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暴走するモラルと同調圧力【午後5時〜午後6時】
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両脇を掴まれたかと思ったら、突如として重力がなくなった。投げ飛ばされたのだなと気づいた時には地面がすでに目前まで迫っており、受け身を取ることすらできなかった。胸の辺りを砂利道へと強かにぶつけ、そのまま少しばかり転がった。
「村山君!」
叫び声に近いような声で村山の名が呼ばれる。それに鼓舞されるかのごとく頭をもたげると、真子がこちらへと駆け寄ってくるところだった。その後ろに見える磯部が駆け出したのが見えた。
「い、磯部を――。あいつを追うんだ!」
半身を起こし、手で追い払うようなニュアンスを出す村山。磯部が境界線を越えてしまったら、問答無用で全滅なのだ。磯部というたった一人の人間の、あまりにも自分勝手な行動で、多くの人が死んでしまうかもしれない。絶対に止めなければならないだろう。具体的な手段は模索できていないし、村山でさえ軽くいなされてしまったのだから、真子が磯部を止められるとは思えない。けれども、どちらかがやるしかないのだ。そうでなければ、全滅する。
村山は地面に転がった自身のショルダーバッグへと視線を移した。自分に配布された物資は、100万の束がちょうど10束が――合計で1000枚のお札だった。もっとも、本物に似せてはいるものの、描かれている人物は村山の知っている人物と違う。恐らく偽物なのだと思う。もっとも、仮に本物だとしても、現状では何の役にも立たないが。
真子が駆け出すも、磯部の速さには追いつけないであろう。このままでは磯部を見失ってしまう。ならば……駄目で元々、磯部に交渉を持ちかけるしかない。
「待ってくれ! 金で――金で話をつけよう! とりあえず、こっちに戻ってきて欲しい!」
世の中において金とは絶対的な魔力を持っている。いざとなった時――例えば大災害だとか、今のような状況ではまるで役に立たないくせに、それ欲しさに人を殺すやつだっているし、誰もがそれを手に入れるために働き、自分の生活を維持している。特に会社の経営者である磯部のような人間は、きっと金に対しても神経質なところがあるだろう。
磯部にとって利益があり、そしてこちらがわにも利益があるかのように見せかけて交渉を成立させる。大人相手にどこまで通用するかは分からないが、力で勝てないのであれば、もはや頭で勝負するしかなかった。
村山の声が届いたのか、遥か遠くまで離れたところで磯部が振り返る。
「高校生風情が持っている金なんて、たかがしれてると思うがね!」
「村山君!」
叫び声に近いような声で村山の名が呼ばれる。それに鼓舞されるかのごとく頭をもたげると、真子がこちらへと駆け寄ってくるところだった。その後ろに見える磯部が駆け出したのが見えた。
「い、磯部を――。あいつを追うんだ!」
半身を起こし、手で追い払うようなニュアンスを出す村山。磯部が境界線を越えてしまったら、問答無用で全滅なのだ。磯部というたった一人の人間の、あまりにも自分勝手な行動で、多くの人が死んでしまうかもしれない。絶対に止めなければならないだろう。具体的な手段は模索できていないし、村山でさえ軽くいなされてしまったのだから、真子が磯部を止められるとは思えない。けれども、どちらかがやるしかないのだ。そうでなければ、全滅する。
村山は地面に転がった自身のショルダーバッグへと視線を移した。自分に配布された物資は、100万の束がちょうど10束が――合計で1000枚のお札だった。もっとも、本物に似せてはいるものの、描かれている人物は村山の知っている人物と違う。恐らく偽物なのだと思う。もっとも、仮に本物だとしても、現状では何の役にも立たないが。
真子が駆け出すも、磯部の速さには追いつけないであろう。このままでは磯部を見失ってしまう。ならば……駄目で元々、磯部に交渉を持ちかけるしかない。
「待ってくれ! 金で――金で話をつけよう! とりあえず、こっちに戻ってきて欲しい!」
世の中において金とは絶対的な魔力を持っている。いざとなった時――例えば大災害だとか、今のような状況ではまるで役に立たないくせに、それ欲しさに人を殺すやつだっているし、誰もがそれを手に入れるために働き、自分の生活を維持している。特に会社の経営者である磯部のような人間は、きっと金に対しても神経質なところがあるだろう。
磯部にとって利益があり、そしてこちらがわにも利益があるかのように見せかけて交渉を成立させる。大人相手にどこまで通用するかは分からないが、力で勝てないのであれば、もはや頭で勝負するしかなかった。
村山の声が届いたのか、遥か遠くまで離れたところで磯部が振り返る。
「高校生風情が持っている金なんて、たかがしれてると思うがね!」
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