。
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