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狂気には凶器を【午後4時〜午後5時】

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「ポイントとなるのは、それぞれの袋から取り出す枚数が異なること。仮に1枚だけ取り出した【A】の袋こそが9グラムクッキーの袋だった場合、総重量は何グラムにならねばならない?」

 その問いかけは、片岡と浜野に対して投げかけられているような気がした。すでに答えにたどり着いたという妙な優越感のようなものが、そう思わせるのかもしれない。

「えーっと、15枚のうち1枚が9グラムで、残りの14枚は10グラムだから、合計で149グラムですよね? ――あぁ、そうか。そういうことか」

 春日の問いかけに答えた片岡も、ようやく理解したようだった。すなわち、袋から取り出す枚数が異なることによる総重量の変動を利用するのだ。

「どうやら分かってもらえたようだな。つまりはそういうこと。総重量が149グラムになるのは、1枚だけクッキーを取り出した【A】が9グラムクッキーだった時だけなんだ。同様に、他の袋が9グラムクッキーだった場合、総重量がどのように変動するのか考えてみると、より分かりやすいだろう」

 仮に2枚のクッキーを取り出した【B】の袋が、9グラムクッキーの詰められた袋だったとする。そうした場合、15枚のうち2枚が9グラムクッキーとなり、2枚で18グラムとなる。残りの13枚が10グラムクッキーなのだから、15枚の総重量は148グラムとなる。同じように【C】ならば9グラムクッキーは3枚となり、10グラムクッキーは12枚。総重量は147グラム。続けて【D】ならば4枚が9グラムクッキーで、11枚が10グラムクッキーだから、総重量は146グラム。最後に【E】は5枚が9グラムクッキーで、10グラムクッキーは10枚となるから、総重量は145グラムとなる。

「それぞれの袋から取り出す枚数が異なれば、必ず端数も異なってくる。この差を利用すれば、何枚クッキーを取り出したかで9グラムクッキーの袋が判明する」

 水落が補足すると、春日は実に満足げに頷いた。

「その通り。つまり、計量器を使うのは一度だけでいい。それぞれの袋から取り出した総数15枚のクッキーをのせるだけで、どの袋が9グラムクッキーの袋なのか見抜くことができるからな。よって、答えは【1】だ」

 浜野の目の前にあるタグ付きのピアノ線。天井から吊り下げられた【トラッペ君】のクイズの答えは、今さっき春日が導き出した【1】で間違いないはず。けれども、浜野は呼吸をやや荒くしながら、じっと水落達のほうを見据えてきた。
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