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駆けよペーパードライバー【午後3時〜午後4時】
駆けよペーパードライバー【午後3時〜午後4時】1
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【午後3時5分 片岡久志 宮垣アーケード跡地】
鍵を回す。エンジンが動きかけるが、しかし動かない。もう一度だけ鍵を回す。でもやっぱり、エンジンはかかりそうでかからない。助手席に乗り込んだ片岡久志には、ただただ運転席の彼がエンジン始動を試みる姿を見守るしかなかった。
「すぐるさん、まだですか!」
片岡はルームミラーに視線をやり、後ろを確認する。二人が乗り込んだ車が、たまたま軽トラックだったということもあり、無駄を省いたフォルムのおかげで後方確認もばっちりとできた。
まだ遥かに後方ではあるが、大きな音を立てながら勢い良く地面が崩れているようだった。その証拠に、まるで透明人間がなぎ倒しているかのごとく、電柱が傾き、アーケードで対面同士になっている商店らしきものも、中心に向かって傾く。地面が次々と陥没しているとしか考えられない状況だった。
「これ、あれやん? ゾンビ映画とかで都合良くエンジンかからんやつと違う? ぎりぎりまでエンジンかからんやつ!」
何度もセルを回しながらなかば絶叫に近い声を上げた男は深田卓という。そんな彼と片岡が合流したのは、アーケードの入り口辺りだった。何が起きているのか分からず、どうしたものかと途方に暮れていた時のことである。
互いに軽く自己紹介をして、SGTの【固有ヒント】を共有した。けれども、あまりにも非現実的な状況に、とにもかくにも救助を待つべきと深田が主張。最初は片岡もそれに従った。けれども、待てども救助なんてものはこないし、じっとしていても死亡者のアナウンスが流れるだけだった。もちろん、死亡者の【固有ヒント】は転送されたが、なんだか死亡者が出るのを息を潜めて待っているかのような気がして、とにもかくにも動くことにした。そして片岡は、嫌がる深田を引っ張って商店街――アーケードらしき場所へと足を踏み入れたのだった。商店街なら色々な物資が手に入るかもしれないと誰もが考える。ならば、他のプレイヤー達も物資を集めにくる可能性は高いし、合流することもできるかもしれない。一応、それなりの理由があったつもりだ。
「今さら走って逃げても間に合いませんよ!」
地面が陥没する速度は、その勢いを見るに相当速い。軽トラックのタイヤに立てかけてあった【トラッペ君】らしきものを見つけると同時に始まった地面陥没だが、走って逃げるよりも軽トラックのほうが確実に逃げられるだろうし、なによりも鍵が付けっ放しだったことが片岡達の判断を鈍らせた。迷わず軽トラックに乗り込み現在にいたるわけだ。ちなみに【トラッペ君】は、気色悪いとの理由で深田がどこかに放り投げてしまった。
鍵を回す。エンジンが動きかけるが、しかし動かない。もう一度だけ鍵を回す。でもやっぱり、エンジンはかかりそうでかからない。助手席に乗り込んだ片岡久志には、ただただ運転席の彼がエンジン始動を試みる姿を見守るしかなかった。
「すぐるさん、まだですか!」
片岡はルームミラーに視線をやり、後ろを確認する。二人が乗り込んだ車が、たまたま軽トラックだったということもあり、無駄を省いたフォルムのおかげで後方確認もばっちりとできた。
まだ遥かに後方ではあるが、大きな音を立てながら勢い良く地面が崩れているようだった。その証拠に、まるで透明人間がなぎ倒しているかのごとく、電柱が傾き、アーケードで対面同士になっている商店らしきものも、中心に向かって傾く。地面が次々と陥没しているとしか考えられない状況だった。
「これ、あれやん? ゾンビ映画とかで都合良くエンジンかからんやつと違う? ぎりぎりまでエンジンかからんやつ!」
何度もセルを回しながらなかば絶叫に近い声を上げた男は深田卓という。そんな彼と片岡が合流したのは、アーケードの入り口辺りだった。何が起きているのか分からず、どうしたものかと途方に暮れていた時のことである。
互いに軽く自己紹介をして、SGTの【固有ヒント】を共有した。けれども、あまりにも非現実的な状況に、とにもかくにも救助を待つべきと深田が主張。最初は片岡もそれに従った。けれども、待てども救助なんてものはこないし、じっとしていても死亡者のアナウンスが流れるだけだった。もちろん、死亡者の【固有ヒント】は転送されたが、なんだか死亡者が出るのを息を潜めて待っているかのような気がして、とにもかくにも動くことにした。そして片岡は、嫌がる深田を引っ張って商店街――アーケードらしき場所へと足を踏み入れたのだった。商店街なら色々な物資が手に入るかもしれないと誰もが考える。ならば、他のプレイヤー達も物資を集めにくる可能性は高いし、合流することもできるかもしれない。一応、それなりの理由があったつもりだ。
「今さら走って逃げても間に合いませんよ!」
地面が陥没する速度は、その勢いを見るに相当速い。軽トラックのタイヤに立てかけてあった【トラッペ君】らしきものを見つけると同時に始まった地面陥没だが、走って逃げるよりも軽トラックのほうが確実に逃げられるだろうし、なによりも鍵が付けっ放しだったことが片岡達の判断を鈍らせた。迷わず軽トラックに乗り込み現在にいたるわけだ。ちなみに【トラッペ君】は、気色悪いとの理由で深田がどこかに放り投げてしまった。
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