123 / 231
暴走するモラルと同調圧力【午後5時〜午後6時】
21
しおりを挟む
このゲームにおいて障害となるのは、街に張り巡らされた罠だけだと思っていた。他の参加者と力を合わせ、犯人役を特定すればいいものだとばかり思っていた。しかし、あの男に会って、アガサの中での認識が変わった。障害となるのは罠だけではない。人もまた、時として障害となり得るのだ。脅威にもなり得るし、罠よりも危険なものにもなる。下手をすると罠なんかよりも、人のほうがよっぽど危険なのかもしれない。
改めて初っ端に件の男と遭遇してしまったことに背筋を冷やしつつ、その場に晴美がいたことを感謝するアガサ。もし晴美がいなかったら、自分はどうなっていたか分からない。そんなことを考えつつ、何の気なしに窓の外に視線をやった時のことである。
正確な時間は分からないが、すでに辺りは薄暗くなっている。もうしばらくすれば、外は漆黒の闇に包まれる――そんなぎりぎりの視界の中に、アガサは人影を見つけた。
「せ、瀬戸さん――あれ見てください」
アガサは窓のほうへと歩み寄り、薄暗がりの中の人影を指差した。しかも、人影はひとつだけではない。どうやら、集団になって行動している人達がいるようだ。
「だから晴美でいいってば……」
アガサの言葉に窓際までやってきた晴美は、窓の外を見て目を丸くする。
「他の参加者ね――集団行動をしている辺り、まともな人達みたいね」
集団行動ができるということは、互いに暗黙のルールを守り、ある程度の協調性を持っているということ。少なくとも件の男よりかはまともな人達である可能性が高い。
もしこれが一階の教室であったら、人影の存在すら気づかなかったかもしれない。そこまで晴美が考えていたかは不明だが、三階の教室に籠城して正解だったといえよう。人影の集団は学校を目指しているようで、それが近づくにつれて人影がはっきりと認識できるようになった。
スーツに身を包んだ人。今時にしては珍しく、髪の毛を金に染めている人。迷彩服を着た人は自衛隊だろうか。確認できる限りでは、ブレザーを着ている学生風の人までいる。学生風の人に肩を借りているツナギ姿の人は、足を挫きでもしたのだろうか。その集団から少し離れて、丸々と太った人が苦しげに歩いていた。正しく多種多様な人達が集まったという感じだ。
「ざっと数えただけでも6人いるわね。私とアガサを含めれば8人。亡くなった人達の【固有ヒント】もあるから、全体の半分以上の【固有ヒント】が集まることになる。あの男のこともあるから、彼らに協力をあおいで損はないわ」
改めて初っ端に件の男と遭遇してしまったことに背筋を冷やしつつ、その場に晴美がいたことを感謝するアガサ。もし晴美がいなかったら、自分はどうなっていたか分からない。そんなことを考えつつ、何の気なしに窓の外に視線をやった時のことである。
正確な時間は分からないが、すでに辺りは薄暗くなっている。もうしばらくすれば、外は漆黒の闇に包まれる――そんなぎりぎりの視界の中に、アガサは人影を見つけた。
「せ、瀬戸さん――あれ見てください」
アガサは窓のほうへと歩み寄り、薄暗がりの中の人影を指差した。しかも、人影はひとつだけではない。どうやら、集団になって行動している人達がいるようだ。
「だから晴美でいいってば……」
アガサの言葉に窓際までやってきた晴美は、窓の外を見て目を丸くする。
「他の参加者ね――集団行動をしている辺り、まともな人達みたいね」
集団行動ができるということは、互いに暗黙のルールを守り、ある程度の協調性を持っているということ。少なくとも件の男よりかはまともな人達である可能性が高い。
もしこれが一階の教室であったら、人影の存在すら気づかなかったかもしれない。そこまで晴美が考えていたかは不明だが、三階の教室に籠城して正解だったといえよう。人影の集団は学校を目指しているようで、それが近づくにつれて人影がはっきりと認識できるようになった。
スーツに身を包んだ人。今時にしては珍しく、髪の毛を金に染めている人。迷彩服を着た人は自衛隊だろうか。確認できる限りでは、ブレザーを着ている学生風の人までいる。学生風の人に肩を借りているツナギ姿の人は、足を挫きでもしたのだろうか。その集団から少し離れて、丸々と太った人が苦しげに歩いていた。正しく多種多様な人達が集まったという感じだ。
「ざっと数えただけでも6人いるわね。私とアガサを含めれば8人。亡くなった人達の【固有ヒント】もあるから、全体の半分以上の【固有ヒント】が集まることになる。あの男のこともあるから、彼らに協力をあおいで損はないわ」
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
Desire -デザイア-
409号室
BL
18禁BLサスペンス作品。
殺人という大罪を犯した美しき堕天使と、荒んだ心を抱きながら罪人を追いかける刑事……。
W大学医学部。特待生で、成績優秀、さらに、その美貌から、学内にファンクラブを持つ程の人気を誇りながら、人との交流を避け、感情を表に表さないミステリアスな青年・藤代十夜は、論文が認められ、更に、アルバイトの家庭教師先の元生徒で、都内有数の大病院の一人娘・香野 風実花 との婚約をし、順風満帆な生活を送っていたが、殺人を犯してしまう。
一方、S西署捜査一課に所属する刑事・本平 和維は、十年前にたった一人の妹が、暴漢に殺害されたことがきっかけで刑事になった。
もともとは、正義感に燃えた優秀な警官だったが、妹を女性として見ていたことに気づいてからは、自らを嫌悪し、幼馴染みで、 キャリア組の女警視・中能登桐日との交際を絶ち、荒んだ心を抱くようになっていた。
たった一人の肉親を殺された刑事と、たった一人の肉親を殺した青年。
この二人が出会った時、運命の歯車は、音を立てて軋み始めた。
イラスト:Yukiya様
クイズ 誰がやったのでSHOW
鬼霧宗作
ミステリー
IT企業の経営者である司馬龍平は、見知らぬ部屋で目を覚ました。メイクをするための大きな鏡。ガラステーブルの上に置かれた差し入れらしきおにぎり。そして、番組名らしきものが書かれた台本。そこは楽屋のようだった。
司馬と同じように、それぞれの楽屋で目を覚ました8人の男女。廊下の先に見える【スタジオ】との不気味な文字列に、やはり台本のタイトルが頭をよぎる。
――クイズ 誰がやったのでSHOW。
出題される問題は、全て現実に起こった事件で、しかもその犯人は……集められた8人の中にいる。
ぶっ飛んだテンションで司会進行をする司会者と、現実離れしたルールで進行されるクイズ番組。
果たして降板と卒業の違いとは。誰が何のためにこんなことを企てたのか。そして、8人の中に人殺しがどれだけ紛れ込んでいるのか。徐々に疑心暗鬼に陥っていく出演者達。
一方、同じように部屋に監禁された刑事コンビ2人は、わけも分からないままにクイズ番組【誰がやったのでSHOW】を視聴させれることになるのだが――。
様々な思惑が飛び交うクローズドサークル&ゼロサムゲーム。
次第に明らかになっていく謎と、見えてくるミッシングリンク。
さぁ、張り切って参りましょう。第1問!
失踪した悪役令嬢の奇妙な置き土産
柚木崎 史乃
ミステリー
『探偵侯爵』の二つ名を持つギルフォードは、その優れた推理力で数々の難事件を解決してきた。
そんなギルフォードのもとに、従姉の伯爵令嬢・エルシーが失踪したという知らせが舞い込んでくる。
エルシーは、一度は婚約者に婚約を破棄されたものの、諸事情で呼び戻され復縁・結婚したという特殊な経歴を持つ女性だ。
そして、後日。彼女の夫から失踪事件についての調査依頼を受けたギルフォードは、邸の庭で謎の人形を複数発見する。
怪訝に思いつつも調査を進めた結果、ギルフォードはある『真相』にたどり着くが──。
悪役令嬢の従弟である若き侯爵ギルフォードが謎解きに奮闘する、ゴシックファンタジーミステリー。
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)
糾弾ホームルーム! ―ぼくたち、わたしたちの主張―
鬼霧宗作
ミステリー
もし、復讐を合法的に行えるのであれば、どうしますか?
罪に問われず、合法的であれば、迷いなく憎い人を殺しますか?
今の日本よりかけ離れた大日本帝国において、とある法案が施行されようとしています。
それは、特定の条件を満たした人に、合法的な復讐を認めるという狂った法案。大日本帝国政府は、ある学校のあるクラスを、法案のモデルケースとして選んだのです。あまりにも残酷で、あまりにも非情な決定でした。
そもそも世の中が狂っていて、それに抗える者など誰もいない。大々的に全国放送される思春期の男女の欺き合い。
これは救いのない物語。ごくごく普通の、どこにでもあるようなクラスを襲った非日常。
――目をそらすな。例えそれが真実であっても。
生死をかけた糾弾ホームルームが始まる。
【#1 毒殺における最低限の憶測】《完結》
【#2 ぼくとわたしと禁断の数字】《完結》
【#3 罠と死体とみんなのアリバイ】《連載中》
二度目の【糾弾ホームルーム】からの生還を果たした2年4組は、自分達の立場に理不尽さを感じ、そして反撃へと打って出ようとする。
しかし、そんな最中、全員に絶対的なアリバイがある中、またしても犠牲者が出てしまう。
次々と減っていくクラスメイト。その団結を揺るがすように起きてしまった三度目の事件。
次第に狂気を帯びゆく世界に、2年4組は何をみるのか。
キラースペルゲーム
天草一樹
ミステリー
突如見知らぬ館に監禁された十三人の男女。彼らはそれぞれ過去に完全犯罪を成し遂げた者たちであり、それゆえにとある実験兼ゲームの栄誉ある被験者として選ばれた。そのゲームの名は『キラースペルゲーム』。現代の科学では解明されていない、キラースペルという唱えるだけで人を殺せる力を与えられた彼らは、生き残りが三人となるまで殺し合いをするよう迫られる。全員が一筋縄ではいかない犯罪者たち。一体誰が生き残り、誰が死ぬのか。今ここに究極のデスゲームが幕を開ける。
闇の残火―近江に潜む闇―
渋川宙
ミステリー
美少女に導かれて迷い込んだ村は、秘密を抱える村だった!?
歴史大好き、民俗学大好きな大学生の古関文人。彼が夏休みを利用して出掛けたのは滋賀県だった。
そこで紀貫之のお墓にお参りしたところ不思議な少女と出会い、秘密の村に転がり落ちることに!?
さらにその村で不可解な殺人事件まで起こり――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる