39 / 231
わがまま姫とそれが不愉快な仲間達【午後1時〜午後2時】
7
しおりを挟む
それぞれに与えられた【固有ヒント】とやらを、律儀に集めて回る。現状で自分のヒントも含めてみっつのヒントが集まったわけだが、それだけでは【ブービートラップ】とやらの正体は分かりそうもない。そもそも、罠が仕掛けられているという街で、リスクを冒してまでヒントを集めたところで、それなりの数のヒントを集めなければ、真相は分からない仕様になっているのであろう。ひとつやふたつのヒントで真相が分かってしまうのは、ゲームとして面白くないだろうし。
「ゾンビ映画ねぇ。残念ながら、これは現実なんだよ。セオリーもへったくれもなければ、主人公もいねぇ。誰でも平等に主人公になれるだろうし、誰でも平等に死ぬ恐れがある。ただそれだけで、それ以上でも以下でもねぇよ。動くのは結構なことだが、いちいち俺まで巻き込むなよ」
比嘉はこの場から動くつもりはなかった。動くとしても、ある程度の様子を見てからだと考えている。情報が少なく、また罠がどこに仕掛けられているか分からない以上、闇雲に動くのは危険だ。
「しかし、バラバラになって行動するより、一緒になって動いたほうが――」
比嘉は大きな溜め息で、どちらが口にしたかも分からない言葉を遮る。
「逆に危険だろうが。一応【トラッペ君】とやらの指標はあるみたいだが、どんな形で設置されているか分からない。固まって動いたところで、三人仲良く罠にかかってお陀仏なんてこともあり得る。だから、現状においては間違いなくバラバラに動いたほうが、生存率も上がるだろうよ」
比嘉の言葉の意味が分からなかったのであろう。苗場兄弟は顔を見合わせる。比嘉の溜め息の数は増えるばかりだ。
「いいか? この街にどんな罠が仕掛けられているのかは分からねぇが、罠にかかって死んだ人間の死体は、当たり前だが罠の仕掛けられているところに残されるわけだ。つまり、死体があるところには罠が仕掛けられている可能性が高いということになる。こっちのほうが【トラッペ君】とやらより、よっぽど罠の目印になるだろうな。ようするに、お前達が勝手に動いて罠に引っかかってくれれば、それだけ俺の生存率が上がるって算段だ。だから、俺はもうしばらく動かねぇよ」
うっかりと本音が出てしまった。どこか比嘉に対して依存しようとしている苗場兄弟が、鬱陶しく見えたからなのかもしれない。もうこうなってしまったら仕方がない。元より苗場兄弟とは良好な関係を築くつもりもなかったし、これからも気が変わることはないだろう。比嘉はショルダーバッグの中から折りたたみ式のバタフライナイフを取り出した。
「ゾンビ映画ねぇ。残念ながら、これは現実なんだよ。セオリーもへったくれもなければ、主人公もいねぇ。誰でも平等に主人公になれるだろうし、誰でも平等に死ぬ恐れがある。ただそれだけで、それ以上でも以下でもねぇよ。動くのは結構なことだが、いちいち俺まで巻き込むなよ」
比嘉はこの場から動くつもりはなかった。動くとしても、ある程度の様子を見てからだと考えている。情報が少なく、また罠がどこに仕掛けられているか分からない以上、闇雲に動くのは危険だ。
「しかし、バラバラになって行動するより、一緒になって動いたほうが――」
比嘉は大きな溜め息で、どちらが口にしたかも分からない言葉を遮る。
「逆に危険だろうが。一応【トラッペ君】とやらの指標はあるみたいだが、どんな形で設置されているか分からない。固まって動いたところで、三人仲良く罠にかかってお陀仏なんてこともあり得る。だから、現状においては間違いなくバラバラに動いたほうが、生存率も上がるだろうよ」
比嘉の言葉の意味が分からなかったのであろう。苗場兄弟は顔を見合わせる。比嘉の溜め息の数は増えるばかりだ。
「いいか? この街にどんな罠が仕掛けられているのかは分からねぇが、罠にかかって死んだ人間の死体は、当たり前だが罠の仕掛けられているところに残されるわけだ。つまり、死体があるところには罠が仕掛けられている可能性が高いということになる。こっちのほうが【トラッペ君】とやらより、よっぽど罠の目印になるだろうな。ようするに、お前達が勝手に動いて罠に引っかかってくれれば、それだけ俺の生存率が上がるって算段だ。だから、俺はもうしばらく動かねぇよ」
うっかりと本音が出てしまった。どこか比嘉に対して依存しようとしている苗場兄弟が、鬱陶しく見えたからなのかもしれない。もうこうなってしまったら仕方がない。元より苗場兄弟とは良好な関係を築くつもりもなかったし、これからも気が変わることはないだろう。比嘉はショルダーバッグの中から折りたたみ式のバタフライナイフを取り出した。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
クイズ 誰がやったのでSHOW
鬼霧宗作
ミステリー
IT企業の経営者である司馬龍平は、見知らぬ部屋で目を覚ました。メイクをするための大きな鏡。ガラステーブルの上に置かれた差し入れらしきおにぎり。そして、番組名らしきものが書かれた台本。そこは楽屋のようだった。
司馬と同じように、それぞれの楽屋で目を覚ました8人の男女。廊下の先に見える【スタジオ】との不気味な文字列に、やはり台本のタイトルが頭をよぎる。
――クイズ 誰がやったのでSHOW。
出題される問題は、全て現実に起こった事件で、しかもその犯人は……集められた8人の中にいる。
ぶっ飛んだテンションで司会進行をする司会者と、現実離れしたルールで進行されるクイズ番組。
果たして降板と卒業の違いとは。誰が何のためにこんなことを企てたのか。そして、8人の中に人殺しがどれだけ紛れ込んでいるのか。徐々に疑心暗鬼に陥っていく出演者達。
一方、同じように部屋に監禁された刑事コンビ2人は、わけも分からないままにクイズ番組【誰がやったのでSHOW】を視聴させれることになるのだが――。
様々な思惑が飛び交うクローズドサークル&ゼロサムゲーム。
次第に明らかになっていく謎と、見えてくるミッシングリンク。
さぁ、張り切って参りましょう。第1問!
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる